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シンデレラの階段【ハーレクイン文庫版】

シンデレラの階段【ハーレクイン文庫版】


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン文庫
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ソフィー・ウエストン(Sophie Weston)
 ロンドン生まれ。五歳のときから物語を書き始める。生来の旅好きで、健康を害したおり回復を願って最初のロマンス小説を書くが、旅にはもう出られないと思っていた。だがそれは間違いだったようで、今にいたるまで大いに旅を楽しんできた。最近は都心に二匹の猫と暮らし、さくらんぼの木を植えて楽しんでいる。そして世界を旅して、物語の題材を探すことも忘れない。

解説

里親の理不尽な暴力に耐えられず、家を飛び出した孤児のジョー。そんな彼女はある日、水辺で、美貌の男性パトリックと出逢う。生まれて初めて優しくされて、ジョーは心惹かれるが、彼女には知られたくない秘密があり、逃げてしまうのだった。ジョーはこの近くの古城で雇われていた。だが主人が女嫌いで少年のふりをしているのだ。幸い、目の悪い家政婦がいるだけで、主人が戻ることはまずないが、女と知れたら首になってしまう。ところが、城に帰ると、城主バーンズが帰還していた。しかもそれは、さきほど水辺で会ったパトリックだった。

*本書は、ハーレクイン・イマージュから既に配信されている作品のハーレクイン文庫版となります。 ご購入の際は十分ご注意ください。

抄録

 男性から険しい表情が消えたことに、ジョーはなぜだかほっとした。彼を強く意識していた。正直に言って、喜んでいいのか悲しめばいいのか自分でもよくわからない。
「水から上がって、乾かしたほうがよくないか? そのままでいるのはよくない」
 心乱れる思いを振り払おうと、ジョーは濡れた頭を思いきり振った。「走りまわって体を乾かすしかないの。タオルがないから」彼女は陽気に言った。
 彼はますますおもしろがっているらしい。
「じゃあ、衝動的に水浴びしたのか?」
 ジョーは後ろめたくなった。「水を見たら、我慢できなかったの」
「危ないな」彼は首を振って言ったが、笑顔は変わらない。
 男性に笑顔を向けられ、ジョーはうれしかった。彼をからかってみる。「あなたにとって、衝動に負けるのは危険なことなの?」
「たいていね」
 男性が立ちあがって、黒のジャケットを脱いだ。下に着ているやわらかなネイビーブルーのシャツから、胸元がのぞいている。彼はわざわざボタンをはずさず、シャツを頭から脱いでジョーに差し出した。
「ほら、これでふけよ」
 彼の胸は顔ほど日焼けしてなく、黒い胸毛が少しあった。ジョーは口の中がからからになった。ふいに、彼の体が途方もない熱を発しているように思えた。男性がとてもたくましく見える。
「とてもありがたいけれど、結構よ。本当に」
「君はそうかもしれない」彼は苦々しそうに自嘲気味な声で言った。「だが僕のほうは、君が走りまわって体を乾かしている間、どれくらい自制心が必要かわからないじゃないか」
 お互いを意識する気持ちはまだ続いていたのだ。行儀よくふるまっていただけで。
 ジョーは視線を落とした。恥ずかしかったけれど、妙に心が騒いでもいた。
「さあ、受け取って。こんな天気だから、僕はシャツがなくてもいい」
 ジョーはうなずいたが、顔は上げなかった。水をかき分けながらできるだけ急いで前に進むと、彼からシャツを受け取る。指が触れ合うことはなかった。
 シャツを高く掲げ、彼女は男性とは反対側の川岸に向かった。軽い身のこなしで岸に上がり、木々の間に姿を消す。麻のシャツはやわらかで、肌がぞくぞくした。それどころか、全身がうずいていた。
 ばかげているわ、とジョーはつぶやいた。今日初めて会って、この先二度と会わない相手なのに。
 彼女は濡れた髪をふいてから、石の階段をのぼって日差しの中に出た。
 男性はジョーを待っていた。川岸を歩いて、反対側の階段から上がってきていた。今は欄干の笠石にもたれて、上流の方を眺めている。
「きれいでしょう?」ジョーはそっと近づいて言った。
 もう服を着ているのに恥ずかしがるなんて、ひどくばかげている。川の中ではしゃいで彼を驚かせたときには、なんの屈託もなく話しかけていた。なのに、今のこのとてつもない気まずさはなに?
 かなりの努力をした末に、ジョーは男性と視線を合わせた。純粋に親しそうな笑みに見えますように、と願いながらほほえむ。彼の苦々しげな表情に、ジョーはうまくいったのかどうか不安になった。
「そうだな、きれいだ。だが、私有地でもある。どうやってここに来た?」
「農場からの帰りなの」ジョーは遠くの農家を手で示した。
「ああ、あの古い裏の私道にある家か。なるほど」
 その言葉に非難めいたものを感じて、ジョーは赤くなった。「この道を使う人はいないわ。だから一人きりだと思ったの」
「僕もだ。どうやら、どちらも間違っていたようだが」彼は勢いよくため息をついた。
 ジョーはふと思った。彼は考えごとがあって、一人になりたかったのかもしれない。最初の耳障りな声は、楽しそうではなかった。
「ごめんなさい。まわりの人から逃げたくなる気持ちがどんなものかは、よくわかるわ。釣りかなにかしていたの?」
「いや、釣りじゃない。考えごとをしていたんだ。どうするべきか答えをさがそうと――」彼は急に話すのをやめて、腹立たしげにさっと肩をすくめた。「普段なら、問題が起きてもなんとかできるんだ。だが今回は、あまりにもおおぜいの人間が立ちふさがっていて」
 ジョーはうなずき、心をこめて言った。「私も同じ経験があるわ」
「まさか」彼は見えない敵をにらみつけるような目をして、いらだたしげに言った。
 彼女は笑みをこらえた。「驚くでしょうね」
 男性はジョーを振り返った。その瞳からは険しい表情が消えていた。
 ジョーは濡れた髪を指ですいた。「私にとって、他人はいつも最大の悩みの種だった」彼女は顔をしかめたが、自分でも驚いたことに、苦々しい思いはこみあげなかった。「そういう人たちともつき合うか、でなければ真っ向から立ち向かうしかないのよ」
「十九にしては賢いんだな」驚いた声だった。
 ジョーは肩をすくめた。「言ったでしょう。人生経験は時計の針をすごくよけいに進めてくれるの」
 彼は欄干にもたれ、金色がかった褐色の瞳に好奇心をたたえてジョーをじっと見つめた。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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