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和書>小説・ノンフィクション>恋愛小説>ティーンズラブ小説

解説
俺が欲しいのは、君だよ
復讐のために破断を申し入れたのに――どうして溺愛されてるの!?
かつて自分を傷つけた婚約者のフェリクスを“完璧な淑女”となって見返すために、隣国で努力を続けてきたリヴィア。再会したフェリクスに破談を申し入れるが、「君を誰にも渡したくない」と甘く口づけられ、淫らな愛撫で蕩かされる。“家のため”と言いながら婚約を続行するフェリクスは、リヴィアの幼い頃の望みを、いくつも叶えてくれて……。
※こちらの作品にはイラストが収録されています。
尚、イラストは紙書籍と電子版で異なる場合がございます。ご了承ください。
復讐のために破断を申し入れたのに――どうして溺愛されてるの!?
かつて自分を傷つけた婚約者のフェリクスを“完璧な淑女”となって見返すために、隣国で努力を続けてきたリヴィア。再会したフェリクスに破談を申し入れるが、「君を誰にも渡したくない」と甘く口づけられ、淫らな愛撫で蕩かされる。“家のため”と言いながら婚約を続行するフェリクスは、リヴィアの幼い頃の望みを、いくつも叶えてくれて……。
※こちらの作品にはイラストが収録されています。
尚、イラストは紙書籍と電子版で異なる場合がございます。ご了承ください。
抄録
「リヴィア?」
扉に背中を預け、呼吸を整えようとしていたら、階段を上がって迎えにきたのはフェリクスだった。
黒の盛装に身を包んだ彼は、今日も華やかだ。その手には、白い薔薇の花束があった。
「フェリクス様……あなた、どうして、ここに?」
「だって、俺がエスコートの役を引き受けただろ?」
「そう……ええ、そう、でしたね……」
そうだった。帰国して最初に顔を合わせた時、そう決めたのだった。
この屋敷のことを彼はよく知っている。下りてこないリヴィアを心配して迎えに来てくれたというところか。
「……不安そうな顔をしている」
リヴィアの頬に手を添えて、フェリクスは小さく笑った。
──近いわ。
ぽっと頬に血が上るのを自覚した。彼が身を寄せてきて、ふわりと甘い香りが立ち上る。きっと、彼の手にしている花束の香りだろう。
「──君の好きな花。大人になったら、君に花をあげると言ったよね」
「ありがとうございます……嬉しい」
口から零れたのは、素直な礼の言葉。
あんな子供の時の話を覚えていてくれるなんて思っていなかった。
手渡された花束を鼻に寄せ、香りを楽しむ。今日、彼が持ってきてくれたのは、特に香りの高い品種の白薔薇だった。
フェリクスの思いやりが嬉しくて、リヴィアの小さな夢を覚えていてくれたことが嬉しくて。胸の奥から何かがせり上がってくるような気がする。
「リヴィアには、白い花が似合うね。次は、百合にしようか」
白い薔薇を一本抜き、彼はリヴィアの髪に差し込んだ。
──どうして、こんな。
フェリクスがこんなにも優しくしてくれるなんて、おかしい、ありえない。
胸がどきどきして、彼の顔を見ることができなかった。心臓は早鐘を打ち続け、まるで自分が物語の主人公にでもなったような気がしてくる。
「フェリクス様……あの」
顔を上げ、フェリクスに礼を言おうとしてリヴィアは固まった。
フェリクスの緑色の瞳に映る自分の顔。
なんて表情をしているのだろう。自分でも自分が信じられなかった。
こんな表情──どうひいき目に見ても、恋をしている夢見る乙女。
目は潤み、頬は紅潮し、まるで口づけてほしいと言わんばかりに唇は薄く開いている。
「どうかした? 皆、君を待っているよ。そろそろ行かないと」
「そ、そうね……ええ、早く行かないといけませんね。でも、少しだけ待ってくださる? せっかくのお花、水に挿しておかないと……枯れてしまっては、大変だから」
