マイリストに追加

和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン・ヒストリカル・スペシャル

過去をなくした花嫁【ハーレクイン・ヒストリカル・スペシャル版】

過去をなくした花嫁【ハーレクイン・ヒストリカル・スペシャル版】


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ヒストリカル・スペシャル
価格:700pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
みんなの評価 未評価
◆レビューを書く

¥0サンプル
XMDFのファイルをご覧になるにはブンコビューア最新版(無料)をインストールしてください。

「書籍ファイルが壊れています」と表示される場合は、ブンコビューアを最新版にアップデートしてください。
購入する


著者プロフィール

 アン・ヘリス(Anne Herries)
 イギリスはケンブリッジに住んでいるが、冬のあいだは夫とともにスペインのジブラルタル海峡に面したマラガのリゾート地で過ごすことが多い。青い海の白い波頭を眺めながら、涙あり笑いありの、ロマンチックな恋物語の構想を練るという。イギリスではすでに三十作以上の著作があり、うち十数冊はハーレクインのミルズ&ブーン社から刊行されている。

解説

記憶を喪った娘が流れ着いたのは、気高き“咎人”の腕のなか――

フランスに住むイングランド貴族出身のステファンは、海を漂流する瀕死の若い娘を見つけた。懸命な看護で意識を取り戻した彼女はしかし、記憶をすべて失っていた。その娘を“アン”と名づけて居城に置くことにしたが、時に厳しく時に優しく接するステファンに、アンは恋心を抱き始めた。ゆえあって愛を自制する彼はその想いに気づき、冷たくあしらった。「わたしが品性の劣った男なら、きみを愛人にするところだ」けれど彼の禁欲的なふるまいとは裏腹に、二人の間に噂がたち、アンの名誉のため、ステファンはやむをえず求婚する。ところが、結婚を間近に控えたある夜、彼女は忽然と姿を消し……。

■16歳の乙女と屈強な貴公子が運命の恋に落ちるロマンティック・ヒストリカルをお届けします!出自不明といえど高貴な美しさを持つアンに惹かれぬよう自戒するステファン。彼女の記憶が戻ったとき、二人の関係はいったいどうなるのでしょうか……?

