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今宵、天使と杯を

今宵、天使と杯を

著: 英田サキ
発行: 大洋図書
レーベル: SHY NOVELS
価格:893円(税込)
10ポイント還元
形式:MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン スマートフォン タブレット
みんなの評価 ★★★★☆29
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著者プロフィール

 英田 サキ(あいだ さき)
 1月3日生まれ。山羊座のAB型。大阪府出身。

解説

 ある飲み過ぎた翌朝、冴えないサラリーマン・柚木成彦が目を覚ましたのは、ホテルのベットの上だった。隣には天使の刺青を背負った、見知らぬ若いヤクザ・四方隆史が裸で眠っていた。しかも四方は、なぜか柚木のことをひどく気に入った様子で……。それ以来、柚木の生活は一変する。離婚危機だった妻に逃げられ、会社からはリストラを宣告され、そして四方には「二週間だけでいい」と無理やりつき合う約束をさせられる。強引に迫ってくる四方に日々振り回される柚木だが、『二週間』という期日の裏には重大な真相が隠されていて!?

目次

Act 1・今宵、天使と杯を
 Prologue
Act 2・天使の涙で咲く花は
Act 3・酔いどれ天使
 Epilogue

抄録

 こんな店でも構わないか、と男は赤のれんの居酒屋の前で立ち止まった。
 柚木が頷くと、ギシギシと鳴る引き戸を開け中へと入っていく。煤《すす》けた古い店内には、カウンターと間仕切りがされた座敷が四つあり、男と柚木は一番奥の席に腰を落ち着けた。
 男はビールと何品かの料理を注文した。先日の経緯もあるので、この男とは酒を飲みたくなかったが、何も飲まないでいるのも場がもたない。仕方なく、柚木もビールを頼むことにした。
 天井《てんじょう》に吊り下げられた小さなテレビが、野球の試合を映している。カットバセーというお決まりの声援が流れる中、柚木は運ばれてきたジョッキに口をつけた。ビールはよく冷えていたが、こんなに美味くない酒は初めてだと思った。
「なあ、柚木さん。どうしてあの時、黙って先に帰っちまったんだ」
 会社のロビーでも同じことを聞かれた。よほど気に入らなかったのだろうか、と思いながら柚木は「すみません」と頭を下げた。
 本当は酔った自分に卑劣な真似をした男に頭など下げたくはないが、何しろ相手はヤクザなのだ。機嫌を損ねるのは利口なやり方ではない。
「謝らなくてもいい。俺はただ理由が知りたいだけだ」
 男は怒っているふうでもなく、妙に淡々としていた。その顔は無表情で、話し方にも抑揚がない。
 きっちりと撫でつけられた黒い髪。なめし革のようなつるりとした皮膚。感情の読めない瞳。全体にどこか無機質な冷たさを感じさせる、不気味な男だった。
 柚木はあの夜の記憶がないことを、男に正直に話すべきかどうか迷った。けれど、まだ男の狙いがわからない。何も覚えていないという事実を暴露すれば、それを都合のいい材料に利用されてしまう可能性もあり、あまり得策ではない気がした。
 取りあえず男の出方を見てからにしようと思い、柚木は「ちょっと急な用事を思い出してしまって」とだけ答えた。
「そうか。ならいい」
 男は小さく頷くと黙々と箸《はし》を動かし続け、その後は何も喋らなかった。柚木も自分からは迂闊《うかつ》に話を切りだせず、奇妙な夕食は三十分ほどで済んでしまった。
「行くか」
 男が呟いて立ち上がった。柚木の分の勘定も一緒に済ませて外に出ると、ひとりさっさと歩きだす。
「どこに行くんだ……?」
 柚木の言葉に、男は少しだけ不思議そうな表情を浮かべた。
「決まってるだろう。俺のねぐらだ」
「あんたの? どうして?」

*この続きは製品版でお楽しみください。

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