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元帥皇帝のお気に入り〜没落令嬢は囲われ溺愛に翻弄されてます〜

元帥皇帝のお気に入り〜没落令嬢は囲われ溺愛に翻弄されてます〜


発行: ヴァニラ文庫
シリーズ: ヴァニラ文庫
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
みんなの評価 ★★★★☆1
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解説

待たない。今すぐ欲しくなった
偶然助けた皇帝陛下からプロポーズ!?突然の溺甘蜜月

父亡き後、病身の母を支えるローズリーヌは、ある日、傷付いた美しい騎士クレメンスを助け、愛し合うようになる。「感じやすい。たまらなくそそるな」愛される悦びに浸るローズリーヌだが、なんと彼は次期皇帝だった。密かに式を挙げ、離宮に住まわされるも、未だクレメンスを取り巻く情勢は厳しい。自分では彼の助けにならないと悩むローズリーヌは!?

※こちらの作品にはイラストが収録されています。
 尚、イラストは紙書籍と電子版で異なる場合がございます。ご了承ください。

抄録

「クレメンスさん、お待たせしました。動かないでください! 井戸がありますから。……今そちらに行きます」
 鈴を振るような愛らしい声が言った。さっきの少女が燭台を手に、階段を下りてきたのだ。
「――ここは?」
「何かあった時のための抜け穴です。だから飲み水を確保するための井戸が掘ってありますし、裏の出口につながっているんです。昔、先祖が皇帝陛下を匿い、この地下道から森を抜けて逃がしたと言われていますが、今では、道具を保管してある納屋として使われています」
 彼女が燭台をかざして、その道具のひとつひとつを照らしながらこちらにやってくる。彼女は毛布を床に敷き、そこに座るようにと言った。
「傷は痛みますか?」
「少しな」
「温めますね」
 彼女は湯で絞ったリンネルを傷口に当てた。するとまた血がにじみ出してきた。
 そうやって森で施したのと同じことを繰り返し、すっかり毒を吸い出した。
 少し熱っぽいし頭痛はするが、大事には至らなそうだ。
「埃っぽくてごめんなさい」
「いや、かまわないが……井戸の他にはいったい何があるんだ」
 ざっと見たところ、クレメンスには使い道の理解できないものばかりだった。
 少女の背後には大きな木製の歯車をいくつか組み合わせた装置があり、軸棒にロープが巻いてあった。その先には鉄製の鎧でできた鎧人形のような置物もあり、いずれもずいぶん長い間捨て置かれたらしく分厚いホコリがかぶっている。
「父の発明品です。この鎧は軽くてとても丈夫なんだそうです」
 彼女は、さっきクレメンスが蹴ってしまった金属の物体を指して言った。
「へえ。こっちの大きなやつは?」
 彼は巨大なラッパのような、しかし大砲のように見えなくもない装置に目を留める。
「それは、拡音器といって」
 彼女は傍らに置かれていた奇妙な道具に燭台を近づけて言った。
「この穴にほんの少量の火薬をここに入れて点火すると、こちらから――」
 彼女は大きな漏斗のような金属の部品を指した。
「大砲十機分の号砲が轟くんだそうです。わたしは実際に聞いたことはありませんが」
 へえ、と言って、クレメンスはその機械をまじまじと眺めた。
「お父上は何をされているのだ?」
 と、彼はホコリに咳き込みながら言った。
「父はもう亡くなりましたが、こうした理解に苦しむものを作っていたのは道楽だったんです」
「なるほど」
 邸もなかなか立派なものだし、道楽して暮らせる身分ということだろう。昔皇帝を匿ったなどという逸話も興味深い。
「面白いな」
「面白いですか?」
 彼女は驚いたように問い返した。
 まるでそういう反応をした人間を初めて見た、とでもいうように。
「ああ。実際にそれが可能なら使ってみたい」
 彼がそう言うと、童女のように小柄な彼女は、分厚いレンズの奥からこちらを窺い見た。微かな笑みがその小さな唇に浮かんで、すぐに消えた。
 完全にクレメンスへの警戒心を解いていないだろうに、それでもどこか落ち着いた雰囲気をもつこの少女の声が心地よく響いてくる。
 ドレスは芥子色のシンプルなデザインで、黒い髪は緩く結い上げている。家主の娘にしてはみすぼらしすぎるが、さっき確かに、彼女は領主の娘と言った。
 そんなこちらの心情などおかまいなしに、彼女は手早く傷口を水で洗い流し、新しい布でそっと拭った。
「ここでお休みください。この階段を上がると隠し扉があり、『皇帝の間』につながっていますが、決して姿を見せないようにしてください」
「わかった」
「馬は厩にいますから、危機が去ったとわかった時点でそっと出ていくことができますが、まずは安静にして体を治してください。家人にはあなたのことは話していないので、その目を盗んであなたの様子を見にきますが、いつになるかは約束できません。食糧と明かりをここに置いていきます」
 彼女はそう言うと、再び階段を上がり、パンの入った籠と水差しを持って降りてきた。
 テキパキとしたその動作が好ましいと思えた。馬も保護してもらえたのはありがたい。
「敵に見つからないように、馬にちょっと細工をしてしまいましたが、厩にいるのはあなたの馬――カロンバックに間違いありません」
 いったい何をしたのやら。
「全身に灰をまぶして、毛色を変えたんです。勝手にごめんなさい」
 灰をかぶってロバのような外見になった愛馬を想像すると、クレメンスは笑いがこみ上げた。なかなか目端の利く娘だ。
「わかった。――もし、ミュカスと名乗る男が来たら、その皇帝の間で待たせてくれ。私がいるとは言わずに。その隠し扉から当人かどうか確認してから会おうと思う」
「ミュカス……さんですか。わかりました。では、これ以上長居をすると怪しまれるので、行きますね」
「待て」
 クレメンスは彼女を引き留めた。衝動的に、そうしたくなったのだ。
「どうしました?」
「唇に――血がついてる」
 彼はそう言ってローズリーヌを引き寄せると、自分の唇でそれを拭った。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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