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和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン・ロマンス

恋も愛も知らないまま

恋も愛も知らないまま


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ロマンス
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 サラ・クレイヴン(Sara Craven)
 イングランド南西部サウス・デボン生まれ。海辺の家で本に囲まれて育った。グラマースクール卒業後は、地元のジャーナリストとして、フラワーショーから殺人事件まで、あらゆる分野の記事を手がける。ロマンス小説を書き始めたのは一九七五年から。執筆のほかには、映画、音楽、料理、おいしいレストランの食べ歩きなどに情熱を傾けている。サマセット在住。

解説

情熱に身を任せる喜びを初めて知った夜。忘れられなかったあの人が今、ここにいる。

「ザンダー……」アラナは友人の招待で訪れた由緒ある邸宅で、苦い一夜の恋の相手と再会した。1年前、襲われかけたところを助けてくれたハンサムな実業家、ザンダーの魅力に抗えず、彼のペントハウスで純潔を捧げた。けれど翌朝、身分違いの恋が怖くなって逃げ出したのだ。まさか彼が覚えているはずもない。1年前に彼の寝室から逃げ出した、臆病な娘のことなど……。ところが、巨万の富を持つ彼はアラナが勤める会社を買収し、あろうことか新しい上司として赴任してきた!

■2017年11月に惜しまれつつ亡くなった、ハーレクイン・ロマンスの大人気作家サラ・クレイヴンの遺作をお贈りします。ドラマチックかつ流麗な筆致で描かれる、ヒロインの愛と哀しみ、そして熱情。世界中の読者を魅了した実力派の逸作をご堪能ください。

抄録

 アラナは必死に考えた。ベストセラー作家の股間に膝蹴りを見舞ったら、どんな罰を受けるだろう?
 だが、そんな危険を冒す間もなく、別の声が割り込んできた。
「まだ終わらないのか、ダーリン?」さっきの客だった。あの銀色の瞳の彼が、店のドア口にさりげなくもたれ、アラナにほほえみかけている。邪魔が入ったことに腹を立てたウィントンが、顔を赤くしてさっと振り向いたが、銀色の瞳の彼は目もくれない。「このあとはぼくと過ごす約束だっただろう?」
 アラナはかすれる声で答えた。「もう出られるわ。その……ジャケットとバッグを取ってくるわ」
 ウィントンの横をすり抜け、控え室から身のまわりのものを取ってくると、今夜はうまくいってよかったですねとソロモンに声をかけ、ドア口で待つ、思いがけない救世主と合流した。
「ちょうどいいところへ来たようだな」アラナがジャケットを着るのに手を貸しながら、彼は言った。
「本当に」アラナは身震いして言った。「なんとお礼を言っていいか」少し考えてから言った。「でも、なぜ戻ってきたの? やっぱりあの本が気に入らなかったとか?」
「いや。きみを食事に誘いたくて」
 アラナは脈が跳ね上がり、口ごもった。「それはご親切に」なんとか答える。「でも、本当に、その必要はないわ」
「そうは思えないな」彼は言った。「きみと英文学について引き続き議論したいし、ひとりで食事をするのは嫌いなんだ」
「でも、あなたの名前も知らないし……」
「ザンダーだ。ザンと呼んでくれればいい。それで、きみは……?」
 ごくりと唾をのみ込んで答えた。「アラナよ」
「これで五十パーセントは礼儀をわきまえたことになるかな」ザンダーは言った。「残りはこれからでいい」
 どこからか不意に現れたタクシーを、彼は呼び止めた。ひと目見たときから気づいていたが、彼は危険な香りがするほど魅力的な男性だ。この人の誘いを受けたら、あとあとひどい目に遭うのではないだろうか。
 その思いを強くしたのは、ソルブックスから出てきたウィントンが悪意に満ちた目でこちらをにらみつけたときだった。あの様子だと、彼がこのまま引き下がるとは思えない。新たな不安に、アラナは胃がむかつく思いをしながらタクシーに乗り込んだ。
 隣に乗り込んできたザンダーが、その様子に気づいた。
「どうかしたのか?」
 アラナは震える声で言った。「ごめんなさい、あまりおなかがすいていないの。だから……家に帰らせて」
「家族と同居しているのか?」
「いいえ。フラット住まいよ」ずいぶんと見栄を張った言い方だった。壁面キッチンつきのワンルームで、バスルームは共用なのに。
「ルームメイトは?」
「あの……いないわ」
 ザンダーはうなずいた。「だったら、最初のプランどおりにするのが一番だ。いやな思いをしたあとだから、誰かと食事をすれば気が晴れる。ひとりで気に病むのはよくない」
「言うのは簡単でしょうけど」アラナは反論した。「今夜の失態のせいで仕事を失うのはあなたではないもの。ジェフリー・ウィントンは大ベストセラー作家よ。わたしのほうが悪いと彼が言えば、人は彼を信じるわ」
「ぼくがきみの上司に話をしよう。見たことを話す。彼は理性的な人のようだから」
 ザンダーはわたしをソルブックスの書店員と思っているらしい。でも、そのほうが何かと都合がよさそうだ。ホークスアイでのわたしの立場の弱さを説明する面倒も避けられる。
 食事の件で議論を続けるのにも疲れた。それに彼は親切心で言ってくれているのだから、一時間くらいはつき合うのが礼儀だろう。
 そう決めて、窓の外に目をやり、街の明かりを眺めていると、不意にぼやけて見えてきた。
 そして自分が泣いているのに気づいて、はっとした。静かな涙だったが、止められない。
 ザンダーが小声で何か言うのが聞こえ、気がつくと彼に引き寄せられていた。彼の肩に頭を預け、腕に抱かれているのは、驚くほど心地よかった。しかも、手に持たせてくれた清潔なリネンのハンカチはとても役に立った。
「あの男はいやなやつだった」すすり泣きながら言う。「もし、あなたが戻ってこなかったら……」
「黙って」ザンダーはささやき、そっと優しくアラナの髪を撫でた。「過ぎたことだ。きみはもう安全だ」
 腕の中で気がすむまで泣かせてもらうと、アラナはぎこちなく体を起こし、目をふいて鼻をかんだ。ハンカチはぐしょぐしょになってしまった。
 タクシーはちょうど停車するところだった。ザンダーが料金を払い、気がつくとアラナは、メトロインペリアル・ホテルと書かれた立派な玄関前に立っていた。制服を着たドアマンが、優美なガラス扉を開けてくれている。
「どうしてここに?」
「食事だ」ザンダーは彼女の肘に手を添え、降りるように促した。「ほかを予約する時間がなくて。だが、ここの料理は悪くない」
 大理石のタイル敷きの広いロビーを横切り、エレベーターに乗ると、どんどん上がっていき、やがて最上階に着いた。
「ここがそのレストラン?」
「ペントハウスだよ。ロンドンではここに滞在している」ザンダーは正面のドアをカードキーで開錠し、アラナをリビングルームに案内した。薄金色の木材が使われ、アイボリーの革のソファが置かれた部屋は、彼女のワンルームのフラットふたつ分よりもまだ広い。
 ザンダーは奥の壁にあるドアを指差した。「化粧を直したいだろう。あのドアを入ると、正面にバスルームがある」


*この続きは製品版でお楽しみください。

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