和書>小説・ノンフィクション>ボーイズラブ小説>年の差
著者プロフィール
剛 しいら(ごう しいら)
6月9日生まれ東京都出身。魚座・A型。趣味は映画・舞台・格闘技・F1鑑賞。プラチナ文庫、ルビー文庫、アズ・ノベルズなどで作品を多数発表。
6月9日生まれ東京都出身。魚座・A型。趣味は映画・舞台・格闘技・F1鑑賞。プラチナ文庫、ルビー文庫、アズ・ノベルズなどで作品を多数発表。
解説
「私は――君が大人になるのを待ってたんだ」
美貌の臨床心理士・如月東栄は、10歳年下の恋人・佐々木洸太に愛され、平和であたたかな同居生活を送っていた。仕事に関しては天才的だが、生活に必要な能力は悉く欠如している如月をさりげなく支える佐々木。恋することに不器用だった如月も彼に応え、ふたりの関係は着実に深まっていた。しかし、そんな彼らの前に、ひとりの心に傷を抱えた少年が現れて――!?
美貌の臨床心理士・如月東栄は、10歳年下の恋人・佐々木洸太に愛され、平和であたたかな同居生活を送っていた。仕事に関しては天才的だが、生活に必要な能力は悉く欠如している如月をさりげなく支える佐々木。恋することに不器用だった如月も彼に応え、ふたりの関係は着実に深まっていた。しかし、そんな彼らの前に、ひとりの心に傷を抱えた少年が現れて――!?
目次
緑の記憶
それから
それから
抄録
「東栄、浮気しない?」
「はっ?」
誰が浮気をするというのだ。部屋が滅茶苦茶(めちやくちや)になるというのを心配するなら分かるが、浮気というのはとんでもない見当違いだった。
「する筈ないだろ。そんなことが心配で断るつもりなら、どうかしてる。私のことなら心配しなくていいよ。メイドサービスを頼むって手もあるし」
「俺がいなくても平気なんだ」
佐々木がすねているようなので、如月としては笑うしかない。
「そりゃ寂しいけど、佐々木君がうんと楽しんできてくれたほうが、私としては嬉しい。おかしな心配ばかりしてないで、明日出社したら、すぐにお受けしますって言うんだよ」
こんな時だけ如月は、自分が年上であることを強く意識した。
佐々木は迷っている。もちろん如月のことを心配もしているだろうが、会社内の立場とか、いろいろと考慮することもあるのだろう。だからここで誰かに、後押しして欲しいのだ。
会社としては、大学時代に海洋生物の保護で、海外でもボランティア活動の経験がある佐々木がやってくれれば、一番助かるに違いない。
どういった映像作品を作るのか、如月には分からないが、いずれ作品として完成したものを、見てみたいとも思った。
「じゃ、行こうかな。でも東栄、何があっても浮気だけはするなよ」
「……君は、誰より私のことを分かってるんだろ?」
「ああ、分かってるつもりさ。でも最近……東栄、何かさ、色っぽいし」
「……?」
意味がよく分からず、如月はコーヒーをカップに注いで誤魔化した。
確かに健康にはなったと思う。肌の色艶もよく、食事のせいか少し太ったようだ。だが元が痩せすぎていたので、今が一番いい状態だろう。
それにこれまでは仕事でしか外出しなかったのに、佐々木といろいろな場所に出かけていって、よく歩くようになったのもいい影響を与えているようだ。
「俺がいないと、ほっとするなんて思われたらやだな」
佐々木は椅子に座った如月の後ろに回り、そっと背後から如月の体を抱きしめた。
「そんなこと思うわけないだろ。そういえばこの一年、長く離れていたことなかったけれど、何ヶ月も会わなかったことなんて、前はよくあったじゃないか」
「あの頃とは違うよ。今は……東栄は俺のもんだ」
強く抱かれた。如月は佐々木の手に、自分の手を重ねる。
「時差は十二時間か。メールするから、心配しないで」
「嘘だね。東栄はメールするって言っても、すぐに忘れる」
「そんなことないよ。今はいつも近くにいるから、メールの必要がないからだろ」
「あるさ。仕事中だと思って、電話は遠慮してんのに、メールも無視だもんな」
如月の髪に顔を寄せて、佐々木はほっとため息を吐いた。
「バカみたいだな、俺。来月のことなのに、今から心配してる」
「今のうちにうんと心配しておけばいいよ。そうすれば、行く頃には落ち着いてるから」
呑気な如月の言い方に、佐々木は少しむっとしたようだ。
