マイリストに追加

和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン・ロマンス

五億ユーロの花嫁

五億ユーロの花嫁


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ロマンス
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
みんなの評価 未評価
◆レビューを書く

¥0サンプル
XMDFのファイルをご覧になるにはブンコビューア最新版(無料)をインストールしてください。

「書籍ファイルが壊れています」と表示される場合は、ブンコビューアを最新版にアップデートしてください。
購入する


著者プロフィール

 レイチェル・トーマス(Rachael Thomas)
 10代の頃、彼女の人生の大半を占めていたのはハーレクインの小説だった。その後、自身でも小説を書いてみるが挫折。2008年から本格的に執筆を始め、2013年にはハーレクイン主催の新人作家コンテストのファイナリストに選ばれた。現在はウェールズ在住。執筆と農作業の合間には、写真を撮ったり、城や歴史的な建造物を訪ね歩いたりして過ごすという。

解説

借金のかたに売られたも同然なのに、なぜ彼を愛さずにいられないの?

リディアは亡父の莫大な債務を肩代わりするはめになり、債権者である銀行のCEO、ラウルとの話し合いに臨んだ。「僕と結婚すれば、きみの父親の借金は清算される」この人は何を言っているの?リディアは唖然としたが、どうやら生前、父は実の娘を担保として差しだしていたらしい。だが、リディアはかつてラウルから手酷い侮辱を受けており、彼ほど傲慢な億万長者と結婚するなどまっぴらだった。すると、まずは同居をしてもらう必要があるとラウルが続け、悩ましい視線が絡みついた。ああ、やはり彼は危険すぎる……。

■若手ながら確かな筆致で読ませると評判のレイチェル・トーマス。今作では、父親の遺した多額の負債を抱え、ヒーローから強引に便宜結婚を迫られるヒロインの揺れ動く心を繊細に描いています。

