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和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン・セレクト

サンチェス家の花嫁

サンチェス家の花嫁


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・セレクト
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 アン・メイザー(Anne Mather)
 イングランド北部の町に生まれる。息子と娘、二人のかわいい孫がいる。自分が読みたいと思うような物語を書く、というのが彼女の信念である。ハーレクイン・ロマンスに登場する前から作家として活躍していたが、このシリーズによって、一躍国際的な名声を得た。

解説

二十歳のレイチェルは、ロンドンへ出張に来ていた年上の大富豪、アンドレ・サンチェスと熱い恋におち、結婚した。サンチェス家はバハマ諸島のあちこちに別荘やホテルを所有する名家。だが若い彼女は仕事中毒の夫との虚しい生活に疲弊し、流産したショックもあいまって、心の傷を癒やそうと帰国した――。それから5年、父は死の床にあり、事業は傾いていた。レイチェルは悩んだすえ、夫の援助を求め、バハマへ戻る。そこで目にしたのは、名ばかりの夫の冷たい視線と、見知らぬ女性の姿。その瞬間、レイチェルは胸の痛みを覚えた。まさか……嫉妬?私はまだこの人を求めているの?

■1979年に刊行されたハーレクイン・ロマンス初期の話題作をリバイバル刊行します。うぶなヒロインと、大人の魅力たっぷりの年上の億万長者との恋をご堪能ください。傲岸不遜で情熱的なラテンヒーローの魅力がたっぷり詰まった逸作です

抄録

 家に入ると、アンドレについて涼しいラウンジに出た。そこからは林と潟を背景としたこの家の後部が見渡せた。アンドレは彼女を残して出ていったので、レイチェルはひとり皮張りのひじ掛け椅子にすわり、タバコを吸って気持を落ち着けた。アンドレがここに呼び出した理由を聞くまでは何もすることはない。
 手を洗ってもどったアンドレは、彼女の前に腰かけ、ベルの呼び出しでやってきた男の召使いにコーヒーを命じ、葉巻を手に取った。そういうアンドレを、レイチェルはこっそり観察した。前の晩は、彼女自身混乱していて彼のことをしげしげ見る暇はなかったが、今は彼を見ているだけで喜びを覚えていた。腕も脚も褐色に焼けているアンドレは、イギリスのあの日光浴などしている青白い男たちよりはるかに魅力的だった。だが彼はただこの理想的な気候の中で暮らしていて、それに合った肌色になっただけなのだ。それに彼は元来スペインの血筋で、それがイギリス人の母のために少し薄くされているだけなのだ。胸毛が生えているので胸のあたりはさらに黒く見え、その中に銀のメダルが輝いていた。まだちゃんとしたあいさつさえしないのだが、それはただ彼女を混乱させるつもりだからだろうか。これは単に事務的な話し合いだとはっきりさせてやらなければならない。
 レイチェルは立ち上がると、黒檀にほられた珍しい浮き彫りのところに歩み寄った。それはインディアンの頭部で顔の面やアングルはまるで生きているようだ。
「すてきね」おずおずとレイチェルは言ってみた。「どこで手に入れたの?」
 アンドレも立ち上がったが、そばに来るとレイチェルの手から浮き彫りを取り上げ、もとのところにもどしてしまった。そして、奇妙な目つきで彼女を見下ろし、きっぱり言った。「きみは浮き彫りの話などするためにここに来たんじゃないぞ」
 レイチェルはどきりとした。「何のためにここに来たのか、わからないわ」
「わからない?」
「わかるわけないでしょう」レイチェルの声はひきつっていた。「あのあとで――ゆうべあんなことがあったあとで――あなたがよくもわたしに話しかけられたものだと驚いたわ」その声には怒りと反感があった。
 アンドレは肩をすくめ、気を静めようとしているレイチェルから顔をそむけた。「ゆうべは、不意をつかれたんだ。ぼくはおろかにも――なんていうか、怒りで、そう怒り狂ってしまった――つまりきみに負けまいと思ってね」
「で、今は?」
「今?」アンドレは彼女のほうに向き直った。「うん、今は考える時間がある、全体をまとめて考えられる。ああいう態度はいけなかった」
「なるほど。“電算機”がまた並みの人間にとってかわったってわけね。それが普通だわ」
 アンドレは腹を立てるふうもなかった。「まだ怒ってるのか、レイチェル。どうしてなんだ? きみを怒らすような何をしたと言うんだ。暮らしのことはまあ別だが」
 レイチェルのほおに赤味がさした。「言うのもおそろしいわ」
「なぜだ? 五年前のきみの行動はぼくを傷つけようとしたものだった。だろう?」
「どうしてあやつり人形が、ご主人さまを傷つけられるのかしら」
 アンドレが何か口走って、彼女に向かっておどすように一歩踏み出した。レイチェルの静かなことばが激しい怒りを覚ましたのだった。だがちょうどこのとき召使いがコーヒーを運んできて、トレーをレイチェルのそばのテーブルに置いた。それで彼女が給仕をしないわけにはいかなくなった。
 銀のコーヒー・ポットを取り上げて震える指でつぐときいた。「クリームとお砂糖は?」
 だが、アンドレは首を振った。「ぼくはブラックでいい」とぶっきらぼうに言う。言われたとおり相手のほうを見ずにカップを置くと、自分のにはたっぷりクリームと砂糖を入れ、どうにでもなれといった気分になりながらコーヒーをすすった。コーヒーを飲む間に少しはアンドレが気を静めてくれるかもしれないと願いながら――。
 アンドレはすわりもせず、フランスドアのそばに立って潟のほうを見ていた。レイチェルもそのほうを見て、豊かな金色のカーテンが、壁掛けのかかったクリーム色の壁とよく調和し、それが浅黒い彼の顔立ちを引き立てているのに心をとめた。その横顔に彼の強さ、つまりがっちりした下あごの線、ほおの角、それに上あごの線といったものを認めることができる。その唯一の女性的な点である長く濃いまつ毛さえ見えた。
 レイチェルがたまらない思いになったとき、アンドレは引き返してすわった。その顔には抑制が表れていた。彼はコーヒーを飲みほすと空のカップをトレーにもどし葉巻に火をつけ深く吸った。レイチェルも出されたタバコに火をつけたが、やたらにふかすのを見てアンドレがきいた。
「どうしたんだね。そんなにいらいらして」
 レイチェルはその必要もないのに灰皿に灰を落とした。「あなたがいらいらさせるんですもの、その質問は意味ないわ」
「ぼくが、きみをいらいらさせる?」
「そうよ。もうわたしをごまかすのはよしたら、アンドレ? あなたがわたしをここに呼び出した理由を話してちょうだい。話のかたをつけましょうよ」


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