「佐々木君、これからもずっとうまくやっていくには、自分の時間を充実させるのも大切なことだよ。私はアマゾンに十日も旅行するのは、完全に仕事を引退してからでないと出来ない。私を信頼して、通ってくれている患者さんもいるからね」
「そんなことは分かってるよ」
「だから私の分まで、君は楽しんで来ないと駄目なんだ」
「そうか……そうだな、ありがとう、東栄。愛してるよ……」
今振り返れば、きっとキスになる。分かっていたから如月は、ゆっくりと顔を後ろに振り向ける。
思ったとおり、優しいキスが待っていた。
*この続きは製品版でお楽しみください。
「はっ?」
誰が浮気をするというのだ。部屋が滅茶苦茶(めちやくちや)になるというのを心配するなら分かるが、浮気というのはとんでもない見当違いだった。
「する筈ないだろ。そんなことが心配で断るつもりなら、どうかしてる。私のことなら心配しなくていいよ。メイドサービスを頼むって手もあるし」
「俺がいなくても平気なんだ」
佐々木がすねているようなので、如月としては笑うしかない。
「そりゃ寂しいけど、佐々木君がうんと楽しんできてくれたほうが、私としては嬉しい。おかしな心配ばかりしてないで、明日出社したら、すぐにお受けしますって言うんだよ」
こんな時だけ如月は、自分が年上であることを強く意識した。
佐々木は迷っている。もちろん如月のことを心配もしているだろうが、会社内の立場とか、いろいろと考慮することもあるのだろう。だからここで誰かに、後押しして欲しいのだ。
会社としては、大学時代に海洋生物の保護で、海外でもボランティア活動の経験がある佐々木がやってくれれば、一番助かるに違いない。
どういった映像作品を作るのか、如月には分からないが、いずれ作品として完成したものを、見てみたいとも思った。
「じゃ、行こうかな。でも東栄、何があっても浮気だけはするなよ」
「……君は、誰より私のことを分かってるんだろ?」
「ああ、分かってるつもりさ。でも最近……東栄、何かさ、色っぽいし」
「……?」
意味がよく分からず、如月はコーヒーをカップに注いで誤魔化した。
確かに健康にはなったと思う。肌の色艶もよく、食事のせいか少し太ったようだ。だが元が痩せすぎていたので、今が一番いい状態だろう。
それにこれまでは仕事でしか外出しなかったのに、佐々木といろいろな場所に出かけていって、よく歩くようになったのもいい影響を与えているようだ。
「俺がいないと、ほっとするなんて思われたらやだな」
佐々木は椅子に座った如月の後ろに回り、そっと背後から如月の体を抱きしめた。
「そんなこと思うわけないだろ。そういえばこの一年、長く離れていたことなかったけれど、何ヶ月も会わなかったことなんて、前はよくあったじゃないか」
「あの頃とは違うよ。今は……東栄は俺のもんだ」
強く抱かれた。如月は佐々木の手に、自分の手を重ねる。
「時差は十二時間か。メールするから、心配しないで」
「嘘だね。東栄はメールするって言っても、すぐに忘れる」
「そんなことないよ。今はいつも近くにいるから、メールの必要がないからだろ」
「あるさ。仕事中だと思って、電話は遠慮してんのに、メールも無視だもんな」
如月の髪に顔を寄せて、佐々木はほっとため息を吐いた。
「バカみたいだな、俺。来月のことなのに、今から心配してる」
「今のうちにうんと心配しておけばいいよ。そうすれば、行く頃には落ち着いてるから」
呑気な如月の言い方に、佐々木は少しむっとしたようだ。
「佐々木君、これからもずっとうまくやっていくには、自分の時間を充実させるのも大切なことだよ。私はアマゾンに十日も旅行するのは、完全に仕事を引退してからでないと出来ない。私を信頼して、通ってくれている患者さんもいるからね」
「そんなことは分かってるよ」
「だから私の分まで、君は楽しんで来ないと駄目なんだ」
「そうか……そうだな、ありがとう、東栄。愛してるよ……」
今振り返れば、きっとキスになる。分かっていたから如月は、ゆっくりと顔を後ろに振り向ける。
思ったとおり、優しいキスが待っていた。
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