マイリストに追加

和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン・ディザイア

愛なき結婚の果てに ハーレクイン・ディザイア傑作選

愛なき結婚の果てに ハーレクイン・ディザイア傑作選


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ディザイアハーレクイン・ディザイア傑作選
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
みんなの評価 未評価
◆レビューを書く

¥0サンプル
XMDFのファイルをご覧になるにはブンコビューア最新版(無料)をインストールしてください。

「書籍ファイルが壊れています」と表示される場合は、ブンコビューアを最新版にアップデートしてください。
購入する


著者プロフィール

 イヴォンヌ・リンゼイ(Yvonne Lindsay)
 ニュージーランドに生まれ、十三歳の頃からロマンス小説を愛読するようになった。ブラインド・デートで出会った男性と結婚し、二人の子供がいる。読書を通じて人々のさまざまな愛の力を追体験していると言う。

解説

ただ一夜でも、あなたの愛にすがりたい――そう思わせた彼の瞳は今、氷のように冷たい。

貧しい家に生まれ、親に楽をさせたいと老富豪に嫁ぐ道を選んだヘレナ。しかし結婚式前夜、不運にも車の事故で川に転落してしまい、死を覚悟した瞬間、通りかかったたくましい男性に助け出された。明日には、私は愛の自由を失う身。だからせめて、今夜だけは……。彼女は名も知らぬ命の恩人の魅力に導かれるまま情熱を分かち合った。12年後、仕事で窮地に陥ったヘレナは、同業の大物社長となったあの忘れえぬ一夜限りの恋人、メイソンのもとを訪ねて救いを求めた。彼こそが息子の父親だという、重大な秘密もろとも打ち明けて。すると、メイソンは軽蔑の念もあらわに彼女を睨みつけた。「きみはいままで、何人の男とベッドをともにしてきた?」

■名作を選りすぐる“ハーレクイン・ディザイア傑作選”より、ハラハラドキドキのシークレットベビー物語をお届けします。期待を裏切らない劇的な展開が楽しめるイヴォンヌ・リンゼイの意欲作です!

