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和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン・ロマンス

踏みにじられた純潔

踏みにじられた純潔


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ロマンス
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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解説

愛する人から愛されぬ孤独。さらに今後は、屈辱にも耐えろと?

エロイーズは皇太子である夫、オーディルのもとに戻ってきた。今夜、彼はロンドンの高級ホテルで慈善パーティを開く。彼女はオーディルに離婚を切り出した。もともと政略結婚だから、夫は愛していない妻と別れられて、せいせいすると思っていた。だが、その返事は“君に僕から離れるという選択肢はない”で、パーティでの夫のスピーチに、エロイーズは愕然とする。なんと彼は、“妻は妊娠している”と世界に向けて発表したのだ!ありえない。浮気の濡れ衣を着せられて、私は宮殿を追われた。しかも夫は結婚後、ただの一度も私にふれたことがないのに!

■ヒロインが政略結婚を承諾したのは、権力を望む父に逆らえない母に懇願されたからでした。12時間以内に妻とベッドをともにし、嘘を真にしたい夫の目的とは……。ピッパ・ロスコーは期待の超大型新人です!大ヒット間違いなしのデビュー作をご堪能ください!

抄録

「声が大きいぞ」オーディルがエロイーズをぐいっと引きよせた。私が逃げ出すとでも思っているのかしら?
 案外、考えすぎでもないのかもしれない。さっきふいにキスをされて、彼の舌が唇を割って入ってきたとき、とっさに頭をよぎったのは“逃げたい”という衝動だったから。
 ああ、なんてしゃくにさわる話。すっかり忘れさったはずの気持ちが、唇を奪われてほんの数秒であふれ出すなんて。感情の大波にさらわれたエロイーズは、あやうくオーディルのタキシードにすがりつくところだった。
 二人が歩きだすと、人々は波のように分かれて道をあけた。たとえオーディルが皇太子でなくても、同じようにしただろう。彼の全身からただよう迫力と威厳のなせるわざだ。
 会場の中ほどまで進んだとき、夫の専任ボディガードの一団が部屋の横手のドアに集まるのが見えた。
「私をどこへ連れていくつもり、オーディル?」エロイーズはきいた。
「どうした? もう“ダーリン”とは呼ばないのか?」
 エロイーズは腕をふりほどこうとしたけれど、オーディルの力は強まるばかりだった。
「騒ぎになるからやめたほうがいい。この半年、君の妻としてのふるまいはひどいものだった。これ以上、立場を悪くするつもりなのか?」
 オーディルの言葉に、エロイーズは当惑した。私が完璧な妻でなくたって、あなたにはどうでもいいことなんでしょう? 少なくとも、結婚式からの二カ月間はそう見えた。オーディルが何週間も続けて留守にしたので、広い宮殿に一人とり残されたエロイーズは、あてどなく回廊をさまようほかにすることがなかった。今夜いきなりロンドンに呼び出されたのも、夫婦関係を解消するためだとばかり思っていた。
 それもこれも、ファレードの宮殿で最後にオーディルから投げつけられた言葉のせいだ。私があんなことをしたと、彼は信じて疑わないのだから。
「騒ぎを引き起こしているのは私じゃないわ。あなたよ、オーディル。もう一度きくけれど、私をどこへ連れていくつもり?」
 その声は近くの人に聞こえそうなほど高く、オーディルが一瞬ひるんだように見えた。
「二人で話せる場所だ。それが君の望みだろう? 話をすることが」
「私の望みは離婚――」
 オーディルがエロイーズの腰を強く抱きよせたので、二人は真っ向から見つめ合った。危険なほど近い距離だ。はた目には愛情あふれる夫に見える表情で、オーディルが顔を寄せ、彼女の耳元にぴたりと唇をつけた。
「二、度、と、言、う、な」
 一音ずつ区切ってささやく夫の息がほてった肌をくすぐり、エロイーズの鼓動はとてつもなく速くなった。彼の恐ろしい言葉も、私の体には関係ないらしい。
 オーディルがふたたびエロイーズを横に立たせ、人をかき分けて専用エレベーターに乗りこんだ。
 思えば、夫と二人きりになるのは新婚初夜以来だ。あの夜は置き去りにされたせいで、華美な純白のウエディングドレスを脱げなくて途方にくれた。鏡張りのエレベーターには、並んで立つ二人の姿が幾重にも連なって映っている。
 この六カ月で、ハンサムな夫の外見は少しでも変わった? エロイーズは目をこらした。こめかみの豊かな黒髪にはわずかに白いものがまじり始め、閉じた目の縁にはしわが刻まれ、頬は少しこけている。でもいずれも、彼を今まで以上に強く、自信たっぷりに見せているだけだ。加えて愛用のコロンの香りが、エロイーズの嗅覚と意識を圧倒していた。
 てっきり怒られるものと思っていた。激昂されるのではなく、冷たく無関心にふるまわれたのは意外だった。けれど、子ども時代からの学習で、怒りの前兆はわかる。権力をもつ男性はみんな同じだ。父も、オーディルも。
「オーディル――」
「まだだ」目を閉じたまま、夫がぴしゃりと言った。
 その瞬間、唇をふさがれたときからわだかまっていた、エロイーズの怒りが火を噴いた。「いいえ。話を聞い――」
 しかし、言い終える前にエレベーターが目的の階に着いた。オーディルがさっさと廊下を歩きだし、ボディガードがあらかじめドアを押さえて待っていたドアの中へと消えた。
 エロイーズはあとを追った。もやもやした不安と、無視された不快感につき動かされて足を踏み入れた先は、予想もしない一室だった。
 壁は全面ガラス張りになっていて、ロンドンの夜景が一望できる。漆黒のシルクにスパンコールをちりばめたようにまたたく小さな明かりは、ロンドン・アイと呼ばれる巨大な観覧車と国会議事堂をきわだたせていた。
 見ているうち、エロイーズの胸には意外にも、ホームシックの念がこみ上げてきた。大学を卒業してファレードに移り住んで以来、ロンドンには一度も立ちよっていないのに。
 あれから三年を経た今、故郷の夜景をまるで支配者のように眺めているなんて、なんだか不思議だ。
 なにを考えているの? ばかね、私がなにかを支配できたことなんて一度もない。以前は父、現在は夫がその役割を担っているからだ。ハリス家の女性はみんな、そういう低い扱いに甘んじてきた。私がオーディルのもとから逃げ出すまでは。


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