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和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン・ロマンス

氷の伯爵と花売り娘

氷の伯爵と花売り娘


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ロマンス
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ロビン・ドナルド(Robyn Donald)
 ニュージーランド北部の牧場主の家に、一男五女の長女として生まれた。十五歳で師範学校に学び、十九歳で結婚、同時に小学校の教師となる。子育てを終えて一時休んでいた教職に戻り、かたわら執筆を始めた。蘭の花が咲き、キウイやオレンジの実る美しい北部の村に住む。

解説

私は信じていいの?あなたが示す情熱と優しさは本物だと。

花屋で働くイレーナは、隣家の新しい主に思わず目を奪われた。ニコ・ラドクリフ──ヨーロッパの小国の伯爵だという。魅力的だけれど、私には雲の上の人だわ。彼女は自身を戒めた。だが思いがけず、ニコから多額の報酬の仕事が舞いこむ。「司書の資格を持つきみに、屋敷の古文書の整理を頼みたい」屋根の修繕も満足にできないほど困窮していたイレーナは引き受けざるをえず、彼の屋敷に通いつめることに。数日後の朝、ニコのベッドで目覚めた彼女は青ざめた。なんてこと!彼の誘惑に負けて戒めを破ってしまうなんて……。

■ハーレクイン黎明期から活躍してきたベテラン作家、ロビン・ドナルドのじつに5年ぶりとなる新作をお届けします。傲慢ながらも魅力的なヒーローの描写はいまも健在。ぜひご注目ください!

抄録

「すぐにパティが戻ってきて、きみを寝室まで案内してくれる。何か必要なものがあれば、彼女に言ってくれ」
 彼の言葉どおりにミセス・ウェストが現れ、イレーナはぐっすり休むようニコに言われたあと、二階の寝室へと案内された。贅沢だが、これ見よがしだったり凝りすぎたりするところのない部屋だった。
 ミセス・ウェストがナイトガウンを差し出した。「わたしのだから、サイズは合わないでしょうが、用は足りると思うの」
 疲れきって回転の遅くなった頭から、イレーナは言葉を絞り出すように言った。「本当にいろいろとありがとう」ニコ・ラドクリフがわたしの家まで送ってくれさえすれば、こんな面倒をかけずにすんだのに。
 ミセス・ウェストが言った。「あいにくこの部屋についている浴室はまだ使えないの。廊下に出て左のふたつ目のドアがバスルームよ。歯磨きとタオルを用意しておきましたからね」
 イレーナは礼を言って廊下に出た。眠たくて、顔を洗って歯を磨くだけでも大変な努力を要した。
 寝室に戻ると、ミセス・ウェストが部屋を出しなに言った。「廊下の明かりはつけておくわね、あとでバスルームを使いたくなったときに、まごまごしないように」
 数サイズは大きいナイトガウンに着替えるなり、イレーナはとても大きなベッドに倒れこんだ。ありがたいことに、眠りはすぐに訪れた。
 ところが、訪れたのは眠りだけではなかった。事故後、彼女を苦しめ続けた悪夢もよみがえった。イレーナは恐怖を追体験した。家畜運搬用の大きなトラックが突っこんでくるのが見え、衝突の瞬間に母の悲鳴が途絶え、すべてをのみこむような闇が訪れた。
 目が覚めると、心臓が胸から飛び出すのではないかと思えるほど激しく打っていた。イレーナはサイドテーブルの明かりをつけてから何度か深呼吸をしたあと、バスルームに向かった。
「左側」大きすぎるナイトガウンを体にしっかり巻きつけるようにしてつぶやく。「ふたつ目のドア」
 廊下の照明は薄暗いが、バスルームのドアはすぐにわかった。忍び足でそこまで行き、そのあと自分の部屋まで廊下を半分ほど戻ったとき、後ろで物音がした。心臓が跳ね、歩調を速めながらミセス・ウェストであることを願った。
「イレーナ」
 低く険しい声。やはりニコ・ラドクリフだった。イレーナは大きく開いたナイトドレスの襟元をかき合わせながら、くるっと振り向いた。薄暗がりのなかにそびえるように彼が立っている。しかも、目と鼻の先に。
 最初、彼は何も身につけていないように見え、イレーナは驚きに目を見開いて後ずさりした。日に焼けた肩と筋肉質の胸があらわになっている。けれどパジャマの下ははいていることに気づき、ショックがいくらかおさまった。
「何かしら?」イレーナはやっとの思いで尋ねた。
 ニコは二歩進み出たが、イレーナが後ずさるのを見て足を止め、眉をひそめた。「ちゃんと目は覚めているか?」
「ええ、もちろん」彼女はかすれた声で答えた。「バスルームを使いたかっただけ」
「震えているじゃないか。どうかぼくを怖がらないでくれ」
 彼の口調の何かがイレーナの体をこわばらせた。「もちろん怖がってなんていないわ」自分の声がやたらか細く、震えていると言ってもいい。イレーナは途方に暮れた。「わたしなら大丈夫。わたしは……」そこで口を閉ざし、かぶりを振る。「ごめんなさい」ささやくように言う。
 ニコは少し待ってから前よりも穏やかな声で言った。「歩けるか?」
「ええ」
 ところが、足を踏み出した瞬間、よろめいた。恥ずかしい思いでいっぱいになりながら、壁にもたれて目を閉じる。急にぐるぐるとまわって見えだした壁と、この屋敷の主を視界から締め出すために。
「部屋まで抱いていこう」
 荒々しい声が聞こえたかと思うと、抗議するより先に彼の温かくたくましい体と、かすかながらも刺激的な男らしい香りに、イレーナは包まれた。不思議な安心感と欲望を同時に感じ、思わず彼の肩に頭をあずけたくなる。
「わたし、重すぎるわ」抱き上げられながら、イレーナはやっとの思いで抗議の声をあげた。
「大丈夫、きみはじっとしているだけでいい。ぼくがベッドまで運ぶ」
 さまざまな思いと感情で混乱しつつ、イレーナは従うほかなかった。
 ベッドに下ろされ、ニコが体を起こすと、急な寒さと寂しさを感じ、イレーナは身震いした。明かりに照らされたニコの彫りの深い顔を見上げた瞬間、彼女は思いがけない体のうずきを感じた。それは我慢できない渇望にも似ていた。
 彼の視線で、ナイトガウンの襟元が広がり、胸のふくらみがのぞきすぎているのに気づく。イレーナは真っ赤になって前をかき合わせると、ニコがすぐさま上掛けをかけてくれた。
「何か飲むものを持ってこよう」
「ウィスキーじゃないものを」彼女は弱々しくほほ笑んだ。
 彼もほほ笑んだので、イレーナの体中の細胞が熱を帯びた。
「ああ、ウィスキーじゃないものを」
 ニコがしなやかな歩き方で部屋を出ていくのを見送りながら、イレーナは震える息を吸い、上半身を起こして枕にもたれた。胸を隠すために上掛けを引き上げる。
 わたしったら、なんて間抜けなの。ヴィクトリア朝の年若い娘みたいに、寝間着姿の男性に会ったとたん気絶しそうになるなんて。


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