*本書は、ハーレクイン・ディザイアから既に配信されている作品のハーレクイン・ディザイア傑作選となります。 ご購入の際は十分ご注意ください。

抄録

 諦めなさい。頭の奥で声がささやく。諦めるのよ。彼女は運転席にさらに深く身を沈めた。寒さが骨に染み込み、心が焦点を失う。あとどれくらい、こうしていられるのだろう?
 それまでとは異なる音が車の外で響いた。それがヘレナの心を覆う霧を貫く。まぶたを開け、周囲に視線を走らせる。頭上の道路では豆電球が光を放っていた。引きつった笑い声が喉からもれる。死ぬまぎわには、暗いトンネルと白い光が見えるって聞いたけど、あの話は嘘だったの?
 フロントガラスの向こうに、黒い人影が不意に姿を現した。フロントガラスに押しつけられる顔は青白い。人影のまわりでは水が泡立っていた。増大する川の圧力に屈し、車がわずかに押し流される。フロントガラスの向こうの男性の唇が動いた。彼女は首を左右に振った。何て言っているの? 男性が両腕を上げる。ヘレナは彼の両手に握られた斧に気づいた。彼が斧でフロントガラスをこつこつと叩く。男性の言おうとしていることが、とたんに理解できた。彼女は車内に溜まった水のなかに、体を横ざまに投げ出した。フロントガラスが骰子型の破片と化し、全身に降りそそぐ。
 弱められていた水の音が、凄まじい轟音と化して彼女の耳を襲った。力強い手が差し伸べられ、彼女のジャケットを、そして髪をつかむ。男性は穴のあいたフロントガラスから彼女を引きずり出そうとした。ヘレナも体をくねらせ、力を貸そうとする。だが、手足が思うように動かない。男性が力まかせにヘレナを持ち上げると、彼女の華奢な体が車の外に出た。彼女をのみ込もうと川が渦を巻く。が、男性はその体を楯にし、彼女を川岸まで運んだ。
 川岸の地面は硬かった。が、その硬さがたまらなく心地よかった。地面と接する部分が体の重みで痛む。それこそが生きている証なのだ。いまはただ眠りたかった。しかし、彼女を救った男性はそれを許すつもりはないようだった。
「車にはほかに誰もいないのか?」ヘレナの耳もとで叫ぶ。「答えるんだ! 誰もいないのか?」
 彼女は弱々しい声で言った。「いないわ」
「よし。怪我はないか?」
 ヘレナは彼の両手を肌で感じた。力強く、きびきびと動く手。彼女の頭皮を探り、体の状態を大まかに確かめる。
「骨はどこも折れてないようだ。体を乾かせるところに行こう」
「わたしの車は?」
「残念だが、きみの車は下流に流された。それより体を乾かして暖まることが先だ」
 彼はヘレナを両腕で抱え上げ、道路脇の空き地に向かって大股で歩きだした。そこにはトレーラーをつないだ大型トラックが停まっていた。彼女の唇にかすかな笑みが浮かぶ。さっき頭が混乱した理由がわかったからだ。長距離トラックの車体には、側灯が並んでいたのだ。
「何がそんなにおかしいんだ?」
 その声は低く、若さに満ちていた。聞くだけで気持ちが静まる。彼の顔が見たかった。が、頭の角度を変える力すら残っていなかった。
「豆電球みたい」ヘレナがささやく。
 深みのある笑い声が彼の体を震わせた。「ああ、たしかに」
 彼はヘレナを運転台まで押し上げ、みずからもそのあとからトラックに乗り込んだ。運転台の後方の仮眠スペースに彼女の体を横たえる。
「どのくらい水中にいたか思い出せるか? 事故に遭ったのは何時くらいだ?」
「九時すぎ……だと思うわ」
 彼はダッシュボードの時計に視線を走らせた。「三十分くらいか。何だってタイヤにチェーンもつけずに車を出したんだ? 警告のサインが見えなかったのか?」
「車を……と、停めたくなかったの。どうしても、オークランドに行きたかったから」
「今夜は無理だな」
 そのとき無線機から、声が唐突に聞こえてきた。彼は悪態をつき、応答した。ヘレナは耳を澄ませたが、聞き取れたのは“事故”と“低体温症”という単語だけだった。やがて彼女は強力な磁石に引かれるように、眠りのなかに滑り落ちていった。が、彼がやさしく体を揺さぶり、眠りを遮る。
「そのまま寝るんじゃない。服を脱いで、体を温めるんだ。できそうかい?」
「む、無理。ゆ、指が……か、かじかんでいて」
 彼がぬれた服を剥ぎ取りはじめる。ヘレナは自分が人形のように無力に思えてきた。ヘレナの体が激しく震えはじめると、彼はつぶやくように言った。
「震えが来るのはいい徴候だ。回復してきた証拠だ」
 血行が少しずつ戻るにつれ、彼女は痛みに苛まれた。「引き返す? わ、わたしはまだ……も、目的地に着いてもいないのよ」
 彼がまた含み笑いをもらす。ヘレナはその笑い声が好きになった。低く、温かい声。
「残念ながら、今夜はここから動けない。この先のモーテルまできみを連れていきたかったが、道路の入口と出口が朝まで閉鎖されてしまったんだ」
 彼はヘレナを裸にすると、狭い寝台にそっと寝かせ、スリーピング・バッグで包み込んだ。ヘレナは朦朧としたまま、彼のぬれた服が床に放り出される音を耳にした。体の震えは止まらなかった。彼がかたわらに身を横たえると、ぬくもりが伝わってきた。心をとろかすような快いぬくもり。たくましい腕で引き寄せられ、岩のように硬い胸に抱かれると、彼女はため息をついた。彼がスリーピング・バッグで二人の体を包んだときには、ヘレナはすでに眠りに落ちていた。


*この続きは製品版でお楽しみください。

本の情報

形式

【XMDF形式】

XMDFデータをご覧いただくためには専用のブラウザソフト・ブンコビューア最新版(無料)が必要になります。ブンコビューアは【ここ】から無料でダウンロードできます。
詳しくはXMDF形式の詳細説明をご覧下さい。

対応端末欄に「ソニー“Reader”」と表示されている作品については、eBook Transfer for Readerで“Reader”にファイルを転送する事で閲覧できます。
海外版の“Reader”は対応しておりませんので予めご了承くださいませ。

【MEDUSA形式】
MEDUSA形式の作品はブラウザですぐに開いて読むことができます。パソコン、スマートフォン、タブレット端末などで読むことができます。作品はクラウド上に保存されているためファイル管理の手間は必要ありません。閲覧開始時はネットに接続している必要があります。

詳細はMEDUSA形式の詳細説明をご覧下さい。