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和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン・ロマンス

人魚を愛した億万長者

人魚を愛した億万長者


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ロマンス
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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解説

結婚も子供も叶わぬ夢と諦めていた──あなたが現れるまでは。

マリエッタはローマの画廊で働く画家の卵。下肢が不自由なため車椅子に頼る生活だが、懸命な努力を重ね、ようやく自活できるようになったことに誇りをもっている。ところが、その生活が悪質なストーカーによって脅かされ、妹の身を案じた兄が親友で警備会社CEOのニコに助けを求めた。屈強な体に鋭いブルーの目。マリエッタはなぜか彼が近くにいるだけで脈が乱れた。しかも強引に説得され、ニコが所有する島にしばらく匿われることになってしまう。大富豪と二人きりの生活は案の定、波瀾に満ちた幕開けで……。

■気鋭の作家アンジェラ・ビッセルが『天使が去ったあの日から』に続いて贈る、しっとりと情緒豊かなロマンスをお楽しみください。頑張り屋のヒロインですが、こと恋愛になると、どうしても脚のことが気にかかり、臆病になりがちで……。

抄録

 イヴリンが頭を片側に傾けた。「ウン・カッフェ・リストレット?」
 濃いめのエスプレッソか、というわけだ。マリエッタが両眉を上げると、イヴリンは笑った。快活で気持ちのいい笑い声だった。
「わかっているわ」イヴリンがウインクした。「ミシシッピー州出身の女がまともなイタリアンコーヒーのいれ方を知っているなんて、誰も思わないわよね」
 マリエッタは笑みを抑えきれなかった。「あなたのおかげでいい朝になったわ」
 イヴリンが再びウインクした。「どういたしまして、ハニー。すぐお持ちするわ」
 それを聞いた瞬間、マリエッタはイヴリンのことが大好きになった。
 まもなく飛行機は離陸した。その一時間後には、ローマとフランス南岸にある目的地、トゥーロンとのちょうど中間地点を高度約一万二千メートルで飛行していた。イヴリンがそう教えてくれたのだ。彼女はまさに情報の泉とも言うべき人物だった。離陸前に問題はないかと尋ねた以外、ほとんど口をきいていないニコとは違って。
 ニコは反対側の座席に座っている。マリエッタと向き合っているから、ノートパソコンから顔を上げれば会話ができるのに、ひと言も口をきかない。この一時間、一度もだ。そのせいでマリエッタは彼の注意を引いてみたくてたまらなくなった。
「はい、どうぞ、ハニー」
 イヴリンがさっき頼んだミネラルウォーターを持ってきて、テーブルの上に置いた。マリエッタは礼を言う代わりににっこりした。そして、すらりとした長身のイヴリンが向こう端へ戻っていくのを見送り、こちらの声が完全に届かなくなるのを待ってから口を開いた。「私、彼女が好きよ」
 ニコが顔を上げた。マリエッタは心の中で拳を突きあげ、自己満足にひたった。とうとう彼の注意を引いたわ。
「なんだって?」
「イヴリンよ」マリエッタはそう言って、ニコの反応を見守った。自家用機の乗務員がどんなに美しいかは彼も知っているはずだ。男性なら誰もが長く引きしまったあのすばらしい脚に気づくだろう。彼女は脚だけでなくすべてが完璧で優雅だけれど。
 だが、ニコは眉根を寄せてこちらをじっと見ている。まるでなんの、あるいは誰の話をしているかわからないというように。
「乗務員のこと」マリエッタは心の底から驚いて彼を見つめた。「自家用機の乗務員の名前を知らないの?」
 ニコが肩をすくめた。「僕は何百人もの社員を雇っているんだ」その口調からして、それが完璧な言い訳になるとでも思っているようだ。それから再びノートパソコンに注意を戻した。
 会話は終わった。
 マリエッタは不満げに鼻を鳴らした。「私は彼女が好きよ。仕事ができるし、すばらしく美しい脚をしているわ」
 その言葉が再びニコの注意を引いた。
 彼の視線を受け、マリエッタは肩をすくめた。「私は画家よ。だからあらゆる形の美に関心があるの。イヴリンがすばらしい脚をしているのはあなたも認めるはずよ」
「気づかなかった」
「本当に?」マリエッタは不信感をあらわにした。
「|ああ《ウイ》」彼女の目を見て、ニコが言った。
 それから予想もしなかったことに、ニコの視線が下に向かった。まずはマリエッタの唇で数秒間止まった。マリエッタはどぎまぎし、舌で唇を湿らせた。そのあと、彼の視線は胸へ下りていき、そこで再び止まった。ほんのつかのまだったが、故意にそそがれた視線の効果は絶大で、まるで実際に胸に触れられたかのように感じた。
 首から胸にかけての肌が熱を帯び、心臓の鼓動が速くなって、喉元が蝶のはばたきのようにせわしなく脈打った。
 やがてニコの視線はマリエッタの顔に戻った。頬の赤みに気づいたに違いない。彼の唇の片側が間違いなく再び上がった。笑みとは呼べないほどかすかに。
「僕は女性の脚より胸のほうに興味があるんだ」ニコが言った。まるで、えんどう豆より大豆が好きだとか、ステーキはミディアムレアがいいと言うときのような口調で。そして仕事に戻った。短いけれど衝撃的なその会話のせいで、二人の周囲の空気が音をたてて燃えだしそうになっていることにはまったく気づいていないようだ。
 マリエッタは唇を引き結んだ。一本取られたわ。ニコの目的はショックを与えて私を黙らせることだったに違いない。ミネラルウォーターの蓋を開け、グラスに水をついでいっきに飲んだが、頬のほてりも押し寄せる羞恥の念も消えなかった。
 私はニコから無理やり反応を引き出そうとした。どうして? 退屈だったから? 無視されたように感じたから? ニコはこれまで出会った中で最もハンサムで、最もよそよそしい男性で、女としての私が彼の気を引きたいと強く望んだから?
 どの理由も納得がいかなかった。
 男性に注意を向けてもらう必要はない。そもそも私には男性は必要ない。私の体は決して元に戻らないけれど、とにかく人生は立て直した。それが私の望むこと、私に必要なことのすべてだ。仕事と画家としての成功があれば十分。そう、十分のはず。
 手に入らないものを求めるのはやめたのだから。手に入れることができないもの、運命で手に入らないと決まっているものを求めるのは。
 私はいつでも現実を見ている。
 でも、ニコは……夢だ。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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