マイリストに追加

和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン・ヒストリカル・スペシャル

雪の伯爵とシンデレラ

雪の伯爵とシンデレラ


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ヒストリカル・スペシャル
価格:700pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
みんなの評価 未評価
◆レビューを書く

¥0サンプル
XMDFのファイルをご覧になるにはブンコビューア最新版(無料)をインストールしてください。

「書籍ファイルが壊れています」と表示される場合は、ブンコビューアを最新版にアップデートしてください。
購入する


解説

結婚なんて私には縁がない……。愛も夢も、あの日に封印したから。

きっちり結った髪に、灰色のさえないドレスの住み込み家庭教師――そんなソフィにも、人生でただひとり、心から愛した人がいた。8年前、愛するピーターの父に、住んでいた屋敷を出ていくよう迫られ、ソフィはやむにやまれず彼と別れて、自活する道を選んだ。彼と別の女性の結婚予告が出されたのを知り、あまりにつらかったから。以来、名前を変え、結婚もあきらめて、ひっそり暮らしてきたが、雇い主から、母のいない娘のためにと名ばかりの結婚を提案された。愛なんて無縁の私が結婚?でも、かわいい教え子のためなら……。一歩踏み出すべきか迷いつつ迎えたクリスマスイブの前夜、吹雪のなか屋敷へと向かってくる人影に気づき、ソフィは声を失った。ピーターことシルボーン伯爵の冷たい瞳が、そこにあったのだ!

■物心ついたときに母は亡く、父とも死に別れたソフィの人生は孤独でした。唯一愛したピーターとの恋からも泣く泣く身を引いた彼女に幸あれと願うばかりですが、彼との再会は穏やかではなく……。エリザベス・ビーコンが描く、出色のシンデレラ・リージェンシー!

