マイリストに追加

和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン文庫

愛は繰り返す

愛は繰り返す


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン文庫
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
みんなの評価 未評価
◆レビューを書く

¥0サンプル
XMDFのファイルをご覧になるにはブンコビューア最新版(無料)をインストールしてください。

「書籍ファイルが壊れています」と表示される場合は、ブンコビューアを最新版にアップデートしてください。
購入する


著者プロフィール

 アン・メイザー(Anne Mather)
 イングランド北部の町に生まれる。息子と娘、二人のかわいい孫がいる。自分が読みたいと思うような物語を書く、というのが彼女の信念である。ハーレクイン・ロマンスに登場する前から作家として活躍していたが、このシリーズによって、一躍国際的な名声を得た。

解説

彼女を弄んで捨てたはずのリードが、なぜここに――?まだ16歳だったヘレンは、20も年上の男性と恋に落ち、たった一夜の過ちで妊娠した。だが、彼は忽然と姿を消し……、遊ばれたと遂に悟らざるを得ず、ヘレンは娘を独りで産んだのだ。未だ心の傷が癒えないヘレンは、一人の若い男性と知り合い、ある日、バミューダにあるという彼の実家へ招待を受ける。広大な邸宅に驚くヘレンは、金融界の大物の父親を紹介されると、声にならぬ悲鳴をあげた。それはあの、リードだった。忘れもしない。しかし、リードはヘレンを覚えていなかった。

