和書>小説・ノンフィクション>ボーイズラブ小説>幼馴染
著者プロフィール
吉田 珠姫(よしだ たまき)
水瓶座。A型。霊合星の水星人。
水瓶座。A型。霊合星の水星人。
解説
ぼくのたった一度の恋は、中学二年の時だった。春の風のような幼なじみの裕也。猫のように気まぐれだけど、誰にでも好かれ明るくいつも笑っていた。ぼくたちはすべてをかけて愛し合い――彼は春の風に還っていった。せつなくて大切な幸せの記憶。あれほど愛しい存在はもう二度と現れないだろうと思っていたぼくだったが二十五年後、奇跡のような出会いが待っていた!! 涙なしには読めない、究極のハッピーエンド・ストーリー!
目次
春ものがたり
十五年後
春の終わり、夏の訪れ
十五年後
春の終わり、夏の訪れ
抄録
「……ゆうちゃん。……こんなことは言いたくないんだけど……」
「……ぇ?」
「………………もう、……帰ってくれないかな」
裕也は立ちすくんだまま、うつむいてしまった。
「せっかく抜け出してきても…こんなとこにいちゃ、遊びに行くこともできないだろ?」
「…………」
「ここには、テレビもなんにもないし。…いても、ちっともおもしろくないだろ?」
本当に、ここにはなにもないのだ。
子供がいるといっても、ここは本来『教会』の敷地内なので――昨日裕也が言ったように、まるで時に忘れ去られたように、ここだけは世間の流行りすたりとは違う時間が流れていた。
裕也は小さく言い訳を返してきた。
「……そんな、こと……」
ぼくは、なるべく平静な声で、
「誰か、ほかの人のところへ行きなよ」
唇を噛むように黙りこくっている裕也のほうを見ないようにして、続けた。
「ね? …その服、貸してあげるから」
裕也は今、ぼくの昔のシャツを着ていた。オーバーオールのほうはそのままだったが、着てきたシャツは薄手だったし、雪に降られて濡れてしまっていたから。今は洗濯中だったのだ。
彼のほうがぼくより小柄なので、おととし着ていたくらいの服がピッタリだった。
そこで。そうだ、帰るならばなにか上着も…と思いつき、洋服ダンスに近づくと。裕也はそれを察したのか、急に前に立ちふさがった。
思わず声を尖らせてしまった。
「……ゆうちゃん。……どいて」
「…………」
「どいて。ジャンパーかなにか…貸してあげるから。それ着て、……もう帰って」
ふいに。
裕也の顔は、哀しげに歪んだ。
そして次の瞬間、飛びつくようにぼくに抱きついてきたのだ!
「ゆうっ…」
なにが起きたのかわからなかった。
だがすぐに、裕也の顔が離れて……ぼくはキスされた、ということに気づいた。
つかの間の驚きが去ると。
無性に腹がたってきた。
「…………そうやって…ごまかすの…?」
「……ぇ…?」
「ゆうちゃん! そうやって…………また、ぼくをからかうのっ…?」
……悔しかった。
笑われるより、つらかった。
やっぱり裕也はぼくの気持ちを知っていたのだ。知っていて……こんなふうに、一番ひどい罵り方をするのだ。
「……………からかってなんか……………いない」
だが、裕也の表情は変だった。
言葉どおり、本当に真剣な顔をしていた。
「からかってなんか、ない! なんでも冗談にすんの、とおるちゃんのほうじゃないかっ!」
地団太を踏むように、いらいらと、
「オレ、ちゃんと説明してるじゃないかっ。ちょっとだけだから一緒にいさせて、って…そんなに長いこといないから、って…言ってるじゃないか!」
「………でも、……」
あまりに熱い言い方に、ぼくがたじろぐと。
裕也は最後に、泣き声のような声でつぶやいた。
「逢いにきた、って……とおるちゃんに逢うために、抜け出してきた、って……昨日から何度言っても……とおるちゃんだけが、本気にしてくれないんじゃないか……」
*この続きは製品版でお楽しみください。
「……ぇ?」
「………………もう、……帰ってくれないかな」
裕也は立ちすくんだまま、うつむいてしまった。
「せっかく抜け出してきても…こんなとこにいちゃ、遊びに行くこともできないだろ?」
「…………」
「ここには、テレビもなんにもないし。…いても、ちっともおもしろくないだろ?」
本当に、ここにはなにもないのだ。
子供がいるといっても、ここは本来『教会』の敷地内なので――昨日裕也が言ったように、まるで時に忘れ去られたように、ここだけは世間の流行りすたりとは違う時間が流れていた。
裕也は小さく言い訳を返してきた。
「……そんな、こと……」
ぼくは、なるべく平静な声で、
「誰か、ほかの人のところへ行きなよ」
唇を噛むように黙りこくっている裕也のほうを見ないようにして、続けた。
「ね? …その服、貸してあげるから」
裕也は今、ぼくの昔のシャツを着ていた。オーバーオールのほうはそのままだったが、着てきたシャツは薄手だったし、雪に降られて濡れてしまっていたから。今は洗濯中だったのだ。
彼のほうがぼくより小柄なので、おととし着ていたくらいの服がピッタリだった。
そこで。そうだ、帰るならばなにか上着も…と思いつき、洋服ダンスに近づくと。裕也はそれを察したのか、急に前に立ちふさがった。
思わず声を尖らせてしまった。
「……ゆうちゃん。……どいて」
「…………」
「どいて。ジャンパーかなにか…貸してあげるから。それ着て、……もう帰って」
ふいに。
裕也の顔は、哀しげに歪んだ。
そして次の瞬間、飛びつくようにぼくに抱きついてきたのだ!
「ゆうっ…」
なにが起きたのかわからなかった。
だがすぐに、裕也の顔が離れて……ぼくはキスされた、ということに気づいた。
つかの間の驚きが去ると。
無性に腹がたってきた。
「…………そうやって…ごまかすの…?」
「……ぇ…?」
「ゆうちゃん! そうやって…………また、ぼくをからかうのっ…?」
……悔しかった。
笑われるより、つらかった。
やっぱり裕也はぼくの気持ちを知っていたのだ。知っていて……こんなふうに、一番ひどい罵り方をするのだ。
「……………からかってなんか……………いない」
だが、裕也の表情は変だった。
言葉どおり、本当に真剣な顔をしていた。
「からかってなんか、ない! なんでも冗談にすんの、とおるちゃんのほうじゃないかっ!」
地団太を踏むように、いらいらと、
「オレ、ちゃんと説明してるじゃないかっ。ちょっとだけだから一緒にいさせて、って…そんなに長いこといないから、って…言ってるじゃないか!」
「………でも、……」
あまりに熱い言い方に、ぼくがたじろぐと。
裕也は最後に、泣き声のような声でつぶやいた。
「逢いにきた、って……とおるちゃんに逢うために、抜け出してきた、って……昨日から何度言っても……とおるちゃんだけが、本気にしてくれないんじゃないか……」
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