和書>小説・ノンフィクション>ハーレクイン>ハーレクイン・ロマンス
著者プロフィール
サラ・モーガン(Sarah Morgan)
イギリスのウィルトシャー州生まれ。看護師としての訓練を受けたのち、医療関連のさまざまな仕事に携わり、その経験をもとにしてロマンス小説を書き始めた。すてきなビジネスマンと結婚し、小さな男の子が二人いる。子育てに追われながらも暇を見つけては執筆活動にいそしんでいる。アウトドアライフを愛し、とりわけスキーと散歩が大のお気に入り。
イギリスのウィルトシャー州生まれ。看護師としての訓練を受けたのち、医療関連のさまざまな仕事に携わり、その経験をもとにしてロマンス小説を書き始めた。すてきなビジネスマンと結婚し、小さな男の子が二人いる。子育てに追われながらも暇を見つけては執筆活動にいそしんでいる。アウトドアライフを愛し、とりわけスキーと散歩が大のお気に入り。
解説
シャンタルはうっとりと舞踏会の夜を思い返した。ハンサムな男性に声をかけられ、情熱的なタンゴを踊って……。だがシャンタルは他人のチケットを使って忍び込んでいた身。嘘が暴かれそうになって逃げ帰るしかなかった。その男性がギリシアの大富豪アンゲロスだと知ってからは、いっそう自分がみじめになった。おとぎばなしは終わったのだ。だから目の前で車が急停車し、彼が現れたときには驚いた。それもひどく怒って。私を違う誰かと勘違いしているみたいに。ああ、きっとチケットの本当の持ち主と間違えているんだわ。ふいに彼女の唇に、アンゲロスの怒りのこもった唇が重ねられた!
★パリとギリシアを舞台に描かれる、貧しいウエイトレスと大富豪の運命の恋の物語。無垢な恋人を過去の呪縛から解き放とうと、冷酷だったはずの億万長者が見せる深い愛に心打たれる一作です。★
★パリとギリシアを舞台に描かれる、貧しいウエイトレスと大富豪の運命の恋の物語。無垢な恋人を過去の呪縛から解き放とうと、冷酷だったはずの億万長者が見せる深い愛に心打たれる一作です。★
抄録
舞踏室は見事だった。高い天井にはシャンデリアがきらめいている。絵画や彫像の美しさに見とれてはいけない、とシャンタルは思った。美術品に囲まれた生活に慣れているふりをしなくては――。
「シャンパンは?」振り返った彼女は、目をみはった。ぞくぞくするほどハンサムな男性が立っていたからだ。女性はみんな、うっとりと彼を眺めている。
シャンタルの体から力が抜けていった。
傲慢《ごうまん》……それが彼の第一印象だ。
圧倒的……次はそう思った。
グラスを差し出す彼の瞳は漆黒に輝き、その無遠慮な視線にシャンタルはうろたえた。
ディナージャケットのせいだろうか、男性は神のように見えた。もっとも、彼なら仕立てのいい服の力を借りる必要もない。なにを着ていても、なにも着ていなくてもすてきなはずだから。いつもなら、彼女に関心を示したりしない種類の男性だ。ふいにシャンタルの感覚が研ぎすまされ、たまらなく熱い興奮が腰から下へと広がった。彼に触れたわけでもないのに。握手さえしていないのに……。
危険だわ。そう思って、彼女はあとずさりした。
「招待客は全員知っていると思っていたが、違ったらしい」富と権力を備えた者に特有の自信がみなぎった声は、なめらかで魅惑的だった。彼女に自己紹介を促すように、男性は黒い眉を片方上げた。
自分の体の反応にとまどってはいたが、シャンタルは男性の瞳の問いかけを無視した。自分が誰だか告げるつもりはない。招待客のリストにないからだ。そもそも、このような催しに招かれる人間ではない。
シャンタルは男性を観察した。しなやかで引きしまった完璧な体。どこかおもしろがっている目。ベッドに誘おうとしているようなその視線に、シャンタルは一瞬息をするのも忘れた。
とんでもなく危ない人。
男性に激しく得体の知れないなにかを感じ、体がほてる。優雅にその場を立ち去りなさい、と理性は命じていた。誰かと浮ついたやりとりをする余裕はない。人目につくと、正体を暴かれる危険が増す。「まわりのすべてを思いどおりにしたい人なのね」
「僕が?」
