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罪をあがなう花嫁

罪をあがなう花嫁

著: キャスリン・ロス 翻訳: 松本果蓮
発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ロマンス罪をあがなう花嫁
価格:630円(税込)
10ポイント還元
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対応端末:パソコン ソニー“Reader”
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著者プロフィール

 キャスリン・ロス(Kathryn Ross)
 ザンビア生まれのイギリス育ち。現在はランカシャー、アイリッシュ海に面するブラックプール郊外に住んでいる。ビューティー・セラピストとしても活躍する異色の作家。旅行が大好きで、多くの国々を訪れた。社交的で明るい射手座の女性。  

解説

 カリブ海に浮かぶセントルシア島で幼い息子と二人で暮らしているアビー。息子の父親ダモンのことはずっと忘れようとしてきた。なのに、嵐が近づくこんな夜に彼が突然やってくるなんて! 二年半前、アビーの純真な愛は事業の買収に利用され、結果として、愛する人の家族を破滅へと追いやった。あのときダモンは私を信じてくれなかった……。裏切り者と容赦なく責めたて、私を決して許さないと言った。事業を取り戻すことに成功した今、彼が企てるのはさらなる復讐? 息子の存在を隠していた私に、どんな償いを求めてくるのだろう。

抄録

 電話が切れ、アビーはうずくまるようにして頭をかかえた。
 初めてダモンに会った日のことは鮮明に覚えていた。真昼の太陽が放つ猛烈な熱気が気にならなくなるほどに、ダモンが呼び起こしたアビーの体の熱はすさまじかった。以前プールを出るとき、アビーは手で日ざしをさえぎりながら彼を見あげた。ダモンは長身で身長が百九十センチはゆうにあり、引きしまった体にぴったりと合う夏用のスーツを着ていた。
「アビー・ニューランドだね?」ダモンはささやいた。魅力的なアクセントに、アビーの中で音もなく燃えあがっていた情熱の炎が大きくなった。
 ダモンはアビーより十歳年上だった。シチリア人の彼は黒く豊かな髪と、すべてを焦がすような熱く黒い瞳をしていた。ハンサムという言葉では言いつくせない。ただただまぶしかった。
「僕はダモン・チレンチ。君のお父さんから、ここに来れば君に会えると聞いてね」
 ダモンに惹《ひ》かれる気持ちと同じくらい強烈な失望が、アビーを襲った。なぜならダモンこそが、父親からデートをするように言いつけられた相手だったからだ。その命令にアビーは憤慨したが、拒むことは許されなかった。だから、ダモンをすげなく突き放してさっさと歩き去るつもりだった。父親には相手がデートに誘ってくれなかったと報告すればいい。だがハンサムなシチリア人と目が合うなり、アビーの体はその計画にあらがいだした。
「一緒に一杯どうかな?」庭に造られた南国風の木陰のバーに、ダモンは頭を傾けた。
「十分くらいなら」気づけば、アビーはそう答えていた。「あまりゆっくりはできないの」
「ほかになにをすることがあるっていうんだい?」愉快そうな響きだった。ダモンがアビーのことを華やかな世界に生きるお気楽なお嬢様だと思っているのは、最初から明らかだった。
 そのことでアビーは彼を責める気にはならなかった。はたから見れば私の人生はそう映るのだろう。それでも、その一言に心はずきんとうずいた。人は見た目ではわからない、本当の私は窮屈な檻《おり》に閉じこめられ、父の機嫌をとり、気まぐれな命令に従う毎日を生きているのだ、と言いたかった。だが、口には出さなかった。ダモンにはつまらない話だろうし、万が一父の耳に入ろうものなら、どんな恐ろしい報いが待っていることか。
 だから、アビーはしかたなく肩をすくめた。「うーん、甘やかされて育った億万長者の娘にほかに午後の予定があるかですって?」アビーは横目で皮肉っぽくダモンを見た。「それは日光浴をしてお買い物に出かけて美容院に行く以外にって意味?」
 ダモンは悪びれずにほほえんだ。「なかなか大変そうな人生だ」
「ええ、そうよ。でも誰かがしないとね」アビーは軽い調子を続けたが、いらだちや苦悩が瞳に表れていたのだろう。ダモンの声がふいにやさしくなった。
「最初からやり直そうか」手を差し出す。「僕はダモン・チレンチ。父のレストランチェーンの仕事でラスベガスに来た」
 差し出された手を見つめ、アビーは一瞬ためらった。父はなにをたくらんでいるのだろう? 命令に従ったらどんな災厄が待っているのだろう? だがダモンと目が合うと、大丈夫だと自分に言い聞かせた。父のもくろみがなんであれ、この人は自分のことは自分で守れる。だまされたりしないはず。
「アビゲイル・ニューランドよ」ダモンの手を握ったそのときが、獲物を捕らえる網が投げ入れられた瞬間だった。手に感じるダモンの肌の感触も、彼が笑うと胸がきゅんとする感覚もすてきだった。
 初めて会った日の夜、二人は食事に出かけた。そして、キスをした。焼けつくような濃密なキスに、アビーはもっと彼に溺《おぼ》れたくなった。
 ダモンと過ごしたのはわずか五週間だったが、会うたびにダモンへの思いはふくらんだ。彼が呼び覚ます感情や感覚を思い出しただけで、知らず知らずのうちに拳《こぶし》を作ってしまう。それでも状況が状況なだけに、アビーは必死に距離をおいた。すると女性に距離をおかれたことのないダモンは、なおさらアビーを追いかけた。
 まさに網は投げ入れられた。ただ、目の細かい網にかかったのはアビーのほうだった。短い数週間のいつからか、アビーはダモンを愛していた。
 電話がふたたび鳴って、アビーはもの思いから覚めた。留守番電話に切り替わり、耳をそばだてた。
「アビー、頼むから電話を取ってくれ」
  
*この続きは製品版でお楽しみください。

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