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思い出は遠く切なく【ハーレクイン・セレクト版】

思い出は遠く切なく【ハーレクイン・セレクト版】


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・セレクト
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ジュリア・ジェイムズ(Julia James)
 十代のころに初めてミルズ・アンド・ブーンのロマンスを読み、それ以来の大ファン。ロマンスの舞台として理想的な地中海地方、そしてイギリスの田園が大好きで、とくに歴史ある城やコテージに惹かれるという。趣味はウォーキング、ガーデニング、刺繍、お菓子作りなど。現在は家族とイギリスに在住。

解説

4年前、父の客として訪れたギリシア富豪ニコスにソフィーは恋をした。だが結ばれた直後、ニコスは理由も告げずにアテネへ発ったのだ。その日からソフィーの人生は暗転し、地獄の日々が続いている。ある日、仕事で指定されたホテルに行くと、なんとニコスが現れた。「あんないかがわしいパーティで何をしていた?」まさか……数日前の仕事先に彼がいたなんて!ソフィーはうなだれ、説明した。父の莫大な借金を返すため、仕方なくしている仕事だと。ソフィーの窮状を知るや、ニコスは借金の肩代わりを申し出た。ただし交換条件は、彼の別荘に滞在すること――。

■かつて愛したギリシア富豪との思いがけない再会。それは苦痛に満ちたものでした。金目当てと誤解する彼に、愛を告げても信じてもらえず、ヒロインは苦悩し……。ハーレクイン・ロマンスを代表する超人気作家ジュリア・ジェイムズが綴るドラマチックな愛憎劇!

*本書は、ハーレクイン・ロマンスから既に配信されている作品のハーレクイン・セレクト版となります。 ご購入の際は十分ご注意ください。

抄録

 ソフィーはその場に立ちすくんだ。
 ニコスは夜会服を着ていた。ダークスーツ姿の彼をすばらしいと思ったが、タキシードに身を包んだ彼はそれをはるかにしのぎ、ソフィーはその場でとろけそうになった。
 ニコスは彼女の手を取り、何やらギリシア語でつぶやいた。彼に見つめられ、ソフィーは背筋がぞくぞくした。
「君は……」ニコスのかすれ声はそこで途切れた。言葉では彼女を説明できない! しかし、着ているものなら説明できる。アイボリーの流れるようなシルクのドレスと、それに合わせた繊細な刺繍が施されたストール。首もとには天使の涙のような真珠のネックレス。髪はうなじでゆったりとまとめられ、それとわからないほどの化粧が彼女の美しさを際立たせている。この美しさを表す言葉は見つからず、ニコスはただただ欲望がわき起こるのを感じた。
 とはいえ、それは彼が知っている欲望ではなかった。普段のニコスがその言葉から連想する感情とはまったくの別物だ。こんな気持ちになったのは初めてだ。どうしようもなく……なんだ?
 どうしたいのか、自分でもわからない。だが、ニコスはあえて言葉を探そうとはしなかった。言葉など不要だ。今はただ、ソフィーに向かってほほ笑み、彼女を連れて満員の演奏会場に入り、今夜来てくれてうれしいということを伝えればいい。それを実行するなり、ソフィーが目を丸くした。
「うれしいですって? あなたがチケットを手に入れたことが信じられないくらいなのに。めったに手に入らないチケットだもの」
 ニコスの口もとがゆるんだ。「そうか、それで招待を受けてくれたのか。まったく、僕はばかだな。コンサートではなく僕が目当てで来てくれたとうぬぼれるとは」
 ソフィーがぱっとニコスに目を向けた。「そんな……」
 ニコスは動けなかった。何度となく同じ状態に陥った気がする。ソフィーはしばしば僕を動けなくする。昨夜も、そして今も、彼女に見つめられると、ハンマーで殴られたような衝撃を受ける。
 彼女は僕に何をしているんだ?
 ほかの人々の足を止めていることに気づき、ニコスはソフィーを優しく促し、歩きだした。だが彼女には触れなかった。背中にまわした手は浮かせている。ほかの女性に対してなら当たり前と思える触れ合いも、彼女にはそぐわない気がした。
 ソフィーに触れるのは、特別な意味があるときに限る……。
 今夜が特別な夜になることはわかっている。この僕でさえチケットを手に入れるのにかなり苦労したし、それに……。いや、それだけだ。
 ニコスはあれこれ考えるのをやめた。流れに身を任せよう。そして、今まで経験したことのない何かが起ころうとしていることを全身で感じるのだ。
 優雅に歩くソフィーに男たちが熱い視線を注いでいた。彼女のほうは周囲を見まわしてときおり目を見張っている。待合室ではシャンパンがふるまわれていて、ニコスはグラスを二つ受け取り、ひとつをソフィーに渡した。彼女はひと口すすり、かすかにニコスに身を寄せた。
 ニコスがグラスを掲げる。「すばらしい夜に乾杯」
 何も言わずとも、ソフィーも同じ気持ちだった。
 まさしく、すばらしい夜だった。深紅のベルベットのカーテンに飾られたステージからは著名な歌手の歌声が朗々と響いている。二階の特別席でニコスの横に座るソフィーは顔を上気させ、コンサートの間ずっと、彼の引き締まった体を意識していた。両手は膝に置いたままだが、ときおり彼の腕が触れて息をのむ。それでも、コンサートが終わるころには、みごとな音楽と演奏に心を奪われ、感極まっていた。ソフィーは最後の拍手を送りながらニコスに顔を向けた。「ありがとう! 今夜のことは一生忘れないわ」感動に潤むソフィーの目は星のようだった。
 きのうと同じように、ニコスの顔がこわばるのをソフィーは見た。やがて彼はゆっくりと彼女の手を取り、自分の唇に運んだ。
「僕もだよ」
 天にものぼる心地で頬を染め、唇をかすかに開いたソフィーは、彼を見つめながらこれまで感じたことのない気持ちに駆られた。
 ニコスの唇が軽く手に触れ、ソフィーは息をのんだ。やがて観客が席を立ち始め、彼女の手を下ろしたニコスはそのまま彼女を立ちあがらせた。自分の指にたくましく温かな指がからみつき、そのすばらしい感触にソフィーは今にも気を失いそうだった。
 ニコス。その名がソフィーの頭の中でこだまする。ニコス! ニコス!
 ゆっくりと会場を出る人波の中、指をからませたままニコスと並んで歩くソフィーの心はどうしようもなく浮き立っていた。通りは人でいっぱいで、なかなか前に進まなかったが、ようやく二人はリムジンに乗りこみ、車はゆっくりと走りだした。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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