マイリストに追加

和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン・セレクト

クレタ島の謎

クレタ島の謎


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・セレクト
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
みんなの評価 未評価
◆レビューを書く

¥0サンプル
XMDFのファイルをご覧になるにはブンコビューア最新版(無料)をインストールしてください。

「書籍ファイルが壊れています」と表示される場合は、ブンコビューアを最新版にアップデートしてください。
購入する


著者プロフィール

 サラ・クレイヴン(Sara Craven)
 イングランド南西部サウス・デボン生まれ。海辺の家で本に囲まれて育った。グラマースクール卒業後は、地元のジャーナリストとして、フラワーショーから殺人事件まで、あらゆる分野の記事を手がける。ロマンス小説を書き始めたのは一九七五年から。執筆のほかには、映画、音楽、料理、おいしいレストランの食べ歩きなどに情熱を傾けている。サマセット在住。

解説

ジェンマは兄の誘いにこたえてクレタ島に到着した。ところが島に滞在しているはずの兄は、約束の日時に空港に降り立ったジェンマを迎えに来なかった。空港近くのホテルに落ち着いて数日後、やっと兄からメッセージが届き、ジェンマは小さな村の別荘を訪ねていった。だがそこに兄の姿はなく、代わりに前日遺跡で出会った男性が現れた。なぜか怒りに燃える目でじっとジェンマを見つめていた、あの男性だ。そのとき、ジェンマは知りもしなかった――謎の男性がアンドレアス・ニコライデスというホテル王の富豪で、冷酷にも彼女を誘惑し、身も心も虜にしようと企んでいるとは!

■大人気作家S・クレイヴンはドラマチックな作風で世界中の読者の心をわしづかみにし、2017年11月に天国へと旅立ちました。『恋も愛も知らないまま』(R−3364)を遺作として贈ってくれた彼女を偲び、1980年代に刊行された初期の名作をお届けします。冷酷な富豪の誘惑の罠に落ちたヒロインの運命やいかに?

