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すべてはこの夜に

すべてはこの夜に

著: 英田サキ
発行: 笠倉出版社
レーベル: CROSS NOVELS
価格:945円(税込)
10ポイント還元
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
みんなの評価 ★★★★☆14
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著者プロフィール

 英田 サキ(あいだ さき)
 1月3日生まれ。山羊座のB型。大阪府出身。

解説

 「選ばせてやるよ――このまま打たれて死ぬか、俺に縋って土下座で許しを乞うか」
 平凡な生活から一転。熾烈な借金地獄に落ちた加持に残された道は『ある男を撃つ事』。だが、狙いを定めた先に現れたのは、忌まわしき過去の男・湊だった。端正な顔立ちの男は十年の時を経て、冷酷な雰囲気を纏う極道になっていた。そして、捕らわれた加持に悲劇が……。そして、その中で与えられる痛みの中に昔と変わらぬ執着の色を感じた加持は戸惑い……。

目次

すべてはこの夜に
夏の花
春宵一刻

抄録

 夜になって帰ってきた湊は、部屋に入るなりすぐに浴室に姿を消した。同行してきた武井は珍しく部屋に上がると、リビングの椅子に座って加持の淹れたコーヒーを飲んだ。
「オヤジさんの具合はどうですか?」
「相変わらず危ない状態だ」
 志郎の問いかけに、武井は疲れたように答えた。
「それより志郎。お前、喪服持ってるのか?」
「え? 持ってないっすけど……」
 武井は財布から一万円札を数枚抜くと、「明日にでも買ってこい」とテーブルの上に置いた。
「いざって時に、すぐ動けるよう準備だけしておけ」
 志郎が複雑そうな顔で、「はあ……」と金を受けとる。
「加持さん。こっちはあんたにです」
 武井が背広の懐から、分厚い封筒を取りだした。中身を見た加持は、それがかなりの額の金であることに驚き、「これはなんですか?」と武井を見た。
「加持さんの金ですよ。店の移転資金を持ち逃げした、浅田って男がいたでしょう。そいつから返してもらったんです。好きに使えばいい」
「どういうことでしょう」
 驚きのあまり呆然となった。なぜいきなり浅田の名前が出てきたのか、まったく理解できない。
「人を使って浅田を捜させていたんですが、三日ほど前にやっと見つかりましてね。金はもう持ってませんでしたが、いい車に乗っていた。だからそれを売らせて、金に換えさせました。盗まれた金には二百万ほど足りませんが、何かの足しにはなるでしょう」
 加持は言葉を失ったまま、手にした封筒を眺めた。
「……なぜ浅田の行方を捜してくれたんですか?」
「湊さんの指示ですよ」
 そう言うと、武井はコーヒーを飲み干して帰っていった。
 浴室から出てきた湊がそのまま寝室に入ってしまったので、泊まっていくという志郎をリビングに残し、加持も寝室に向かった。ノックをしてドアを開けると、湊はベッドに腰かけて何かの書類に目を通していた。
「湊。武井さんから金を受けとった。……その、なんてお礼を言っていいのか――」
「どうして嘘をついた」
「え?」
 湊は持っていた書類を、加持に向かって投げつけた。加持の胸に当たってバサリと床に落ちた紙には、『調査報告書』という文字が見て取れる。
「お前は確かに、浅田という男に金を持ち逃げされた。だが警察に被害届は出していない。浅田が自分の恋人だったからか?」
 頭から冷水を浴びせかけられたような衝撃を受け、加持は青ざめた。
「武井の子飼いの探偵が、浅田から直接聞き出したことだ。間違いないだろう? 警察に届けなかったのは、情が移っていたからなのか」
 加持が「違う」と首を振ると、湊は「何が違う?」とベッドを下りた。
「……確かに浅田とは、関係を持ったことがある。けど、寝たのはほんの二回ほどで、金を盗まれたことまで許せるほどの、深いつき合いじゃなかった」
「じゃあなぜ警察に知らせなかった。大金を諦めたのはどうしてだ。理由を言ってみろ」
「それは……」
 痛いほどの鋭い眼差しを受け、誤魔化せないと加持は観念した。
「警察に届ければ、浅田との関係がまわりにばれてしまうと思ったんだ。それが怖かった」
「なるほど。お前は昔から、世間体を気にする奴だったからな」
 湊がゆっくりと近づいてくる。威圧感を覚えて思わず後ずさりした加持は、すぐに壁際まで追い詰められてしまった。
「十年前もそうだった。お前は俺との関係が周囲に知られるのを、いつも恐れていた。優里とつき合い始めたのも、本当はあいつのことが好きだったからじゃない。お前は俺から逃れるために、優里を利用したんだ。そうだろう?」
 自分の醜い計算を、湊がすべて見抜いていたことを知り、加持は驚愕した。
「お前は自分の本当の姿を認められず、いつも逃げてばかりいる卑怯者だ。本当は男が好きなんだろう? いつだって男に抱かれたくて、仕方がないんだろう?」
 強く後ろ髪を掴まれ、顔を上向きにされた。

*この続きは製品版でお楽しみください。

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