*本書は、ハーレクイン・ヒストリカルから既に配信されている作品のハーレクイン・ヒストリカル・スペシャル版となります。 ご購入の際は十分ご注意ください。

抄録

「こんなによくしてもらって、どうやってお返しをしたらいいかわからないわ」彼女は探るような目でステファンを見た。
「当たり前のことをしているだけさ」ステファンは答えた。「アリが言っていたよ。命を救った相手には、そのあとも生きていけるように力を貸すのが当然だとね。彼の言うとおりだよ」
「絹は高いわ……」アンは口のなかが、からからに乾いていた。彼女はまるで見えない力でステファンに引き寄せられているような気がしていた。彼は人の心を射抜くような強い目をしている。それでいて、ビロードのように滑らかな声は、彼女を愛撫し、心を静めてくれるのだ。「わたしにはお金がないし、お返しできるようなものは何ももっていないわ」
「そんなことはない。きみは、こうしているだけで、わたしに大きなものを与えてくれている」彼はうつむくアンに近づき、彼女のあごに手をかけ、美しい顔を自分に向けさせた。「わたしがもう少し品性の劣った男だったら、きみを愛人にしていたところだよ。きみは美しい女性だ、アン。きみと同じ寝室で夜を過ごせたらどれだけ幸せかとさえ思う。だが、名誉にかけて、わたしはきみを家族のもとに届けなくてはならない」
 アンの心臓の鼓動が、息を継げなくなるほど一気に速まった。彼女は痛いくらいに何かを求めていた。この気持ちは何なのだろう? 彼の微笑みや優しい声に恍惚としながらも、同時に言いようもない恐れを感じている。大きく見開かれた彼女の澄みきった瞳は、どこまでも汚れなく、しかも誘いかけるように輝いていた。ステファンは顔を近づけ、彼女の唇に自分の唇をそっと重ねた。アンの体から力が抜けた。ステファンは彼女を抱き寄せた。キスは激しさを増した。ステファンの舌を受け入れながら、アンは目くるめくような甘い官能の波に襲われ、気を失いそうになっていた。このまま、いつまでもこうしていたい。いや、それだけでない。彼女の肉体は、その先にあるものを渇望していた。だが、キスは唐突に終わった。
「許してくれ」彼は言った。「きみの瞳に誘い込まれてしまった。きみの無邪気さをわたしの欲望で汚すべきではなかった。わたしはきみを愛することができない。わたしは、はるか昔に優しさや無邪気さをなくしてしまったのだ。きみのような品位のある女性には釣り合わない男だよ。だから、キスなどすべきではなかった」
 アンは指先で自分の唇をなぞった。こういうキスをしたのは初めてだった。それは、記憶を失っていても直感的にわかる。男性からこんな気持ちにさせられたことも、こんなに強く心をつかまれたことも過去にはなかったに違いない。
「わたしは、うれしかったわ」彼女は、いつものとおり、気持ちを隠そうともせずに言った。「わたしと釣り合わないなんて、どうしてそんなことを言うの?」
「わたしは何年間も傭兵として生きてきた。それがどういうことかわかるかい?」アンは首を振った。「傭兵というのは、金のために人を殺す仕事だ。わたしはたくさんの人間を死に追いやってきた。そのなかには女も含まれている。都市を攻撃したり船を沈めたりすれば、子どもたちも犠牲になる。わたしは名誉や国のために戦ったのではない。わたしのなかにある憎しみと金のために、わたしは数えきれないほど多くの人の命を奪ったのだ。わたしの両手は血にまみれている。そんな男を自分の子どもの父親にもちたくはないだろう、アン?」
「でも、スリナが言っていたわ。あなたは彼女やアリの命を救ってくれたと……」アンの声は震えていた。ステファンの言葉を聞いて、地獄絵図のような光景が思い浮かんだからだった。「みんな、あなたを優しい人だと言っているわ」
「ひとつやふたつ、いいことをしたって、あれだけの悪行が消えるものではない」ステファンの声の冷たさにアンは現実を見せられたような気がした。「どれだけ人助けをしても、わたしは地獄の業火に焼かれるだろう。これでわかったはずだ。わたしはきみにふさわしい男ではない。だが、心配しないでくれ。二度とおかしなまねはしないと約束する。さっきのキスは、わたしの一瞬の気の迷いだ。さて、わたしはこれで失礼するよ。執事と話さなくてはならないことがあるからね。明日は新しいガウンの生地を買いに町へ出かけることにしよう」
 アンは広間を出ていくステファンの後ろ姿を見つめた。目の奥が涙で熱くなった。彼女は混乱し、自分の気持ちがわからなくなっていた。キスをされているあいだは、いつまでも彼の腕に抱かれていたいと願った。だが彼の言葉を聞いて、彼女は恐怖に震えた。
 ステファン・ド・モンフォールは、いったいどういう人なのだろう? 過去を語るときの彼の表情は恐怖を感じるほど冷たくて、怒りに満ちていた。慈悲のかけらもなく人の命を奪い、町を焼き、船を沈める。アンの目には、海に沈む船の上で泣き叫ぶ女性や子どもたちの姿がありありと浮かんだ。モンフォール卿は、血に濡れた冷酷で罪深い人生を歩んできたのだ。だれがそんな人間の妻になりたいと思うだろう?
 だが、新しいガウンの生地を買いに行こうと言われたとき、あるいは同じ寝室で夜を過ごしたいと言われたとき、彼女の胸は喜びにときめいたではないか。自分の気持ちがわからない。アンは自分の心が真っ二つに割れてしまったかのような気がした。


*この続きは製品版でお楽しみください。

本の情報

形式

【XMDF形式】

XMDFデータをご覧いただくためには専用のブラウザソフト・ブンコビューア最新版(無料)が必要になります。ブンコビューアは【ここ】から無料でダウンロードできます。
詳しくはXMDF形式の詳細説明をご覧下さい。

対応端末欄に「ソニー“Reader”」と表示されている作品については、eBook Transfer for Readerで“Reader”にファイルを転送する事で閲覧できます。
海外版の“Reader”は対応しておりませんので予めご了承くださいませ。

【MEDUSA形式】
MEDUSA形式の作品はブラウザですぐに開いて読むことができます。パソコン、スマートフォン、タブレット端末などで読むことができます。作品はクラウド上に保存されているためファイル管理の手間は必要ありません。閲覧開始時はネットに接続している必要があります。

詳細はMEDUSA形式の詳細説明をご覧下さい。