和書>小説・ノンフィクション>恋愛小説>ロマンス小説
解説
全米ベストセラー! 大型新人による話題のヒストリカル。
貴族と結婚し、上流階級の仲間入りをする……。母親の野心を受け継いだ資産家の娘ジジは、ハンサムで快活な侯爵のキャムデンに心を奪われた。彼を婚約者から奪うべくジジは策略をめぐらせ、遂に結婚することに。が、彼女の嘘を知ったキャムデンは、結婚直後に異国への旅立ってしまう。十年後、離婚を申し入れたジジに彼は驚くべき取引を持ちかけるが……。リサ・クレイパス絶賛の「斬新でロマンティック。繊細で情熱的な物語」登場。
貴族と結婚し、上流階級の仲間入りをする……。母親の野心を受け継いだ資産家の娘ジジは、ハンサムで快活な侯爵のキャムデンに心を奪われた。彼を婚約者から奪うべくジジは策略をめぐらせ、遂に結婚することに。が、彼女の嘘を知ったキャムデンは、結婚直後に異国への旅立ってしまう。十年後、離婚を申し入れたジジに彼は驚くべき取引を持ちかけるが……。リサ・クレイパス絶賛の「斬新でロマンティック。繊細で情熱的な物語」登場。
抄録
ロンドン、一八九三年五月八日
社交界のお墨つきをもらえる結婚の形はひとつしかない。
社交界では、幸せな結婚などばかげていると考えられている。幸せなんて、しっかり加熱したプディングより長持ちしないからだ。もちろん、不幸な結婚はもっとばかげている。ミセス・ジェフリーが考案した、一度に四十人のお尻をたたける仕掛けと同じようなものだ──もっとも、ここだけの話だが、上流階級の半分はその仕掛けをすでに体験ずみらしいが。
そう、人生の変化に耐え得る結婚形態は、礼節ある結婚だけだ。なかでもトレメイン侯爵夫妻は、もっとも礼節ある結婚生活を送っていることで知られていた。
結婚以来十年間、夫妻は一度も相手の悪口を言ったことがないという。自分の両親や兄弟姉妹、親しい友人にも、見知らぬ人にもだ。さらに使用人たちの証言によれば、ふたりは口げんかすらしたことがないらしい。実際、ふたりの意見がくい違ったことなど一度もないというのだ。
けれども毎年、社交界にデビューしたばかりの女学生気分がぬけきらない令嬢たちのなかには、こう指摘する娘が必ずひとりかふたりいる。“だってトレメイン侯爵夫妻は海を隔てた別々の国に暮らしていて、結婚式の日以来、一度も顔を合わせたことがないんでしょう”
年のいった婦人たちはそれを聞いて頭を振る。“おばかさんね。今にあなたもわかるわ。恋人に浮気されてごらんなさい。あるいは、夫への愛情が失せたらね。そのときになれば、トレメイン夫妻の結婚形態のすばらしさがわかるでしょうよ。くだらない感情に邪魔されず、最初から礼儀正しく距離を保ち、相手から自由でいられるだなんて。そうですとも、まさしく理想の結婚ですよ”
そういうわけで、トレメイン侯爵夫人がトレメイン侯爵の不倫と家庭放棄を理由に離婚を申したてたときには、ロンドンじゅうの上流階級のディナーの席でかしましく意見が交わされた。さらにはその十日後、トレメイン侯爵が十年ぶりにイギリスに戻ってくるという知らせが駆けめぐると、人々は腰をぬかすほど驚いた。
*この続きは製品版でお楽しみください。
社交界のお墨つきをもらえる結婚の形はひとつしかない。
社交界では、幸せな結婚などばかげていると考えられている。幸せなんて、しっかり加熱したプディングより長持ちしないからだ。もちろん、不幸な結婚はもっとばかげている。ミセス・ジェフリーが考案した、一度に四十人のお尻をたたける仕掛けと同じようなものだ──もっとも、ここだけの話だが、上流階級の半分はその仕掛けをすでに体験ずみらしいが。
そう、人生の変化に耐え得る結婚形態は、礼節ある結婚だけだ。なかでもトレメイン侯爵夫妻は、もっとも礼節ある結婚生活を送っていることで知られていた。
結婚以来十年間、夫妻は一度も相手の悪口を言ったことがないという。自分の両親や兄弟姉妹、親しい友人にも、見知らぬ人にもだ。さらに使用人たちの証言によれば、ふたりは口げんかすらしたことがないらしい。実際、ふたりの意見がくい違ったことなど一度もないというのだ。
けれども毎年、社交界にデビューしたばかりの女学生気分がぬけきらない令嬢たちのなかには、こう指摘する娘が必ずひとりかふたりいる。“だってトレメイン侯爵夫妻は海を隔てた別々の国に暮らしていて、結婚式の日以来、一度も顔を合わせたことがないんでしょう”
年のいった婦人たちはそれを聞いて頭を振る。“おばかさんね。今にあなたもわかるわ。恋人に浮気されてごらんなさい。あるいは、夫への愛情が失せたらね。そのときになれば、トレメイン夫妻の結婚形態のすばらしさがわかるでしょうよ。くだらない感情に邪魔されず、最初から礼儀正しく距離を保ち、相手から自由でいられるだなんて。そうですとも、まさしく理想の結婚ですよ”
そういうわけで、トレメイン侯爵夫人がトレメイン侯爵の不倫と家庭放棄を理由に離婚を申したてたときには、ロンドンじゅうの上流階級のディナーの席でかしましく意見が交わされた。さらにはその十日後、トレメイン侯爵が十年ぶりにイギリスに戻ってくるという知らせが駆けめぐると、人々は腰をぬかすほど驚いた。
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