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秘書という名の囚われ人

秘書という名の囚われ人


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ロマンス
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 シャンテル・ショー(Chantelle Shaw)
 イギリスの作家。ロンドン育ちで、頭の中でおはなしを作るのが大好きな少女だった。二十歳で結婚、第一子の誕生とともにケント州の海辺に移り、現在に至っている。浜を散歩しながら小説の構想を練るという。趣味はガーデニングやハイキング。六人の子供の母親でもある。

解説

純潔を捧げたひとに金目当てと罵倒され、一途な恋心は砕け散った。

パーティに出席するためアマルフィに飛んだオーラは、大富豪トーレ・ロマーノと皮肉な再会を果たした。8年前、無垢な彼女はイタリアで出会ったハンサムな彼にたちまち心奪われ、愚かにもバージンを捧げた。しかし翌朝、残酷な彼の言葉が夢の夜を悪夢に変えた。“君も財産狙いだろう?”――以来、彼を避け続けてきたのに、昔より魅力を増したトーレは、母の治療費の工面に悩む失業中の彼女に、臨時秘書の職を提示してきたのだ。もしまた誘惑されたら……?そんなオーラの不安は的中する。

■踏みにじられた苦い初恋の記憶は、胸の奥底に封印したはずだったのに……。冷酷なボスは、ヒロインを秘書という名のもとに二人きりの空間に誘い込んで籠絡しようとたくらみ……。官能的なラブシーンが魅力のシャンテル・ショーの逸作です。

抄録

 唇が重なったときのことがいやでもよみがえる。甘く激しい最初のキスは、あれからずっと心に刻まれている。八年前、差しだせるものをすべてこの男性に捧げた。思い返せば泣きたくなるほど、わたしは世間知らずだった。彼は純潔を奪ったあと、虫けらのようにわたしを踏みにじったのだ。
「スピードを出していたのは認めるが、アマルフィの道はぼくにとって裏庭みたいなものだ。どのカーブも知り抜いている」トーレが物憂げに言いながらオーラに近づく。「それに、少々の危険は誰にでも必要だ。さもないと、人生はつまらなくなる」
 磨いた鋼のように灰色の瞳がきらめく。オーラの目の前で彼の足が止まった。こんなに近くては、喉元の脈の乱れに気づかれてしまう。オーラは思わず手を上げ、首につけた金のチェーンを落ち着かなげにいじった。
「そうかしら。むやみに危険を冒すのは愚かよ」オーラは顎を上げ、彼の顔をまっすぐ見ようと試みた。トーレはこんなに背が高かった? 七センチのヒールを履いていても、見上げなければならない。なぜ彼に挑みたくなるの? それこそ危険きわまりない。離れるほうが賢明だ。
 ところが、オーラは動くに動けなかった。脳からの指令に足が従わない。トーレに魅せられるあまり、こちらに伸びてきた彼の手にサングラスを外されても、まだその場に釘づけになっていた。
「きみの瞳の色は記憶にあるとおりだ。はしばみ色で、オリーブグリーンの斑点がある」トーレがささやいた。
 自分でも耳につくほど、オーラの息は浅く乱れていた。胸を打つ鼓動も彼に聞かれているに違いない。一カ月前にジュセッペの誕生パーティの招待を受けて以来、トーレとの避けられない再会に備えてきた。頭に描いた場面では、取りつく島もない態度をとる自分がいた。想像のなかのトーレは、何年も前の拒絶を深く悔いていた。
 けれど、体がその筋書きに従おうとしない。まだめまいがするのは暑さのせいだと急いで自分に言い聞かせる。それ以上に説明がつかないのは、胸が重く感じられ、先端が硬くとがっていることだ。ドレスの上からそれがわからないようオーラは祈った。
「返してくれる?」急に湧いた怒りをいいことに、彼女はトーレの手からサングラスを奪ってかけ直した。暗いレンズで目が隠れているほうが安心だ。「わたしの瞳の色を覚えているなんて驚きね。こっちは八年前のあなたがどうだったか、記憶にないくらいなのに」
 悔しいことに、鋭い切り返しもなんの効き目もないようだ。むしろ彼の笑みが大きくなり、オーラは息をのんだ。
「幸い、この機会にまた知り合える」トーレが小声で言った。
「どこが幸いなの?」オーラはぶしつけにきき返した。「これだけは覚えているけれど、一夜をともにしたあと、あなたは早くわたしを追い払いたがっていたわ」トーレは聞く耳を持たないらしい。暗く強いまなざしをわたしに注ぎ、あの締めつけるような興奮をますますかきたてる。もっと近づいて体を重ねたいという狂おしい衝動に屈しそうなくらいに。
 オーラが乾いた唇をなめると、その舌の動きにトーレが見入った。彼の顔から笑みが消え、野蛮とも言える険しさを帯びる。
「十八のきみはかわいかった」彼は辛辣な口調で言った。「だが、今は……」声がざらつく。「愕然とするほど美しい」
 身動きどころか息さえできず、オーラはトーレを見返した。太陽を直視したかのように目がくらむ。今の彼は、堕天使か悪魔の化身に見えた。どちらにしても、まばゆいばかりの魅力を放ち、彼女の胸を震わせた。
 トーレを最後に見てから八年の時が流れ、絵に描いたように完璧な顔だちは険しく荒削りになった。彫刻めいた彫りの深さは以前のままだが、唇の官能的な線が少しだけ柔らかな印象を添えている。角張った顎にはうっすらとひげが伸び、指でさわればちくちくするだろう。けれど、黒に近い豊かな髪に指を通せば、シルクの感触がするはずだ。
 高まる緊張に空気が熱く濃密になり、オーラの冷静さは今にもはぎ取られそうだった。トーレから目をそらそうとしてもできない。なぜか唇からも。いつ彼はこんな近くに来たのだろう。
「人は変わるものだ」トーレが独り言のようにつぶやいた。
「どういう意味?」聞き間違いかしら? それとも何か誤解しているの? ああ、頭がまともに働かない。
 彼がさらに近づくと、その体から放たれる熱気に溺れそうになった。アフターシェーブローションの刺激的なにおいが懐かしい。めまいが止まらず、オーラは現実から切り離されたような奇妙な感覚に襲われた。
「オーラ……」
 低く差し迫った声で呼びかけられ、オーラは雷に打たれた気がした。体のなかに嵐が吹き荒れる。稲妻にも似たこの衝撃になすすべもなく、彼のほうへと引き寄せられる。トーレが唇を斜めにして近づけると、その温かな息がオーラの唇にかかった。


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