抄録

「あなたもあたたかい家のなかにいてください」コーデッジと呼ばれた男が困りきったように言っている。
「ばかなことを言わないで」女性がいらだたしげに命じた。
 女性の声がますますはっきりしてくると、ピーターはぼくは感謝すべきなのだろうと考えた。この女性は、今まで出会ったなかで最も勝ち気な女性と同じくらい気が強いようだ。窓辺でぼくを見つけたのはこの女性に違いない。そして、助けに駆けつけてくれたのだ。
「これにつかまって!」
 女性に言われるままピーターは手をのばした。運よく、投げられた革のベルトの端をつかむことができた。
「さあ、それをたぐって道に戻ってくるのよ」
 雪で動けなくなった間抜けの大群を率いているかのような言い方だ。女性はベルトの端にかかる彼の体重に備えるように体をそらした。
「片手で?」
 ピーターがぶっきらぼうにきくと、はっと息をのむ音がした。まるでその声を聞いて、彼女も思い出したくない誰かを思い出してしまったというように。
「馬を放すのよ。自分でついてくるはずだから。あなたより馬のほうが賢いのは間違いないわ」
 女性が強い口調で言うのを聞いて、ピーターのなかに疑念がわきあがってきた。この女性は、わがままで狡猾で嘘つきであくどいソフィ・ボネット似の女性ではなく、本物のソフィ・ボネットだ。
「ほんとうにきみがぼくを引きあげてくれるのか?」ピーターは大声で言った。力の問題と受けとったとしたら、彼女は自分をごまかすのがうまいということだ。
「今のあなたに選択肢があると思っているの? それとも、そこが気に入っているということかしら?」
 そう問う声はかすれていた。彼女が誰かピーターにわかっているように、彼女も自分が誰を助けているのかわかっているらしい。
「前にも後ろにも道はないという意味かい?」
「あなたは地理が苦手だったわね」彼女が皮肉っぽく言った。
 自分が助けようとしている愚かな相手が誰なのか気づいてショックをあらわにされるより、皮肉を返されるほうがピーターにとっては扱いやすかった。
「だから藁にすがっているのさ」
 そうつぶやいた瞬間、ソフィが手際よく彼を引っ張りあげた。ソフィの細い腕に引っ張られ、ピーターは彼女の上に倒れ込みそうになった。
 手足の感覚を奪う雪のなかから這いでて、ついに、どこかに通じる道にたどり着いた。私道の縁石らしきものにつまずくと、ソフィに釣りあげられた大きな魚になったような気分だった。ピーターは彼女の上に倒れ込まないよう、意志の力だけでなんとか体勢を立て直した。
「ミス・ローズ、無事に助けだせましたか?」
 先ほどの声の主が夕闇のなかから大声を出し、積もった雪をかき分けながら近づいてきた。
 そのあとから、あたたかそうな服を着た部下たちが雪をものともせず追ってくる。吹雪がおさまりつつあるなら、これほどありがたいことはない。ひと休みしてあたたまる前に、しなくてはいけないことがまだ山ほどある。
「ええ。トーマスにこの勇敢な馬を厩へ連れていき、休ませるように言ってちょうだい。それから、ミセス・エルカリーに煉瓦をあたためてホット・ウィスキーをつくってほしいと頼んでくれるかしら。メイドには毛布をとりに行かせてお風呂のお湯を沸かすように言ってね」
「すぐに手配します」
 男性はピーターの腕をとると、自分の肩にまわした。ソフィも反対側から彼を引きあげたが、役に立っているとは言いがたかった。
 彼女は相変わらず小柄だった。ピーターはよみがえってこようとする記憶を押しとどめてなんとか息をつくと、力を振り絞り、混乱したハンニバルに向かって、厩へ連れていってもらうんだと諭した。疲れた馬は申し訳なさそうな、それでいてうれしそうな声をあげると、前方から突然現れた馬丁に引かれていった。あとに残されたピーターは、信じられないというように頭を振った。背丈の釣り合わない救助者ふたりに両側から支えられ、膝まである雪のなかをよろよろと進みながら、どうしてこんな悪夢に迷い込んでしまったのかと考えていた。
「もうじき雪で埋まった溝のなかで目を覚まし、すべては恐ろしい夢だったとわかるはずだ」ふたりのあいだでピーターはつぶやいた。
「わたしも同じ夢を見ていることを心から願っているわ。こんな吹雪の夜に、あなたはいったい何をしているの? 長年ここに住んでいるけど、こんなひどい吹雪は初めてよ」
「身を寄せる場所を探しているのさ」
 ピーターは冷ややかに言いながら、もっといい言葉はないものかと考えをめぐらせた。ぼくは防御をきっちりかためていて、二度と彼女に傷つけられたりしないとわからせてやりたい。
 ソフィの腕が体に巻きつけられて、どれほど心地よく感じているか、彼女に気づかれていないといいのだが。雪を踏みしめて進むあいだに感覚が麻痺しかけていたのに、ソフィと接している部分すべてから火があがり、八年分の冷気を焼き尽くすかのようだ。彼女の体が動き、ピーターの体重をいくらかでも受けとめようとする。雪のとばり越しに見たとき、ピーターが倒れ込む寸前だったのが、彼が凍死寸前だったことがわかっているかのようだ。凍える体が、かつて激しく愛した女性に反応するのを感じ、ピーターは自分をののしった。
「わたしだってそうよ」


*この続きは製品版でお楽しみください。

本の情報

形式

【XMDF形式】

XMDFデータをご覧いただくためには専用のブラウザソフト・ブンコビューア最新版(無料)が必要になります。ブンコビューアは【ここ】から無料でダウンロードできます。
詳しくはXMDF形式の詳細説明をご覧下さい。

対応端末欄に「ソニー“Reader”」と表示されている作品については、eBook Transfer for Readerで“Reader”にファイルを転送する事で閲覧できます。
海外版の“Reader”は対応しておりませんので予めご了承くださいませ。

【MEDUSA形式】
MEDUSA形式の作品はブラウザですぐに開いて読むことができます。パソコン、スマートフォン、タブレット端末などで読むことができます。作品はクラウド上に保存されているためファイル管理の手間は必要ありません。閲覧開始時はネットに接続している必要があります。

詳細はMEDUSA形式の詳細説明をご覧下さい。