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和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン文庫

めぐり逢い

めぐり逢い


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン文庫
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 アン・メイザー(Anne Mather)
 イングランド北部の町に生まれる。息子と娘、二人のかわいい孫がいる。自分が読みたいと思うような物語を書く、というのが彼女の信念である。ハーレクイン・ロマンスに登場する前から作家として活躍していたが、このシリーズによって、一躍国際的な名声を得た。

解説

17歳のカレンは、プレイボーイの御曹司アレクシスに片恋をした。その恋は、人生を危うく狂わせるところで、何年もの間、彼への関心が亡霊のようにつきまとい、カレンを苦しめていた。だが、いまのカレンは仕事に打ち込み、優しい婚約者もいる。恋愛感情こそないが、このままいけば彼と結婚するだろう……。
だがある雪の夜、カレンの安寧は突如として終わりを告げる。倦怠の暮らしから、スキー場へ逃れてきたアレクシスに、カレンはめぐり逢ってしまったのだ。瞬く間に過去の痛みが蘇り、これっぽっちも覚えてくれていないのに、彼から目が離せない。

抄録

 アレクシスが向きを変え、引き返そうとした時、スロープの途中に何かがちらりと動いた。誰かがいる。すぐに見失ったのは、きっと淡い色のものを着ているからだろう。彼は、眉をしかめた。こんな夜更けに、それも一人きりであんな所をふらつくとは、無鉄砲にもほどがある。このスロープは一見なだらかに見えるが、ねんざや骨折の事故がしばしば起こっているのだ。
 アレクシスは、ためらった。自分とはなんのかかわりもないことだ。あのあたりの滑降は危険だなどと思いながら何気なくスロープに目をやらなければ、人がいることになど気づかなかったはずだ。
 しかし、そう思った矢先、あっと悲鳴があがり、人がスロープを転がり落ちてきた。ぶざまな転がり方からすると、スキーをはいていないらしい。アレクシスは、やれやれとため息をつき、雪の吹きだまりに落ちてもがいている人間を助けに向かった。
 けれども、アレクシスが深い雪をかき分けて近づいた時には、その男はよろよろと立ち上がり、服についた雪を払っていた。けがはなかったようだ。
「だいじょうぶか」
 相手は、びくりとした。その瞬間まで誰かがそばにいるなどとは思ってもみなかったようだ。振り向いた顔を見て、アレクシスは、てっきり男だと思い込んでいたのが、間違いだったことに気づいた。若い女は、腹立たしげな目でアレクシスを見返した。背が高く、月の光を受けた卵形の顔は、不自然なほど白く、クリーム色のアノラックのフードからこぼれている髪は、黒々としていた。
 細めた目は、長いまつげにかくれていた。やがて、彼女は視線を落とした。「どこにも別状はありません。心配してくださってありがとう」低い、心に響くような声で、完璧な英語だった。
「それはよかった。しかし、こんなことは、しょっちゅうやらないほうがいいな。このスロープでは、ずいぶん大きな事故も起きているんだ。それに、君ときたらスキーもはかずに……」
 女は目を上げた。そして怒ったような早口で言った。「ご忠告ありがとう。危険は十分承知しています」
「へえ」アレクシスは、皮肉っぽく言い返した。「それじゃ、わざとぶざまな格好で転がり落ちたってわけかい?」彼はスロープの方へ目をやった。そして言った。「ごめん……謝るなんて、僕の柄じゃないけれど。いつもは、思っても口には出さないんだ。悪かった……」
「面白いお話ですこと!」女はいらいらしたような顔で、クリーム色のスラックスをひとはたきすると、村の方へ歩き出した。
 アレクシスは、彼女の姿をながめながら、急に愉快な気分になり、微笑した。そして、独特のしぐさでひょいと肩をすくめると、足を速めて女と肩を並べた。
「おせっかいを言って悪かったね」アレクシスの口調には、生来、人の心を惹きつけずにはおかないところがあった。「しかし、そうせずにはいられなかったんだ。君が雪まみれでぷりぷりしているのを見るとね。僕が近くにいたのは、あいにくだったね」
「ええ、ほんとに」
 女は、目の端からちらりとアレクシスを見た。と、アレクシスの脳裏を、かすかな記憶がよぎった。どこか、見覚えがあるような気がした。こちらを見た時のまなざしが、心に引っかかった。が、そんなことがあり得るだろうか。彼女の言葉のアクセントは、南部ふうではなかったし、日頃聞き慣れている都会的な響きもなかった。会ったことがあるとすれば、いったいどこで? 大学ででもないとすると……?
 アレクシスは考え込んだ。どうしても思い出せないのがじれったく、つい口に出してしまった。「前にどこかで会ったことがなかったかな?」
 だが、そのとたんに、アレクシスは後悔した。女は、黒い眉をぴくりと上げ、侮るように答えた。「もっとましな手はないのかしら。もっとどきりとするようなのを期待していたわ」
 アレクシスは苦い顔をした。ばかにされるのは我慢がならない。「君を引っかけようとして言ったわけじゃない。まじめな質問さ」
「あら、そう?」彼女は、そっけなく言った。アレクシスはかっとなった。女からこんなにすげなくあしらわれたことなど、ついぞなかったし、気を引こうとしたなどと、彼女に思われたことが癪でたまらなかった。
 アレクシスは、冷ややかに言った。「君に個人的な興味を抱いたと宣言もせずに、いきなりあんなことをきくんじゃなかったよ。もし、君のその気高いプライドを傷つけたのなら、謝るよ」
 だが、彼女はいっそうぎこちなくなり、アレクシスは、また後悔した。青い月明かりの中でなければ、きっと彼女の頬は、怒りに火のように燃えているに違いない。
 彼女は黙りこくり、それがかえってアレクシスを刺激することにもまるで気づいていないようだった。「グラスマットには、当分いるの?」アレクシスはきいた。
 彼女は、少しためらってから答えた。「いいえ、明朝発ちます」
「そう。それは残念だね」
「そうでもないわ」彼女は静かに言った。「三人で三十人のティーンエージャーの引率をしているんです。とても、行楽気分じゃありませんもの」
 アレクシスは、珍しく心を惹かれた。が、その時彼女は足を止め、道の奥の小さなホテルの方をさした。「わたしたち、あそこに泊まっているんです」彼女は言った。「じゃ、おやすみなさい」
 アレクシスは眉をひそめた。とつぜん、つまらない言い合いなどしなければよかったと、悔やんだ。もう少し、彼女と話をしていたかった。だが、女はすでにホテルに続く坂を上りはじめていた。手遅れだった。追いかけても肘鉄砲をくらうのがおちだろう。そして、以前にどこかで会ったことがあるという思いが、なおも執拗につきまとって離れなかった。


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