抄録

 そこにはクノッソスで会ったあの男性がいたのだ。高価そうなニットのカジュアルシャツと上等な仕立てのクリーム色のスラックスをはいていた昨日とはまったく違った身なりをしている。今日は膝まである革のブーツをはき、刺繍のある深紅のジャケットを着て腰にはサッシュを巻いている。クレタ島の民族衣装だ。
 一瞬、ジェンマはまだ夢の続きを見ているのかと思った。だがてのひらに、階段の手すりの彫り物が感じられる。これは夢ではない、現実なんだわ。
「ここで何をしているの?」ジェンマが口を開いた。この男性が英語を話せなかったらどうしよう。
「待っていたんだよ」そして男はわざと穏やかな口調で続けた。「君が目覚めるのを」
 男の言葉に含まれた意味をのみこんだジェンマは頬を赤らめた。テラスで半分裸体をさらして寝ていた私を見たということを、この人はほのめかしているんだわ。
「何を恥ずかしがっているんだい?」黙りこんだジェンマに向かって、男は冷笑を浮かべて言った。「この島のビーチでは、君の国の女性が毎日裸同然の格好で寝そべっている」
「そうかもしれないけど私は違うわ」ジェンマは声を硬くして言った。「それに、どんな権利があってこの家に入りこんで私の様子をうかがったりしたの?」
「ここは僕の家なんだ」男はゆっくり言った。
 ジェンマは口を開いたが言葉が出てこない。目を丸くして彼を見つめた。「どうしましょう、大変な間違いをしてしまったわ。私はてっきりここがヴィラ・イオネだと思って……」そこまで言って、ジェンマは眉を寄せて考えこんだ。「でも、どうして私宛の手紙が置いてあったのかしら?」
「ここはヴィラ・イオネだよ」
 ジェンマは眉を寄せたまま、男の顔を見上げた。「じゃ、マイクをご存じね。マイクの居場所は──マイクはいつ帰ってくるんですの? 彼が帰ってくれば、すべてがはっきりしますから……」
「そうとは思えないな」男の冷静な声の下に冷たい響きがひそんでいるのがジェンマは気になった。「僕はその……マイクがどこにいるか知らない。だが彼は数週間前にこの島を離れたと聞いている」
「島を離れた?」ジェンマは男の言葉を繰り返した。「そんなはずはないわ。マイクはこの島にいます。私に手紙をくれたんですもの──二通も。お見せしてもいいわ」
 男は首を横に振った。「それには及ばない。あの手紙は僕が書いたんだ」
 いったいどうなっているのかしら? ジェンマは体がかちかちにこわばるのを感じた。「あなたが? でも、どうして?」
 男は肩をすくめた。「君をここに呼び寄せるためだ」
「私が来ることをご存じだったの? じゃ、マイクがあなたにお話しした……」
「彼からは何も聞いていない。会ったこともない男と話ができるわけがない。だが彼は部屋に、君がイギリスから出した手紙を忘れていった」
「それを読んだのね? 他人宛に来た手紙を?」ジェンマの息遣いが荒くなっている。「確かにここはあなたの家かもしれないけど、だからといって人の手紙を読むなんて見下げた人だわ」
 男は少しも動揺の色を見せない。「目的のためには手段を選ばないということだ」
「私はそういう考え方を認めません」ジェンマはこわばった声で言った。「よくわからないけど間違いがあったことは確かね。荷物をまとめて、すぐにここを出ていきます」
 ジェンマは踵を返して階段を駆け上がり、さっきのベッドルームに急いだ。ところが床の上に置いたはずのスーツケースが消えている。スーツケースがあった場所をしばらく見つめていたジェンマは、慌てて部屋を横切りバスルームをのぞきこんだ。シャワーを使うときに脱ぎ捨てた服もなく、化粧バッグだけがぽつんと残っている。
 ジェンマは急いでベッドルームに戻った。ジェンマのあとから上がってきた男が戸口の柱にもたれてジェンマの様子を眺めている。
「スーツケースが……服もみんなどこかへ消えてしまったわ。泥棒に入られたのよ」
「泥棒じゃない」男が言った。「僕が預からせてもらった。そのうちに返すよ」
「そのうちですって?」ジェンマが叫んだ。「私はたった今、ここを出ていきたいのよ」
 男は再び肩をすくめてみせた。「残念だが、それはできない」
 二人の間に沈黙が漂った。ジェンマはいったいそれが何を意味しているのか必死になって考えようとした。
「身代金が欲しくて私を誘拐するつもりなら、それはむだよ。私は仕事はしてるけど、余分なお金はまったくないわ。私の家族も同じよ」
 初めて男の顔がやわらいだ。「金が欲しいんじゃない」
 この人の言葉は信用できそうだわ。ジェンマは昨日彼が乗っていたスポーツカー、彼が身につけていたデザイナーズブランドのスーツや薄い金の腕時計を思い出した。今日の彼は農夫のような格好をしているけど、高い教育を受けた者の話し方だし、英語は完璧だ。
 ジェンマはおそるおそる尋ねた。「じゃ、何が欲しいの?」
「借りを返してほしい」男はあっさりと答えた。
 ジェンマはとまどった。お金が欲しいんじゃないって言ったばかりなのに……。


*この続きは製品版でお楽しみください。

本の情報

形式

【XMDF形式】

XMDFデータをご覧いただくためには専用のブラウザソフト・ブンコビューア最新版(無料)が必要になります。ブンコビューアは【ここ】から無料でダウンロードできます。
詳しくはXMDF形式の詳細説明をご覧下さい。

対応端末欄に「ソニー“Reader”」と表示されている作品については、eBook Transfer for Readerで“Reader”にファイルを転送する事で閲覧できます。
海外版の“Reader”は対応しておりませんので予めご了承くださいませ。

【MEDUSA形式】
MEDUSA形式の作品はブラウザですぐに開いて読むことができます。パソコン、スマートフォン、タブレット端末などで読むことができます。作品はクラウド上に保存されているためファイル管理の手間は必要ありません。閲覧開始時はネットに接続している必要があります。

詳細はMEDUSA形式の詳細説明をご覧下さい。