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和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン・ロマンス

億万長者の不器用な愛人

億万長者の不器用な愛人


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ロマンス
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ダニー・コリンズ(Dani Collins)
 カナダ出身の作家。高校生のころにロマンス小説と出会い、小説家という職業はなんてすばらしいのだろうと思ったという。以来、家族の反対や“普通の”仕事に追われながらも、さまざまなジャンルの執筆に挑戦し、ついに念願叶ってハーレクインからデビューすることになった。まるでロマンス小説さながらの、ハッピーエンドを生きている気分だと語る。

解説

彼の甘いキスも熱い愛撫も、すべては私への報復。

ようやく内定をもらえたホテルから採用を取り消され、納得のいかないカメオは担当者を訪ねた。するとそこで思いもよらぬ人物に遭遇する。ダンテ・ガッロ──10年前、カメオの父を泥棒だと糾弾し、イタリアから追放した張本人がホテルの社長だったなんて!逃げるように立ち去った彼女は、途中、体調を崩した老婦人を助けるが、偶然にもそれはダンテの祖母だった。後日、彼から礼を兼ねた食事に誘われ、出向いたカメオは後悔するも遅かった。誘惑に抗えず、強引に唇を奪われて……。

■気鋭の作家ダニー・コリンズ渾身のドラマティックなロマンスをお楽しみください。自身が愛人同然に扱われていると気づかないほど、ヒーローを愛してしまった無垢なヒロインの運命は……?

抄録

 クッキーを焼くのは、自己憐憫の一夜を過ごし、段ボール箱運びの朝を迎えたカミにはもってこいの癒やしだった。使いきりたい材料がまだ残っていて、礼を言いたい隣人もひとりいた。
 ノックの音がした。廊下の先からシャルマが来たのだろう。カミは打ち解けた笑みを浮かべてドアを開けた。「こんにち――」
 シャルマではなかった。‘彼’だ。
 復讐の天使のように、ダンテ・ガッロが戸口に立っていた。雨に打たれたブルーのシャツが広い肩に張りついている。控えめな格好ながらも、その姿からは富と権力が感じられた。ベルトのバックルはおそらく純金だろう。ズボンはオーダーメイドできちんと折り目がつけられ、ぴかぴかの靴は|子羊の革《ラムスキン》であつらえたイタリア製に違いない。
 ああ、いま感じたいのは憎しみと軽蔑、それだけだ。鼻先でドアをぴしゃりと閉めてやりたい。けれどもふつふつと怒りがこみあげると同時に、ダンテが放つ磁力に吸い寄せられて、思いどおりの行動に移れない。胸の先端が張りつめ、隠しきれないほてりが腹部を走り、腿の内側を駆けめぐる。
 どうしてダンテの前だと、彼が男で自分が女だという事実がこんなにもあからさまになるのだろう? わたしの中のすべてが、これはあたりまえのことなのだと声をあげている。
 わたしは飢えているのだと。
 そんな自分がわずらわしかった。ダンテに見おろされただけで、わずかに身につけている服をはぎ取られたような気がして、早くも苦痛を覚えている。オーブンのせいで小さなアパートメントは赤道直下並みに暑かったので、彼女は体にぴったりしたタンクトップとヨガ用のショートパンツに着替えていた。彼のなめるような視線に腹部がさらに締めつけられる。
 愚かにもカミは、ダンテの体にも欲望の兆しが現れていないかどうか探してみたが、彼が感じているのは軽蔑だけらしい。その視線は癪に障るほど胸苦しいもので、自分が薄っぺらで未熟な人間に思えた。無防備で、ひどく不利な状況だ。
 そして拒絶されている。カミは喉の奥からみぞおちまで嘲りの炎に焼かれている気がした。
 ドアを閉めるべきだったが、タイマーが鳴りだして、カミはぎょっとした。体が熱くなるのを感じながらあわててオーブンへ走り、最後に焼いたクッキーを引っ張りだして、ガスコンロの上に乱暴に天板を置いた。
 オーブン用のミトンをはずし、額に手のひらの付け根を滑らせる。だいたいダンテは何をしに来たの? きのうのやり取りはさんざんだった。わたしのプライベートに侵入して、批判的な目で見下してほしくない。
 オーブンのスイッチを切り、カミは振り返った。招き入れられたかのように、ダンテがドアを閉めるのが見えた。小さなU字形のキッチンからもう出られない。
 胸の鼓動がさらに激しくなったが、恐ろしいわけではない。でも、恐ろしくないということ自体にぞっとする。自分の一部がダンテにまた会えてわくわくしているなんてどういうことだろう? 彼は残酷で無情な男だ。父の死を知り、“それはよかった”だなんて。大嫌いだ。本当に大嫌い。
 建物にどうやって入ってきたのかはきかなかった。この週末に引っ越しをする人はほかにもいる。段ボール箱をシャルマの車に積みこんで小さな貸倉庫まで運ぶあいだ、建物の玄関のドアはずっと開けっ放しだった。
 だけど、やはり奇襲をかけられた気分だ。「あなたを招き入れた覚えはないけど」
 ほとんど空になったアパートメントを見渡していたダンテが視線をカミに向けた。その目は落ちくぼんで、うっすらくまができている。けれども、‘わたし’のことを考えて眠れなかったわけではないだろう。
 カミの下腹部がじりじりと熱を帯びた。彼女のほうは昨夜、すさまじい怒りとロマンティックな空想のあいだでのたうちまわっていたのだ。ダンテはひどく魅力的で、彼女の反応は理屈抜きだった。闇の底に身を横たえながら考えずにいられなかった。ふたりが憎みあっていなかったら、その先は?
 絡まったシーツ、汗ばんだ肌、熱い手、溶けあう唇と体。それはどんな感じだろう?
 だめだ、彼となんか。
 カミは腕組みしながら、タンクトップの下を意識せずにいられなかった。つけているのは胸を下から支えるだけの細いシェルフブラジャーだ。寝室に服があったら、飛びこんで何かはおっただろう。こんな露出度の高い格好で人前に出るには、この胸はちょっと発達しすぎている。とりわけ、その頂がとがっているときは。
 自分はこんなにも肌もあらわな姿で、ダンテがこんなにも近くにいて、アパートメントはこんなにも狭い。もっと広く感じていいはずなのに。部屋に残っているのは、引っ越してきたときからすでにあったソファベッドと楕円形のコーヒーテーブル、床置きのランプとぼろぼろのコンピューターデスク。あとは自分のバックパックと、弟のところへ持っていく寝袋だけだ。それなのに部屋は息苦しく、緊張ではちきれそうだった。
「なんの用?」


*この続きは製品版でお楽しみください。

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