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和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン文庫

愛と名誉にかけて

愛と名誉にかけて


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン文庫
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ルーシー・ゴードン(Lucy Gordon)
 雑誌記者として書くことを学び、ウォーレン・ベイティやリチャード・チェンバレン、ロジャー・ムーア、アレック・ギネス、ジョン・ギールグッドなど、世界の著名な男性たちにインタビューした経験を持つ。また、アフリカで野生のライオンがいるそばでキャンプをするなど、多くの貴重な体験をし、作品にもその体験が生かされている。ヴェネチアでの休暇中、街で出会った地元の男性と結婚。会って二日で婚約し、結婚して二十五年になる。二人は三匹の犬とともにイングランド中部に暮らしている。

解説

セリーナに従姉は、娘は夫の子ではないと告白して死んだ。従姉の別居中の夫は、怜悧な美貌の実業家カルロ・ヴァレッティ。カルロの悪い噂ばかりを吹き込まれていたセリーナは信用できず、迎えに来た彼に娘を返さないと宣言するのだった。だが言葉巧みに誘惑され、抗いがたい魅力に引き込まれ……。セリーナはやがて、カルロに抱かれてしまう。甘い感傷とともに。しかし、目覚めた翌朝、カルロは冷然と言い放ったのだ。「僕の娘はどこにいる?」と――自分を誘惑した理由を知って、セリーナは瞬時に青ざめた。

抄録

「僕がここを去らねばならなかった理由は、君もよく知っているんじゃないのか?」カルロはセリーナをじっと見た。
「どうして私が?」セリーナが慎重に言葉を返す。
「それは君が女だからさ。あのときの君ははっきりとはわからなかったかもしれない。まだ若かったからね。けれど、この五年間、僕がここを去ったわけにまるで思い当たらなかったと今も言うつもりかい?」
 セリーナは大きく息を吸った。「なにを言いたいのかわからないわ」
「嘘をつかないでくれ」カルロはふいに強い衝動に駆られ、声を荒らげた。「あのとき僕は、僕と君の名誉を守ろうとして君から逃げたんだ。僕は君のいとこの夫で、結婚に縛られていた。愛じゃない、義務としての結婚に。そう、僕は逃げた。そして、君は婚約を解消した。あのとき、僕たちの心には同じ思いがあったんじゃないのか?」
 セリーナの頬が、二人が初めて会った日のように、ぱっと野バラのピンクに染まった。「私が婚約を解消したのは、ただ……私がアンドルーの妻としてふさわしくないと思ったからだわ」
「それだけ? ほんとうに?」
 セリーナはカルロを見つめ、なにか言おうとしている。カルロの胸ははげしく高鳴った。そのとき、ぴーっと鋭い音がした。セリーナは魔法を解かれたようにはっとした。「この音はなに?」
 カルロは悪態をつき、腕時計のアラームをとめた。「会社に電話する時間をセットしておいたんだ」
 セリーナはほっとしたように、カルロのそばを離れた。「この家の電話は使えないのよ」
「いいよ。車の中に携帯電話があるから」
「すぐに電話したほうがいいのではなくて?」
 魔法は消えてしまった。カルロは車に急ぎ、会社に電話した。が、うまくつながらず、携帯電話を持ったまま家に戻り、もう一度かけ直すとようやくつながった。だが、部下は約束を忘れて外出中だった。
 カルロはうらめしい思いで、フランス窓を開くセリーナの姿を眺めた。電話をテーブルに置くと、彼はセリーナのかたわらへ行き、庭を見ながら言った。「この家を売るべきではないよ。この家を心から愛している人でなければ、ここに住む資格がない」
「まあ。あなたもそう思う?」セリーナは不思議そうにカルロを見た。
 僕にはときどき君の心の中が見えるのさ……カルロは胸の中でつぶやき、セリーナに続いて庭の芝生に下りた。雨はやみ、太陽がふたたび顔をのぞかせ、木々についたしずくをダイヤモンドのように輝かせている。「最初にここへ来た日のことを思い出すよ。ルイーザが草むらを走ってきて、そのあとから君が……」木々の間を駆けてきた美しいセリーナ。裸足と着古したジーンズ。くしゃくしゃに乱れた髪。「でも、あのころは蕾の季節だった。今のように美しく花開いてはいなかったね」
 セリーナも、カルロと同じ静かな口調でささやいた。「でも、花の季節は短いわ。蕾はすぐに花になり、散ってしまうのよ」
「だが、まだ散ってはいないようだ」
 二人の目が合い、セリーナがささやいた。「そうね。まだ花は終わっていないわ」
 絹のような一房の髪がセリーナの顔に落ち、カルロはかつてそうしたようにその髪をピンに戻した。指がセリーナの頬をかすめると、カルロの心臓は早鐘のように打った。セリーナは目を見開き、カルロを見つめている。まるで星々がまわりをめぐる宇宙の中心になってしまったかのように、二人は微動だにせず、おたがいを見つめた。このめくるめくような一瞬、二人は初めておたがいの心を無言のうちに確かめ合った。この五年間に起こったあらゆる出来事が、二人にとって一つの意味をもったのだ。気がつくと、セリーナはカルロの腕に抱かれていた。
 春風が香り、セリーナの唇は野生の蜜のようにカルロを誘っている。カルロは夢を見ているような気がした。この五年間、眠れぬ夜に恋こがれたセリーナが今、自分の腕の中にいる。
「セリーナ……セリーナ、わかってくれるね?」カルロがかすれた声で言う。
「ええ……わかっているわ」
 カルロがセリーナのやわらかな唇をふさぎ、両手でその顔を包むと、セリーナがささやいた。「どうしたのかしら……ああ、なにが起こったの? 私がこんなことをするなんて」
「いや、まだこれからさ。まだ始まったばかりで、なにが起こるか僕たちにもわからない。でも、この気持ちにあらがうのは無理なんだ」
「なんでもないと思うようにしてきたのに……。強くなりたかったのに……」
 頭上の梢から雨のしずくがしたたり落ち、セリーナの頬を濡らす。カルロは彼女の涙のようなそのしずくをそっと唇でぬぐった。「僕も強くなろうとしたよ。でも、もう君と闘う力は残っていない。君は……僕と闘えるかい?」
 セリーナが黙って首を横に振る。カルロはふたたびセリーナの唇を心ゆくまで味わった。セリーナが満足の小さなため息をもらすと、温かい息がカルロの息と混じり合い、彼の心臓はさらにはげしく打った。僕はセリーナを求めている。体が求め、それ以上に心が求めている。
 風が梢を吹き抜け、雨のしずくがきらきらと降りそそぎ、二人は笑って体を離した。しかし、すぐに笑うのをやめ、おたがいを見つめ合った。カルロがそっとささやく。「さあ、おいで……いとしい人」


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