身をひるがえし、部屋の中に飛び込んだ。これ以上、今の自分の表情を彼に見られたくなかった。
──落ち着きなさい。落ち着くの。
やかましい音を立て続ける心臓に手をあてて、リヴィアは繰り返した。こんなところで、醜態をさらすわけにはいかないのだ。
彼が挿してくれたばかりの花を、髪から抜き取る。それから、そっとその花を唇に押し当てた。
フェリクスとの縁談はなかったことにしようとしていたはずなのに、花を贈られたくらいでこんなにも気持ちが浮き立ってしまう。
フェリクスのくれた花に口づけた時、たしかに何かが流れ込んでくるような気がした。
部屋に置かれているグラスに、手にした一輪だけ別に挿す。鏡台の前にそのグラスを置き、新たな花を選んで髪に飾り、残りは浴室で水につける。
「お待たせしてしまって、ごめんなさい──メイドに花瓶を運んでもらわなくてはね」
待たせていた彼のところに戻ると、あくまでも優雅に美しく微笑んだ。
元の素材がそれほどでもないのだから、せめて仕草だけは美しくしておかなければ。だが、それもあっさりと覆される。
「俺が挿した花はどうした?」
「え? その、つまり……」
なんて目ざといんだろう。彼が持ってきてくれた花束は、全部同じ品種の白い薔薇。取り替えたところで普通なら気づくはずもないのに。
「それはっ……き、記念よ、記念! 髪に挿していたら傷んでしまうでしょう。あとで押し花にするのにそれでは困るわ!」
「そう? それならいいんだ」
目の前にいるフェリクスがにっこりとして、リヴィアは失言したことに気がついた。口を開きかけてはまた閉じ、今、浮かべるのに最適の表情を見つけ出すために忙しく頭を巡らせる。いつもなら簡単にできることが、フェリクスの前だとうまくいかなくなる。
「リヴィア。俺、今日の君はとても綺麗だと言ったっけ?」
「いいえ……でも、あなたが綺麗だと言ってくださるのなら、そんなに悪くはないのかもしれませんね」
ようやく、上品な笑みを浮かべることに成功した。大丈夫。余裕を持っているように見せていればいい。
フェリクスの前に出ると、おどおどしていたあの頃に戻ったみたいに感じられて落ち着かなくなる。
少しだけ外見を取り繕うことは覚えたけれど、本当のところは何一つあの頃と変わっていないということなのだろう。
フェリクスの腕を借りてゆっくりと階段を下りていく。
一歩一歩、歩みを進める度に揺れるスカートの裾。借りている腕から流れてくる彼の体温。隣にいる彼を痛いほどに意識して、胸がざわめく。
*この続きは製品版でお楽しみください。
扉に背中を預け、呼吸を整えようとしていたら、階段を上がって迎えにきたのはフェリクスだった。
黒の盛装に身を包んだ彼は、今日も華やかだ。その手には、白い薔薇の花束があった。
「フェリクス様……あなた、どうして、ここに?」
「だって、俺がエスコートの役を引き受けただろ?」
「そう……ええ、そう、でしたね……」
そうだった。帰国して最初に顔を合わせた時、そう決めたのだった。
この屋敷のことを彼はよく知っている。下りてこないリヴィアを心配して迎えに来てくれたというところか。
「……不安そうな顔をしている」
リヴィアの頬に手を添えて、フェリクスは小さく笑った。
──近いわ。
ぽっと頬に血が上るのを自覚した。彼が身を寄せてきて、ふわりと甘い香りが立ち上る。きっと、彼の手にしている花束の香りだろう。
「──君の好きな花。大人になったら、君に花をあげると言ったよね」
「ありがとうございます……嬉しい」
口から零れたのは、素直な礼の言葉。
あんな子供の時の話を覚えていてくれるなんて思っていなかった。
手渡された花束を鼻に寄せ、香りを楽しむ。今日、彼が持ってきてくれたのは、特に香りの高い品種の白薔薇だった。