抄録

 ドアを開けるとアジア人のメイドがいた。盆を下げに来たのだ。
「ワイアットさまが、ご気分はいかがですかとおっしゃっています。でも、ずいぶんよくなられたようですね」彼女は親しげにほほ笑んだ。「階下に下りていらっしゃいますか?」
「ええ」ヘレンは息が止まりそうになった。廊下の向こうから彼女の頭痛の種が歩いてくるのが見えた。ゆったりした白いシャツとぴったりした黒のズボン姿だ。ベルトを締めたシャツの裾が腰を覆っている。午後見た時よりも魅力的だった。あの時は、外見よりも彼が誰であるかにヘレンは気を取られていた。潜在意識で彼の姿をとらえており、十年の年月が彼にほとんど影響を及ぼしていないことなど、大した重要事ではなかったのだ。
 しかし今は、この年月がリードにとって好ましいものだったことに気づかずにはいられなかった。彼は何歳になったのだろう? 四十二だろうか、三だろうか? 彼は年よりも若く見えた。目の辺りに刻まれたしわだけが、わずかに年輪を表していた。
 何年も前に、ヘレンがリードに魅了されたのももっともだった。痩せて引き締まった長身は、彼の肩書きにはふさわしくない。銀行家というよりヨットマンに見える。健康そうに日焼けした肌は、戸外スポーツの愛好者であることを物語っていた。リードは特に美男ではない。目はくぼみすぎ、鼻は長すぎた。唇は美しいと言うには薄すぎた。しかし、その目を長く濃いまつげが縁取っている。角張った顔は高い知性を表していた。そして唇は――かつてヘレンを寸分残さず探り求めた唇は――温かく、あらがいようもなく官能的だった。本当に、リードは少しも魅力を失っていない。襟に触れる明るい銀色がかった髪には、少し白髪が交じっているかもしれない。それでも、今なお豊かでつややかだ。
「ああ……ヘレン。頭痛はすっかりよくなったようだね」
「ええ」ヘレンは気軽な調子で応じようと思った。しかし、どんなに努力しても彼女の声はとがっていた。この男に対して礼儀を守ることさえ骨が折れる。ジョンが来て助けてくれればいいのに……。
「それはよかった。ローラに言おうと思って……」彼はメイドの去った方に手を振った。「……あまりお邪魔してはいけないとね。でも、元気になってよかった」
「ええ……治りました」
「うれしいね。それで……支度はいいかな? 図書室で妹がみんなを待っているんだ」
 ジョンが夕食を抜かなければよいが。ヘレンはドアを閉めた。そして、リードが自分に手を触れないように祈りながら、階段を下り始めた。彼は手を触れることなく、ただ、彼女の歩調に合わせながら、寄り添っただけだった。
 ほんの数センチ先にリードの腕がある。ヘレンは注意を周辺にそらそうと努めた。今日の午後、ここに連れてこられた時、彼女は周囲の様子にほとんど注意を払わなかった。玄関は各部屋に通じる大広間になっている。三階の高さの頭上に、天井がアーチを描き、各階には歩廊が巡らされて踊り場がついている。支柱のない、マホガニーの階段はそれ自体が中央の四角い柱を形成していた。
 じゅうたんを敷き詰めた階段を下りながら、周囲に気を取られたふうを装って、ヘレンは辺りを見回した。階段はふたりが並んで下りるのに充分な幅があった。やがて、本当に興味を覚え始めたヘレンは、頭上に下がったシャンデリアを見ようと仰向いた。リードが彼女の肘を支えた。
 ヘレンはさっと身を引いた。ほんの一瞬、彼女は自分のいる場所と立場を忘れていたのだ。しかし、固い指の感触は彼女を身震いさせた。リードからできるだけ離れて、ヘレンは指が触れたところをこすった。
「驚かせたのなら、すまない」リードはちょっと怪訝そうに目を細めたが、親しげな様子は変わらなかった。「ただ、君が前を見ていなかったので、落ちて脳震盪でも起こすと、ここがますます嫌いになるかと思ってね」
 ヘレンはぎょっとした。「ますます……嫌いに」
「間違っているかもしれないが、君はここに来たことを……あまり喜んでいないようだ。空港からの途中、ビクトリアがさんざん立ち入ったことを尋ねたそうだね。ジョンから聞いたが、そうかな?」
「ええ……いくらか」
「わかった。もうビクトリアにいらいらしなくていいよ。彼女はほんの少しばかり――思慮が足りないんだ」
 ヘレンはやっとこわばった笑みを浮かべた。それは容易ではなかったが、リードは、迷惑なほど優しいまなざしで彼女を見つめていた。彼の正体を知っていながら、彼の魅力に引かれそうになる。
「ビクトリアの態度については、ジョンにも責任の一端がある」ふたりは階段を下りていった――今度は、ヘレンの手は手すりをしっかりつかんでいた。「時々、ジョンはちょっと……おかしげな人間を連れてきたからね。君がそうだ、とは言っていないよ。大違いだ。だが、実際、妹は……とても保守的なんだ」
「あなたは……違いますの? ワイアットさん」
「ああ、僕も同じだ。だが、そうでないように努力しているんだ。君も年を取るとわかるよ、ヘレン。君にワイアットさんと呼ばれるたびに、僕はなんと年を取ったことかと思うよ!」
 リードの微笑は人の心を和らげた。しかし、ヘレンはだまされまいと思った。いったい、私を誰だと思っているの? 十年前、ロンドンでのパーティーのあとで、この男がどんなに保守的にふるまったか言ってやったら、どう答えるかしら?


*この続きは製品版でお楽しみください。

本の情報

形式

【XMDF形式】

XMDFデータをご覧いただくためには専用のブラウザソフト・ブンコビューア最新版(無料)が必要になります。ブンコビューアは【ここ】から無料でダウンロードできます。
詳しくはXMDF形式の詳細説明をご覧下さい。

対応端末欄に「ソニー“Reader”」と表示されている作品については、eBook Transfer for Readerで“Reader”にファイルを転送する事で閲覧できます。
海外版の“Reader”は対応しておりませんので予めご了承くださいませ。

【MEDUSA形式】
MEDUSA形式の作品はブラウザですぐに開いて読むことができます。パソコン、スマートフォン、タブレット端末などで読むことができます。作品はクラウド上に保存されているためファイル管理の手間は必要ありません。閲覧開始時はネットに接続している必要があります。

詳細はMEDUSA形式の詳細説明をご覧下さい。