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愛の残照【ハーレクインSP文庫版】

愛の残照【ハーレクインSP文庫版】


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクインSP文庫
価格:400pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 エマ・ダーシー(Emma Darcy)
 フランス語と英語の教師を経て、結婚後、コンピューター・プログラマーに転職。ものを作り出すことへの欲求は、油絵や陶芸、建築デザイン、自宅のインテリアを整えることに向けられた。人と接するのが好きで、人と人とのつながりに興味を持っていた彼女は、やがてロマンス小説の世界に楽しみを見いだし、登場人物それぞれに独自の性格を与えることに意欲を燃やすようになった。旅を楽しみ、その経験は作品の中に生かされている。現在はオーストラリアのニューサウスウェールズにあるカントリーハウスに住む。

解説

長く病を患ったせいで、養育資格を問われたキャリーは、最愛の一人息子を福祉事務所に取られてしまう。途方に暮れるキャリーの脳裏に浮かんだのは、ドミニク・サベジ。8年前、当時19歳だったキャリーが心から愛した人だ。とはいえ、ドミニクにとっては二人の関係は遊びでしかなく、泣きながら彼のもとを去って以来、一度も会っていない。富と権力を持つあの人なら、この窮地を救ってくれるかも……。藁にもすがる思いで、キャリーはドミニクのもとへ向かった。彼が息子の父親であるという秘密を、胸に抱えて。

*本書は、ハーレクイン文庫から既に配信されている作品のハーレクインSP文庫版となります。 ご購入の際は十分ご注意ください。

抄録

 帰国したばかりで、まだ頼れる友人も知り合いもいなかった。両親はとうに亡くなっていたし、どの親戚も母の再婚以来疎遠になっていて、どこに住んでいるかも知らなかった。というわけで、福祉事務所に連絡がいったのだった。
 初めはキャリーも感謝した。問題はそのあとだった。病院での治療はもう必要がないということになってキャリーが退院したとき、福祉事務所はダニーを返すことを拒んだ。まだ子どもの世話をするほど回復していないというのだ。キャリーにはとうてい受け入れがたいことだった。実の母親から子どもを引き離しておく権利はだれにもないはずだ。
「その人たちの言うことももっともだとは思わないかい?」
「もうよくなってますから、大丈夫です。こうやってあなたのところへも来られたでしょう?」
「やっとね」
「でも来られました」
「ああ」重い口ぶりだった。「そうだね」
「ダニーの世話ならこれに比べたらたいしたことありませんわ。よく言うことを聞くし、世界中で一番いい子です。あの子を取り戻したいんです。今ごろきっと心配してますわ。捨てられたと思ってるかもしれません。知らない人の世話では、わたしのようにはいかないでしょうし、フィジーと違ってなじみのないことばかりだし……」
「フィジー?」
「そこにいたんです。あの子が慣れてるのはフィジーだから、環境の違うこちらの施設では心理的によくないに決まってます。あの子にはわたしが必要なんです。子どもを母親から離すのはよくないでしょう。どうしてもあの子を取り戻さなければならないんです、ドミニク」キャリーはまっすぐにドミニクの顔を見た。その目は何よりも雄弁に彼女の必死な思いを訴えていた。「お願いしたいのは、一、二本電話をしていただきたいということなんです。しかるべき人に。細かい規則ばかりの形式主義は抜きにしてもらいたいんです。ダニーをわたしの元に返してもらいたいんです」キャリーは訴えるようなまなざしでドミニクを見た。「やってくださるでしょう、ドミニク?」
 ドミニクはゆっくりうなずいた。「わかった。やってみよう」
 勝利の喜びが押し寄せた。勝ち目のないかけだと思ったが、勝ったのだ! うれしくてめまいがする。キャリーはドミニクの肩にもたれた。ほんの少しだけよ。こうすることがどれだけの意味を持つか、ドミニクにはわからないでしょう。わたしはまもなく帰っていく。ドミニクの世界から出ていくのよ。でもダニーが帰ってくるわ。それで十分よ。キャリーは新たな力が湧いてくるのを感じた。こうなったら、きっと早くよくなってみせる。
「ありがとうございました」心からほっとして、キャリーは小声で言った。あやうく“これで昔のことは許してあげます”とつけ加えるところだったが、言わなくてよかった。ドミニク・サベジに与えられた精神的な苦痛は決して口にしてはいけない。遠い昔のことなのだから。「ご恩は決して忘れません」代わりにキャリーはそう言った。本当にそのつもりだった。
「まずきみを送っていくよ、キャリー」
 たちまちキャリーの顔に恐怖が浮かんだ。いいえ、そんなのだめよ! ドミニクがまたわたしの生活に入ってくるなんて! それこそ破滅への道だわ。昔より、もっとひどいことになるかもしれない。古い傷口を開き、さらに傷を広げることになる。今住んでいるところを見られるだけでも耐えられない。なんとしてでも、そんなことはやめてもらわないと。
「けっこうです!」キャリーは叫んだ。しかし、ドミニクが今度は一歩も引くつもりがないのは、その表情からも明らかだった。だからといってキャリーも方針を変えるつもりはない。「お願いしたのは電話をちょっとかけていただくことだけです。それ以上のことはけっこうです」
「うまく子どもを取り戻すためにも、あらゆる事実を知っておく必要があるんだ、キャリー」ドミニクは断固として言い張った。
 そして、キャリーがその言葉にどう反駁しようかと必死で考えている間に、ドミニクはすくい上げるようにキャリーを床から抱き上げ、しっかりと胸に抱いてしまった。
「だめよ! だめ!」キャリーは抵抗した。「下ろしてください」そこで、やっと一つ作戦が浮かんだ。「今日わたしを家に送るなんてできないはずです」
 ドミニクが不審そうな目をした。「どうして?」
「午後はずっと約束でいっぱいのはずでしょう」
 これで相手はあきらめる、とキャリーはひそかに快哉を叫んだ。
「どうにかするさ」むっつりと言うと、ドミニクはキャリーをしっかり抱いたままドアに向かった。もがくことさえできないほど、その力は強かった。
「こんなふうにわたしを抱えたままじゃ歩けないでしょう、無理よ」キャリーは必死になっていた。
「平気だ」
「わたし、重いんですから」キャリーは哀願した。
 ドミニクは半分あきれた顔をした。「きみは一握りの真綿より軽いよ。それこそがまさに問題なんだ。きみがどう思おうと、なんとかしなくちゃならない! 子どもを取り戻したいんだろう?」
「ええ」
「それじゃ、できることはなんでもやってみなくては」
「でも……」
「でもはたくさんだ! なんでもやってみる! いいな!」
 頭がぐらぐらする。キャリーはこんなことになるとは思っていなかった。ここまで深入りさせるつもりはなかったのに。困ったことになりそうだ。これ以上ドミニクに深入りされないようにしなくてはいけない。でもどうやって彼を止めればいいの?


*この続きは製品版でお楽しみください。

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