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美貌のシャペロン【ハーレクイン・ヒストリカル・スペシャル版】

美貌のシャペロン【ハーレクイン・ヒストリカル・スペシャル版】


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ヒストリカル・スペシャル
価格:700pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ニコラ・コーニック(Nicola Cornick)
 イギリスのヨークシャー生まれ。詩人の祖父の影響を受け、幼いころ歴史小説を読みふけり、入学したロンドン大学でも歴史を専攻した。卒業後、いくつかの大学で管理者として働いたあと、本格的に執筆活動を始める。現在は、夫と二匹の猫と暮らしている。

解説

あか抜けない姿の彼女に美を透かし見た、不埒な伯爵――

付き添い人をして生計を立てているアニスは、年頃の令嬢のいる貴族から縁結びの依頼をたびたび受けている。そんな彼女には、ある悩みがあった──美しすぎるのだ。令嬢に引き合わせた相手男性から関心を向けられないよう、アニスは古ぼけた服をまとい、豊かな金髪を帽子に押し込んで、決して目立たぬよう、つねに地味に振る舞っていた。ところが、偶然知り合った悪名高き放蕩伯爵アダムが、彼女の慎重に隠された美貌に目ざとく気づき、誘惑を開始した。その場面を社交界のうるさがたに見咎められてしまい、もはや失業同然のアニスに、伯爵はやむなく求婚するが……。

■軽妙洒脱な作風が魅力のニコラ・コーニックの名作をリバイバル!野暮ったい婦人に身をやつし、日陰暮らしをするアニス。なのに、百戦錬磨のアダムがそんな彼女に恋の照準を定め……。ゆえあって、幸せな結婚なんて自分には望めないとあきらめるアニスの運命は!?

*本書は、ハーレクイン・ヒストリカルから既に配信されている作品のハーレクイン・ヒストリカル・スペシャル版となります。 ご購入の際は十分ご注意ください。

抄録

 アニスが振り返ると、彼の顔がすぐ近くにあった。眉間に皺を寄せ、厳しいまなざしをしている。灰色の瞳は黒く濃いまつげに縁取られている。片方の頬に笑うと深まる皺があった。肌は日に焼けて艶やかで、顎にはひげの剃り跡がある。こんなに彼の間近にいるのは、なんだか妙な感じだった。妙だけれどとても心地よい。体はほかほかと、頭は少しぼうっとしていた。アニスの体からわずかに力が抜け、アダムが彼女を抱く腕に力を込めたとき、彼の瞳に突然、驚くほど熱い欲望の影がよぎった。
「ここで何をしていた?」アダムはそっと繰り返した。
 アニスは慌ててさっと体を起こした。「料金を払っていたんです」彼女はつっけんどんに言った。「当然でしょう」
 アダムの視線が紅潮した彼女の顔から馬車へ向けられ、また彼女に戻った。「ここまでひとりで?」
 アニスはどぎまぎして、後ろめたい気持ちになり、それがまた腹立たしかった。「いえ、ひとりじゃありません。御者と馬丁が一緒だわ」
「ラフォイの御者と馬丁だろう」
 アニスはふっとため息をついた。「ごらんのとおりよ。さあ、もう降ろしてくださらないかしら。騒ぎを収めてくださったのには感謝しますけれど、早くスターベックへ向かいたいので」
 アダムは首を振った。「ほどなくね。よければ先にきみと話がしたい」
 アニスは目を丸くした。「ここで?」
「いけないかな?」アダムはいたずらっぽくほほえんだ。「わたしはけっこう気に入ってるんだがね……目下の状況が」
 アニスはこんな体勢で言い争うわけにもいかなかった。
 アダムは馬車のそばに馬を寄せ、怯えて震えている御者のほうへ身を乗り出した。「最初の十字路で待っててくれ。その先はアインハロウだからなんの問題もない。すぐにレディ・ウィッチャリーを連れていくから」彼は馬を引くと、荷馬車のあとを追って進み出した馬車に挨拶代わりに鞭を差し上げた。それから料金徴収人に硬貨を投げて渡すと、ひらりと馬から降りてアニスに両腕を差し出した。
 彼の助けを借りるしかないアニスは、うろたえるのと同時にいら立った。地面までは距離があり、飛び降りて足をくじいても困る。彼女はしかたなく両手を軽くアダムの肩に置き、滑り降りようとしたが、彼はしっかりと彼女を抱き寄せて支えた。一瞬、ふたりの頬が触れ合って、彼の黒髪が軽くアニスの肌を撫でた。彼は一歩下がってそっとアニスを放した。
「あなたの好き勝手ね」今や完全に腹を立てたアニスはぴしゃりと言った。「わたしを馬に抱え上げるのも、馬から降ろすのも!」
 アダムは眉をつり上げ、手綱を腕にかけた。「気に障ったのなら謝るよ」
 アニスはきまり悪そうに、半分彼に背中を向けてスカートを直した。彼は大いにアニスの気持ちをかき乱したが、それを認めるのはいやだった。気を取り直し、彼女はアダムと並んで日の照りつける道を歩き出した。馬車の車輪の音は遠くへ消えて、工夫たちは仕事に戻り、今は木々を渡る鳥のさえずりと、野原からかすかな羊の鳴き声が聞こえてくるだけだ。
「ずいぶん怖かっただろうね」アダムは心配そうにアニスを見た。「彼らもきみを傷つけるつもりはなかったと思う。きみはただ、運悪く争いの現場に巻き込まれてしまったんだ」
「わかっています」アニスはまた頬に触れてみた。血は止まっていたが少し痛い。「さっきは失礼な言い方をしてごめんなさい。あなたのすばやい行動に感謝すべきなのに。親切に助けてくださって」
 アダムの微笑に、アニスの胸は思わずときめいた。「女性をあんなふうに抱え上げたのは初めてだ」
 ふたりのあいだの空気は日中の熱気と……別の何かで、じりじり焦げるようだった。
「それは信じられないわ」アニスは現実的でいようと努めた。「それに|付き添い人《シヤペロン》のわたしが、あんなふうに抱き上げられるのは困ります」
 アダムは片方の眉をつり上げた。「どうして? シャペロンは決して冒険をしてはいけないと?」
「もちろん。職業柄不適切です」
 アダムは一歩アニスに近づいた。「わたしが思うに、シャペロンとして理想的なのは、付き添う娘の身に起こるかもしれないことすべてを体験して、それぞれの状況においてどうすべきか忠告できるようになっておくことじゃないかな」
 アニスは思わず吹き出し咳き込んだ。「とんでもない考えだわ」
 アダムは肩をすくめた。「気が変わったら教えてほしいね」アニスは日差しにほてってちくちくする頬に手を当て、また歩き出した。アダムはそんな彼女を見て、その腕を取った。「日陰へ来てくれ」彼はいきなり言った。「きみの頬の傷が見たいから」
 アニスはまた胸がざわめくのを感じ、腕を引こうとした。「たいしたけがでは――」
「それでも、確かめておきたい」
 アダムはアニスを大きく枝を広げた樫の木陰に連れていくと、手綱を放した。馬はおとなしく土手の草を食べている。彼はアニスのほうに向き直り、片手で顎を持って彼女の顔を日差しのほうへ向けた。彼のまなざしは真剣で、手つきはやさしいが事務的だった。しかしアニスはまるで焼き印を押されたように感じ、思わず飛びのきそうになるのを抑えた。ずいぶん長いあいだ、誰も彼女に触れていなかった。それに、こんなにやさしく彼女に触れた者は今までひとりもいなかった。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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