「だって、リストにある人全員を知っておきたいのでしょう? 管理したいという欲望の表れだわ」
「つき合う相手に慎重、とも言えるだろう」
「先が見えるほうがいいの? 会う人のことを調べておいたのでは、新鮮な驚きを味わえないわ」
彼は感心したように黒い瞳を輝かせた。「僕はめったに驚いたりしない。だいたいが予想どおりに運ぶからね。みんな退屈なほどわかりやすいよ」
彼はキスを知りつくした唇をしている。シャンタルは直感的にそう思った。
彼が黒髪の形のいい頭を傾けて迫ってくる映像が生々しく頭に浮かび、シャンタルは言葉につまった。彼も同じような空想にふけっているのか、視線がシャンタルの唇のあたりをさまよっている。
「どうした? 反論はないのかな? 僕を言い負かしたくないか?」視線がシャンタルの首からほっそりしたウエストに下りていく。「僕を驚かせるようなことを言ってくれ」
私のことを知ったら、彼はさぞ驚くだろう。
たとえば、私の生い立ち。私の正体。
そして、私が招かれざる客であること。
*この続きは製品版でお楽しみください。
「シャンパンは?」振り返った彼女は、目をみはった。ぞくぞくするほどハンサムな男性が立っていたからだ。女性はみんな、うっとりと彼を眺めている。
シャンタルの体から力が抜けていった。
傲慢《ごうまん》……それが彼の第一印象だ。
圧倒的……次はそう思った。
グラスを差し出す彼の瞳は漆黒に輝き、その無遠慮な視線にシャンタルはうろたえた。
ディナージャケットのせいだろうか、男性は神のように見えた。もっとも、彼なら仕立てのいい服の力を借りる必要もない。なにを着ていても、なにも着ていなくてもすてきなはずだから。いつもなら、彼女に関心を示したりしない種類の男性だ。ふいにシャンタルの感覚が研ぎすまされ、たまらなく熱い興奮が腰から下へと広がった。彼に触れたわけでもないのに。握手さえしていないのに……。
危険だわ。そう思って、彼女はあとずさりした。
「招待客は全員知っていると思っていたが、違ったらしい」富と権力を備えた者に特有の自信がみなぎった声は、なめらかで魅惑的だった。彼女に自己紹介を促すように、男性は黒い眉を片方上げた。
自分の体の反応にとまどってはいたが、シャンタルは男性の瞳の問いかけを無視した。自分が誰だか告げるつもりはない。招待客のリストにないからだ。そもそも、このような催しに招かれる人間ではない。
シャンタルは男性を観察した。しなやかで引きしまった完璧な体。どこかおもしろがっている目。ベッドに誘おうとしているようなその視線に、シャンタルは一瞬息をするのも忘れた。
とんでもなく危ない人。
男性に激しく得体の知れないなにかを感じ、体がほてる。優雅にその場を立ち去りなさい、と理性は命じていた。誰かと浮ついたやりとりをする余裕はない。人目につくと、正体を暴かれる危険が増す。「まわりのすべてを思いどおりにしたい人なのね」
「僕が?」
「だって、リストにある人全員を知っておきたいのでしょう? 管理したいという欲望の表れだわ」
「つき合う相手に慎重、とも言えるだろう」
「先が見えるほうがいいの? 会う人のことを調べておいたのでは、新鮮な驚きを味わえないわ」
彼は感心したように黒い瞳を輝かせた。「僕はめったに驚いたりしない。だいたいが予想どおりに運ぶからね。みんな退屈なほどわかりやすいよ」
彼はキスを知りつくした唇をしている。シャンタルは直感的にそう思った。
彼が黒髪の形のいい頭を傾けて迫ってくる映像が生々しく頭に浮かび、シャンタルは言葉につまった。彼も同じような空想にふけっているのか、視線がシャンタルの唇のあたりをさまよっている。
「どうした? 反論はないのかな? 僕を言い負かしたくないか?」視線がシャンタルの首からほっそりしたウエストに下りていく。「僕を驚かせるようなことを言ってくれ」
私のことを知ったら、彼はさぞ驚くだろう。
たとえば、私の生い立ち。私の正体。
そして、私が招かれざる客であること。
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