フェリクスの思いやりが嬉しくて、リヴィアの小さな夢を覚えていてくれたことが嬉しくて。胸の奥から何かがせり上がってくるような気がする。
「リヴィアには、白い花が似合うね。次は、百合にしようか」
白い薔薇を一本抜き、彼はリヴィアの髪に差し込んだ。
──どうして、こんな。
フェリクスがこんなにも優しくしてくれるなんて、おかしい、ありえない。
胸がどきどきして、彼の顔を見ることができなかった。心臓は早鐘を打ち続け、まるで自分が物語の主人公にでもなったような気がしてくる。
「フェリクス様……あの」
顔を上げ、フェリクスに礼を言おうとしてリヴィアは固まった。
フェリクスの緑色の瞳に映る自分の顔。
なんて表情をしているのだろう。自分でも自分が信じられなかった。
こんな表情──どうひいき目に見ても、恋をしている夢見る乙女。
目は潤み、頬は紅潮し、まるで口づけてほしいと言わんばかりに唇は薄く開いている。
「どうかした? 皆、君を待っているよ。そろそろ行かないと」
「そ、そうね……ええ、早く行かないといけませんね。でも、少しだけ待ってくださる? せっかくのお花、水に挿しておかないと……枯れてしまっては、大変だから」
身をひるがえし、部屋の中に飛び込んだ。これ以上、今の自分の表情を彼に見られたくなかった。
──落ち着きなさい。落ち着くの。
やかましい音を立て続ける心臓に手をあてて、リヴィアは繰り返した。こんなところで、醜態をさらすわけにはいかないのだ。
彼が挿してくれたばかりの花を、髪から抜き取る。それから、そっとその花を唇に押し当てた。
フェリクスとの縁談はなかったことにしようとしていたはずなのに、花を贈られたくらいでこんなにも気持ちが浮き立ってしまう。
フェリクスのくれた花に口づけた時、たしかに何かが流れ込んでくるような気がした。
部屋に置かれているグラスに、手にした一輪だけ別に挿す。鏡台の前にそのグラスを置き、新たな花を選んで髪に飾り、残りは浴室で水につける。
「お待たせしてしまって、ごめんなさい──メイドに花瓶を運んでもらわなくてはね」
待たせていた彼のところに戻ると、あくまでも優雅に美しく微笑んだ。
元の素材がそれほどでもないのだから、せめて仕草だけは美しくしておかなければ。だが、それもあっさりと覆される。
「俺が挿した花はどうした?」
「え? その、つまり……」
なんて目ざといんだろう。彼が持ってきてくれた花束は、全部同じ品種の白い薔薇。取り替えたところで普通なら気づくはずもないのに。
「それはっ……き、記念よ、記念! 髪に挿していたら傷んでしまうでしょう。あとで押し花にするのにそれでは困るわ!」
「そう? それならいいんだ」
目の前にいるフェリクスがにっこりとして、リヴィアは失言したことに気がついた。口を開きかけてはまた閉じ、今、浮かべるのに最適の表情を見つけ出すために忙しく頭を巡らせる。いつもなら簡単にできることが、フェリクスの前だとうまくいかなくなる。
「リヴィア。俺、今日の君はとても綺麗だと言ったっけ?」
「いいえ……でも、あなたが綺麗だと言ってくださるのなら、そんなに悪くはないのかもしれませんね」
ようやく、上品な笑みを浮かべることに成功した。大丈夫。余裕を持っているように見せていればいい。
フェリクスの前に出ると、おどおどしていたあの頃に戻ったみたいに感じられて落ち着かなくなる。
少しだけ外見を取り繕うことは覚えたけれど、本当のところは何一つあの頃と変わっていないということなのだろう。
フェリクスの腕を借りてゆっくりと階段を下りていく。
一歩一歩、歩みを進める度に揺れるスカートの裾。借りている腕から流れてくる彼の体温。隣にいる彼を痛いほどに意識して、胸がざわめく。
*この続きは製品版でお楽しみください。
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