抄録

「どこかへお出かけかな?」
 セクシーな訛にはっとして振り向くと、この悲惨な状況をもたらした張本人とはとうてい思えない、とてつもなくハンサムな男性の顔があった。昔とは変わっていたが、リディアをじっと見つめる漆黒のまなざしは間違いなく、ラウル・ペレス・ヴァルデス――彼女の父が莫大な債務を負っているスペインの投資銀行の|最高経営責任者《CEO》のものだ。
 高い頬骨、筋の通った高い鼻、奥深い目。彫りの深い顔を見て、リディアの体が熱くなった。その反応と、大人になりかけの多感な年ごろの記憶がせめぎ合い、胸の高鳴りと体の震えを抑えられなかった。
「約束は十分前よ」冷静沈着の化身とも言うべきこの男性に、リディアの鋭い言葉はなんの効果ももたらさなかった。信じられないと言わんばかりにラウルの太い眉がかすかに上がる。それとも、おもしろがっているの? 彼の眼光がさらに鋭くなったが、リディアは精いっぱい冷たい目でにらみつけた。かの有名な、男としての魅力に屈したりしない。もう私は多感な十六歳の娘ではないのだから。
「遅れたことは謝る」ラウルはリディアが立ち上がったばかりの椅子の背に手を置いた。その顔が、もう一度座ってくれと語っている。
 リディアは落ち着こうと努めながら彼を見上げた。彼女の全身を這う漆黒のまなざしに、どぎまぎしている自分が許せなかった。冷静な態度を保つのが難しくなる。ぴったりと体に沿う黒のスカートと実用的な白いブラウスをはぎ取るかのような視線を浴びながら、あえて立ったままでいた。時間がたつごとにますます感じやすくなっていき、反撃したくなる。彼が露骨に私を見つめ続けるなら、報復するまでだ。
 リディアはなんとか黒い瞳から目をそらし、きれいに髭を剃った顔から真っ白なシャツの襟に包まれたたくましい首へと視線を移した。シャツの白さが褐色の肌を強調している。髪は豊かで黒く、がっしりした幅広い肩はどんな難題にも立ち向かえそうだ。
 ラウルは上質な生地のスーツに包まれた腕をじれったそうに曲げ、椅子の背の上に少し身を乗り出した。冷たいまなざしに隠しきれないいらだちがのぞいている。
 あのたくましい腕に抱かれたらどんな感じがするかしら。そう考えたとたん動悸が激しくなり、リディアは彼に惹かれる気持ちを抑えるのに苦労した。そんなふうにかき立てられる私の女性的な部分は、ずっと昔に心の奥にしまいこんだはずなのに。いまはくだらないロマンティックな気分に浸っているときではない。何年も前、私に対する拒絶の気持ちをはっきりと示したこの男性には特に。
「あなたが言っていたほどこの会合が大事なものなら、遅刻なんてしなかったはずよ、ミスター・ヴァルデス」この男性に対する自分の体の反応と、その腕に抱かれることを想像したときに脳裏をよぎった思いに腹が立ち、リディアの口から、ことさらにつっけんどんでとがった声がほとばしった。
 だが、彼の見事なまでの自制心はびくともしなかった。
「僕たちはいま、どちらも望まない立場に置かれている、ミス・カーター・ウィルソン。しかし、解決策はある。座りたまえ」
 歯を食いしばったラウルの顎がこわばるのを見て、彼の見せかけの忍耐力はなかなか崩しがいがある、とリディアは思った。
「私たちの立場? あなたの父親が私の父に結ばせた契約の、突飛な付帯条項のことを言っているのかしら?」この数週間、懸命に抑えこんできた無力感が再び頭をもたげ、話しているうちにリディアの声はどんどん甲高くなった。
「そのとおり」
 彼の落ち着いた声と優美な訛に心を乱され、ただでさえ手に負えなくなっているリディアの不安感がさらにつのる。「解決なんてできるわけないわ」完全に平常心を失い、しゃべりすぎていることに気づき、彼女は言葉をのみこんだ。ラウルには落ち着いて理性的であるところを見せなければならない。私たちは対等だというところを。
「座ってくれれば、この問題を理性的に話し合える」ラウルが眉を上げ、椅子を指し示す。
 しかたなくリディアは不満のため息とともに腰を下ろした。手に負えないこの状況を支配して主導権を握るには、赤い薔薇とキャンドルでこの場に不釣り合いな親密さを醸し出すテーブルの向かいにラウルが座る前に口を開く必要がある。
「まずは、あなたの父親が私の父にどんな契約を結ばせたのか説明して。二十一世紀にもなって、こんな常軌を逸した契約のために二人の人間が結婚させられるなんて考えられない」悪夢さながらの事態が現実に起ころうとしていることが信じられず、リディアは震える息を吸った。
「だから僕はここに――」
 こんなひどい条件がついた契約にサインした父の愚かさが、そしてそれ以上に、この男性がしごく冷静で事務的なのが腹立たしく、リディアは彼の言葉を遮った。「いいこと、ミスター・ヴァルデス、契約の内容なんかどうでもいいの。私はあなたと結婚なんてしない。絶対に」
 ラウルの黒い眉が上がり、リディアは彼の唇に笑みらしきものを見た気がした。なお悪いことに、それを見た瞬間、いまだかつて経験したことのないものが全身を駆け抜け、脈が跳ね上がった。


*この続きは製品版でお楽しみください。

本の情報

形式

【XMDF形式】

XMDFデータをご覧いただくためには専用のブラウザソフト・ブンコビューア最新版(無料)が必要になります。ブンコビューアは【ここ】から無料でダウンロードできます。
詳しくはXMDF形式の詳細説明をご覧下さい。

対応端末欄に「ソニー“Reader”」と表示されている作品については、eBook Transfer for Readerで“Reader”にファイルを転送する事で閲覧できます。
海外版の“Reader”は対応しておりませんので予めご了承くださいませ。

【MEDUSA形式】
MEDUSA形式の作品はブラウザですぐに開いて読むことができます。パソコン、スマートフォン、タブレット端末などで読むことができます。作品はクラウド上に保存されているためファイル管理の手間は必要ありません。閲覧開始時はネットに接続している必要があります。

詳細はMEDUSA形式の詳細説明をご覧下さい。