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すみれ色の妖精【ハーレクイン・セレクト版】

すみれ色の妖精【ハーレクイン・セレクト版】


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・セレクト
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ジャクリーン・バード(Jacqueline Baird)
 趣味は油絵を描くことだったが、家族からにおいに苦情を言われ、文章を書くことにした。そしてすぐにロマンス小説の執筆に夢中になった。旅行が好きで、アルバイトをしながらヨーロッパ、アメリカ、オーストラリアを回った。英国に戻ったときに結婚。二人の息子に恵まれ、現在も生まれ故郷のイングランド北東部に夫とともに暮らしている。「二人のバレンタイン」と「恋は強引に」がお気に入りの作品だという。ロマンティックタイムズ誌の賞の受賞歴があり、ベストセラーリストにもたびたび登場する。

解説

ヘレンはこの3年半、親友デリアが密かに産んだ赤ん坊の面倒を見ている。親友からの連絡が途絶えて1カ月、不安が頭をもたげ始めたとき、デリアの大富豪の兄――巨万の富を誇るギリシア人銀行家、レオン・アリスティデスが現れた。妹の訃報と遺言をたずさえて。そして、妹の遺児を二人で育てるためヘレンに結婚をもちかけてきた。ヘレンは事故で両親を失い、後遺症のせいで妊娠は望めない。レオンとの結婚に同意しなければ、たった一人の家族とも呼べる赤ん坊のニコラスを取り上げられてしまうのだ。やむなく承諾したヘレンはしかし、レオンの魅力に抗えず純潔を捧げたあと、彼の冷たい企みを知って……。

■尊大で情熱的なギリシア人ヒーローの魅力が炸裂!ピュアなヒロインを振り回す、彼の非情な企みはやがて……。男女の愛憎物語を描かせたら右に出る者なし、ジャクリーン・バードの名作です。
*本書は、ハーレクイン・ロマンスから既に配信されている作品のハーレクイン・セレクト版となります。 ご購入の際は十分ご注意ください。

抄録

 レオン・アリスティデス。我が目が信じられなかった。ほんの一瞬、コンタクトレンズをつけ忘れ、想像力が生みだした幻影を見ているのではないかと思ったほどだった。
「こんにちは、ヘレン」
 レオンは深みのある声でゆっくりと言った。ヘレンは近視だが、聴覚に問題はない。どうしよう、デリアの兄がこの家に来るなんて!
「こんにちは、ミスター・アリスティデス」ヘレンはなんとか応じ、レオンに目をやった。百八十センチは優にある長身を洗練された黒っぽいビジネススーツに包み、白いシャツに絹のネクタイを締めている。最後に会ったときとほとんど変わっていない。人を寄せつけない雰囲気も以前と同じだ。
 黒い目に鋭角的な頬、筋の通った高い鼻、厚い唇。ハンサムというよりは精悍な顔だちと評したほうがより正確だ。堂々たる体はまさに男としての魅力にあふれている。
 そんな彼を見るなり、初めて会ったときと同じく、ヘレンは腹部のあたりに不穏なざわめきを覚えた。予期せぬ反応に慌て、神経質になっているせいよ、と彼女は自分に言い聞かせた。もうレオンを怖がる必要などない。今のわたしは十七歳の女の子ではなく、二十六歳の大人の女性なのだから。
「驚いたわ。こんなところへいったい何をしに来たの?」ヘレンは不安げにレオンを見あげた。
 レオンと会ったのは九年前、デリアの招待でギリシアにあるアリスティデス家の別荘を訪れたときのことだった。朝早く海辺を散歩していると、深みのある声に呼び止められ、君は誰だと問いただされたのだ。それくらいのギリシア語ならヘレンにも理解できた。声のほうに顔を向けると、波打ち際に男性が立っていた。そこがアリスティデス家のプライベートビーチであることは知っていたが、デリアの客として滞在しているのだから、とがめられる筋合いはない。ヘレンは笑顔で男性に近寄り、名前を告げて手を差しだした。ところが、その手は宙に浮いたままになった。
 男性は長身で肩幅が広く、引きしまった腰に白いタオルを巻いていた。褐色の体にはミケランジェロの彫刻さながらに、くっきりと筋肉が浮き出ている。
 視線がからみ合い、ヘレンは一瞬、息が止まった。男性の黒い目にはどこか危険な光が宿っていた。鼓動が速くなり、すぐに走り去るよう本能が命じた。しかし、彼のみごとな体に心を奪われ、感覚が麻痺していた。
 やがて、彼はようやく口を開いた。そのときの侮蔑的な言葉は、今もまだヘレンの脳裏にこびりついていた。
“君は実に魅力的で、触れなば落ちん、といった風情だな。だけどぼくには妻がいる。そんな目でぼくを誘惑する前に、まずそれを確かめるべきだった”そう言って彼は立ち去った。あのときほど狼狽したことはそれ以前はもちろん、今に至るまでない。
「ぼくが訪ねた理由はわかりきっていると思っていたがな」
 レオンの声に、ヘレンの意識は過去から現在へと呼び戻された。
「君と話し合いたい」彼はほほ笑んだ。しかし、目は笑っていない。
 ヘレンはレオンと話し合いなど持ちたくなかった。彼と話し合うなんて、考えただけでぞっとする。
 ギリシアに滞在しているとき、ヘレンは彼と顔を合わせないようにしていた。それはさほど難しくはなかった。アリスティデス家では友人や親族が絶えず出入りし、二人の娘――デリアとヘレンの動向など誰も気に留めなかったのだ。それでも、レオンと一緒にならざるをえない場合は、丁重かつ冷ややかに接した。滞在も残りあと数日というとき、レオンの美しい妻、ティーナが到着したが、楽天的なアメリカ人妻は冷淡な夫をどう思っているのだろうと不思議に思っただけだった。
 レオンの侮蔑的な言動に加え、デリアの父親が娘に他人行儀に接するのを見て、デリアが言っていたことは本当だったとヘレンは確信した。
 デリアが故郷のギリシアではなくイギリスの寄宿学校に入ったのは、父と兄が英語の勉強をもっとしたいというデリアの希望を聞き入れたためだった。しかし、それは表向きの理由で、デリアによれば、彼女を女子だけの寄宿学校に入れて規律を学ばせようとしたのだという。デリアは、たばこを吸って漁師の息子とたわむれているところを見つかってしまったのだ。だけど、それも本当はたいした問題ではないの、とデリアはさらに打ち明けた。
“イギリスに送られたのは、わたしが一歳八カ月のときに、母が産後の鬱状態から抜けだせずに自殺してしまったからなの。父は、母の自殺の責任をわたしに押しつけ、うとましいわたしに目の前から消えてほしかったんだわ”
 父も兄も徹底的な男性優位主義者で、極度に保守的なの、ともデリアは言っていた。家業である銀行業のことしか頭になく、女性はすべて事業を発展させる道具にすぎないと考えているのだという。
 デリアは母や義姉と違い、家業を発展させるための政略結婚などするつもりはなかった。二十五歳になれば、母親が信託財産の形で彼女に遺した銀行の株式を相続できるから、それまでは独身を通そうと決意していた。ここ数年、ヘレンはデリアの夢を実現させる手助けをしていたのだ。
 ヘレンは、兄や父親に対するデリアの否定的な評価を思い出しながら、目の前に立つ長身で肩幅の広いレオンを眺めた。雨に濡れて黒髪が額にへばりついている今でさえ、彼は最初に会ったときにヘレンの背筋を震わせたオーラを放っている。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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