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和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン文庫

脅迫

脅迫


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン文庫
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ペニー・ジョーダン(Penny Jordan)
 1946年にイギリスのランカシャーに生まれ、10代で引っ越したチェシャーに生涯暮らした。学校を卒業して銀行に勤めていた頃に夫からタイプライターを贈られ、執筆をスタート。以前から大ファンだったハーレクインに原稿を送ったところ、1作目にして編集者の目に留まり、デビューが決まったという天性の作家だった。2011年12月、がんのため65歳の若さで生涯を閉じる。晩年は病にあっても果敢に執筆を続け、同年10月に書き上げた『純愛の城』が遺作となった。

解説

サマーは凍りついた。あれはチェイス・ロリマーではないか。二人の出会いは、5年前の夏の日までさかのぼる。恋人の浮気現場を目撃し、心が傷つけられたサマーに、チェイスは大人の魅力を漂わせ、近づいてきたのだ。若く未熟なサマーはわけもわからず、彼の掌中で弄ばれ――ひどい男性不信に陥った彼女は、そのせいで未だ純潔だった。望まぬ再会を果たしたサマーを見つめ、彼は冷笑して告げた。
「僕と結婚するんだ。さもなければ例の写真を……」なぜいまごろになって?思い出したくもない古傷がまた疼く。

抄録

「そこを右に曲がるの」と、指示した声が少し上ずってしまった。男性を知り尽くした娘のように思い込ませたところまでは成功の部類に入れるべきなのだろうが、こんなぺてんがいつまで通用するのだろう。体に触れられたとたん、たまりかねて相手に真相を暴露してしまうかもしれない……ひょっとして、逃げ出す口実を探してるの? と、マクドナルド家の自尊心が手厳しく詰問した。自分で始めたことでしょう? 最後までやらなくて、どうするの!
 海を見下ろす崖の上の小さな駐車場に車が着いたとき、サマーはひそかに安堵の息をついた。実はアンドルーと一度来たきりなので、自分の記憶に少々不安を感じていたのだ。崖の端に見える小さな石標が、海へ下りる小道の目印になっていたはずだ。
「海岸までの勾配は、かなりきついのかい?」車を降りたチェイスからたずねられ、サマーはこっくりとうなずいた。「そうか……。すると、商売道具のカメラの安全を考えて、荷物は二度に分けて運ぶほうが無難のようだ。しかし、そういう場所なら、人もめったに来ないだろうし、今日は君と水入らずの時間をたっぷり過ごせそうだな」
「あら、周囲は‘水’だらけよ。だって、海ですもの」
 すかさず合の手を入れたサマーを、チェイスは好もしそうに見つめた。「ユーモアのセンスもなかなかのものじゃないか。さて、荷物運びだが……君のバッグは自分で持てそうかい?」
「当然だわ」
「現代っ子に対して、失礼な質問だったようだな。ママの母乳を飲んでたころから、男女同権を吹き込まれて育ったんだろう? それにしても、君のような自由な生き方に対して、ご両親は口をはさんだりなさらないのかい?」
「母はとっくに死んだわ。父のほうは……」
「娘と同様、自由恋愛の信奉者?」軽く肩をすくめた後、チェイスは車のトランクからサマーのバッグと帽子を取り出して無造作に差し出した。「時代も変われば変わるものだが、ま、いずれにしても僕がとやかく言う筋合いのものでないことは確かだ」
 サマーはひったくるように荷物を受け取って小道の下り口に向かった。暑さと好天続きのせいか、道はからからに乾燥して滑り台のように滑りやすく、一度も転ばずに下まで行けたことが奇跡のように思えた。だが、三方を崖、一方を海に囲まれた静かな入江に下り立つと、彼女は不安も緊張も思わず忘れて、うっとりと周囲を見回してしまった。吸い込まれそうに青い水が果てしなく広がり、同じように青い空と水平線のかなたで接している。覚えていたとおりの景色なのに、まるで初めて来たかのような新鮮な感動が胸に広がった。
「なるほど、まさに二人だけの別天地だな」ひと足遅れで浜に下りたチェイスが満足そうにつぶやき、抱えてきた機材を慎重に砂の上に降ろした。「さて、僕はもうひとがんばりしてくるが、君は泳ぐなり日光浴をするなり、好きにしていていいんだぞ。いっそ全裸になったって、ここなら他人のひんしゅくを買う心配もない。なんなら、二人で臨時のヌーディスト・クラブを作ろうか?」彼はサマーの表情を見て愉快そうに笑った後、やおら小道に取って返した。
 チェイスが残りの荷物を持って再び入江に下りてくるころ、サマーは今にもぷつんと切れそうに張り詰めた神経を抱えて波打ち際をいらいらしながら歩き回っていた。とんでもないことを始めてしまった愚かさを悔いる気持は、もう自分でごまかしきれないほどに激しくなっていたが、一方、その愚かさを承知のうえで、何としてでも計画を最後までやり抜かなければというがんこな決意もまた、刻々と強まるばかりだった。
 荷物を砂の上に降ろしたチェイスは、まるで決闘場に赴くかのような面持ちで引き返してきたサマーにちらりと目をやりながら、大型バッグを開けてタオルを一枚取り出した。「光線の角度の関係で、まだ仕事には取りかかれないから、先にひと泳ぎしようと思うんだ。君も泳ぐ?」
「私は……泳ぎの前に日光浴をするわ」
 チェイスは早くもオープンシャツのボタンを外し始めていた。シャツが砂の上に脱ぎ捨てられ、褐色に日焼けしたたくましい上半身があらわになって初めて、サマーは遅まきながら急いで顔を背けた。全身に奇妙な震えを感じて目を閉じると、突然、あまりに現実みを帯びたリアルな映像が頭の中に浮かび上がった。あの褐色の胸にぴたりと体を寄せ、指先でそっと愛撫……。
 サマーは痙攣したようにかぶりを振りながら慌てて目を開けた。ジーンズも脱ぎ去り、真っ白な水泳パンツ一枚になったチェイスが、少しいぶかしげにこちらを振り向きながら波打ち際へ下りていくところだった。引き締まった筋肉質の体を食い入るように見つめながら、彼女はジュディスが言った“男の中の男”の意味を少しだけ理解したように思った。
 水滴のしたたる髪をなで上げながらチェイスが浜に戻ってきたのは、サマーがTシャツとショートパンツを脱いだ体に日焼け止めのローションをまんべんなく塗り終えたときだった。チェイスの足は彼女の真横で止まり、クールな緑の目がビキニ姿を真上からしげしげと見下ろした。彼の唇の端に現れた笑みを見て、サマーは海賊に誘拐されて首領のもとに連れてこられた哀れな村娘のような気分になった。


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