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アシメトリー

アシメトリー

著: 水原とほる
発行: 笠倉出版社
レーベル: CROSS NOVELS
価格:945円(税込)
10ポイント還元
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
みんなの評価 ★★★☆☆8
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解説

 ジュエリーデザイナーの香津美の楽しみは、週末にクラブで談笑すること。華奢な香津美は大学院生の一樹を始め、いつも3人の男達に口説かれていたが、体に秘密を持っていたため、誰とも深く関わらないようにしていた。そんな香津美が密かに憧れていたのは、年上の相場師・北条だった。ところが、焦れた3人は香津美を罠に陥れ、襲いかかってきた。そこに、呼び出された北条が現れて――!?

目次

アシメトリー
傷痕

抄録

「北条さん……」
「安心しろ。俺はリビングにいるから。明日は休みだろ。好きなだけ寝ていればいいさ」
 部屋の電気が消されたとき、香津美はもう一度北条の名前を呼んだ。
 ベッドサイドのルームランプの薄暗い明かりの中で、振り返った北条の顔が自分を見つめている。彼に向かって、香津美は震える声で言った。
「行かないで。一人にしないで……」
 精一杯の訴えだった。それを聞いて、北条の表情がふっと弛んだのがわかった。
「どうした? 子どもみたいなことを言ってないで、さっさと寝ろ」
 そう言いながらも北条は、ベッドに腰かけたままの香津美のそばまで戻ってきてくれる。そして、一度香津美を抱き上げるようにして立たせると、ベッドカバーとシーツをめくり、そこに体を横たえるように促した。
 香津美はそれはいやだと首を横に振ると、そのまま北条の胸に縋(すが)りついた。
「俺、あなたが好きだ。初めてクラブで会ったときから、ずっと惹かれていた。でも、体のことがあったから、自分から声をかけて誘う勇気なんてなかった。そのくせ、あなたが遊ぶ相手一人一人にすごく嫉妬していたんだ」
 もう自分には隠すことなんてない。ただ、この気持ちを正直に伝えてしまいたい。
 こんな機会は二度とこないかもしれない。あまりにも優しい北条と、やっと素直になれる自分。まるでこの夜だけの魔法のように思えた。
 悪夢のあとの魔法に縋りつきたい。北条に今一度救い上げてほしい。自分の心のわだかまりと、傷ついた体を彼の手で癒してほしかった。
「お願い。一人で置いていかないで。俺、このままだとまたダメになってしまう。誰にも心も体も許せないまま生きていかなくちゃならなくなる。もう、いやなんだ。苦しいんだ。寂しくて死にたくなる。だから、助けて……」
 自分の弱さを認めた香津美の告白を、北条はどう受けとめるんだろう。雰囲気に流された馬鹿な告白と思うんだろうか。それとも哀れさに、何か彼らしい同情の言葉を口にするんだろうか。
 自分の肩に置かれている彼の手はどんなふうに動くのか、不安に震えながら香津美はそっと北条の顔を見上げた。
 二人の視線が絡み合う。その瞬間、息が止まり、時間も止まる。
 北条の手が香津美の体を力一杯抱き締めた。大きな手が香津美の髪をかき回す。耳やうなじ、頬や首筋に触れていく。
「ああ……っ」
 吐息が漏れた瞬間唇が塞がれる。涙の流れる頬に寄せられた唇とは違う。これこそが、北条と交わす本当に初めての口づけだった。
 香津美は手を伸ばして、彼の髪に自分の指を絡める。ワックスで軽く流した彼の髪をつかみながら、もっと深く唇を重ねようと自ら角度を探る。
「あっ……んん……っ」
 何度も互いの舌を絡め合ったあと、荒い吐息を漏らしながらもう一度見つめ合った。
「これ以上誘うなよ。そんな体じゃ無理だろう」
 北条は彼自身の気持ちを抑えるようにして言うと、香津美の体を引き離そうとした。
「やっぱり、こんな体じゃいや? あんなみっともないところを見られたから、嫌われてもしょうがないけど……」
「そうじゃないさ。ただおまえをこれ以上傷つけたくないだけだ。あの連中がどれほど無茶をしたかは見ればわかる」
「だから、抱いてっ。あんな連中のあとを残したままじゃ、我慢できないんだ」
 吐息とともに懇願すると、北条の胸に顔を埋める。
「この体がいやじゃなければ、どうにかして……」
 北条の腕が香津美の体をゆっくりとベッドに押し倒す。柔らかなスプリングマットに触れてさえ、体中がみしみしと音が鳴りそうなほど痛い。
 無茶なことはわかっている。でも、どうなっても構わないと思った。今は北条の温もりを感じてみたい。
「後悔しても知らないぞ」
 北条の言葉に香津美は静かに首を横に振った。
 後悔なんてしない。大好きだった人に抱かれるのに、後悔することなど何もないとわかっているから。

*この続きは製品版でお楽しみください。

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