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愛の選択【MIRA文庫版】

愛の選択【MIRA文庫版】


発行: ハーレクイン
シリーズ: MIRA文庫
価格:800pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ペニー・ジョーダン(Penny Jordan)
 1946年にイギリスのランカシャーに生まれ、10代で引っ越したチェシャーに生涯暮らした。学校を卒業して銀行に勤めていた頃に夫からタイプライターを贈られ、執筆をスタート。以前から大ファンだったハーレクインに原稿を送ったところ、1作目にして編集者の目に留まり、デビューが決まったという天性の作家だった。2011年12月、がんのため65歳の若さで生涯を閉じる。晩年は病にあっても果敢に執筆を続け、同年10月に書き上げた『純愛の城』が遺作となった。

解説

令嬢は伯爵のもと、大人の女に成長しようとしていた――大ベストセラー作家P・ジョーダンの語り継がれる名作。

スペインの修道院で暮らすホープは、厳格な父の希望どおり外の世界をいっさい知らずに成長した。そして18歳になったある日、ホープのもとに父の代理だという見知らぬフランス人の伯爵が迎えに来る。言われるがまま、ブルゴーニュにある伯爵の豪奢な屋敷へ連れていかれたホープだが、そこで聞かされた話に戦慄した――父がホープを修道院に閉じこめていたのは政略結婚させるため、それまで娘の純潔を守ろうとしてのことだったという。言葉を失うホープに伯爵は告げた。僕は君の父親に復讐するため、今夜君を傷ものにするつもりだと。

*本書は、MIRA文庫から既に配信されている作品のカバー替え版となります。 ご購入の際は十分ご注意ください。

抄録

 今の伯爵は、彼の年代相応の洗練された物腰で話しかけてくる。ホープも精いっぱい調子を合わせ、修道院での教育はあまり就職に役立つようなものではないと説明した。
「役に立つのは、結婚という伝統的な進路を選ぶ場合だけか」彼はそっけなく言った。「君も、教室から寝室へ直行というコースを望んでいるのかい?」伯爵は、ホープの顔がショックで赤らむのをばかにしたように眺めた。「おやおや、どうしたんだい? 男と女の実態を、修道院では何一つ教えてくれなかったなんて言わせないよ。休暇で知り合った若い男たちが、講義を実践で裏づけるチャンスを喜んでプレゼントしてくれただろう」
「いいえ!」動揺をあらわにした叫びに、伯爵はしばらく黙りこんだ。ホープのほうは全身をこわばらせて座席に座っていた。彼がおかしなことをほのめかすせいで嫌悪に体が震える。どうしてこんなに激しく感情をかき立てられるのだろう。現に学校では、伯爵がいやみたっぷりに表現したようなことを地でいく友達がたくさんいた。ホープは真夜中に盛り上がるような内緒話には一度も加わらなかったが、人間関係には、学校で習う無味乾燥な客観的事実より、はるかに奥深いものがあるのは知っていた。
「本当かい?」伯爵は車を脇道に乗り入れ、草地の近くの道端に寄せて止めた。そこは、田園地帯の真っただ中だった。黄金色がかった緑の作物が、はるかかなたまで広がっている。その向こうの丘陵地帯には、古色蒼然とした石造りの|城《シヤトー》が危なっかしく頂上に立っていた。その辺りから、スペインの険しい|山脈《シエラ》が始まるのだ。そんな風景を、ホープはぼんやりと眺めた。
 伯爵から顔をそむけていると、不意に顎をとらえられ、振り向かされた。ホープは緊張して、彼の謎めいたエメラルドの瞳を見つめた。
「本当なんだね?」彼がきいた。「ちょっとしたキス泥棒にも会ったことがないのかい、|美しいお嬢さん《マ・ジヨリー》?」
 質問の裏に嘲笑が感じられて、ホープは真っ赤になった。私の人生や弱点を、こんなふうにさらしものにする伯爵が憎らしい。私だってひそかに悩んできたのだ。真夜中の内緒話や忍び笑いに加わるのはどんな感じなのだろう、どうして私はみんなのような欲望を全然感じないのだろう、と。
 ホープはようやく勇気を奮って反論した。「修道院の壁の外からキスを盗むことは、だれにもできませんわ。私たちの懺悔を聞きに来てくださるイグナシオ神父さま以外は不可能です。それに父は、私がお友達と休暇を過ごすことを許してくれませんでしたから……」彼女は口をつぐんだ。しゃべりすぎた自分に腹が立つ。伯爵はきっと父に言いつけるはずだ。父は、なんて気のきかない恩知らずな娘だと思うだろう。当惑と恥じらいから、ホープはまた頬を染めた。
「そうだったのか」伯爵はホープの唇にあやしげな視線を注いだ。彼女はやわらかな唇が燃えそうに熱くなった気がした。目をそらしてほしいという願いはいっこうに通じず、彼はなおも顎をとらえたまま放さない。そればかりか、親指でそっと顎の輪郭をなぞり始めた。指が触れているところから、不思議な感覚がさざ波のように広がっていく。ホープは喉がからからになった。
 やめて、と言おうとして口を開きかけたとき、彼の親指がふくよかな下唇を撫でた。はっと息をのんで押しのけようとすると、手首をしっかりとつかまれてしまった。やがて顔が近づき、唇と唇が触れ合った。ホープは相反する感情に引き裂かれて全身をこわばらせた。父の友情を利用した伯爵に、激しい怒りとショックを覚える一方で、彼のキスによって力が抜けていくような奇妙な感覚が引き起こされる。ダークスーツの肩に両腕を回したい。彼の体をこの手で感じてみたい……。
 ホープはぞっとして小さな悲鳴をあげ、伯爵の手を振りほどいた。ひときわ大きく見開いた彼女の目は、濃いすみれ色に変わり、震える指は我知らずやわらかな唇を押さえていた。伯爵の濃いエメラルド色の瞳に見えるものは哀れみなのだろうか。それとも、経験のない未熟者の私に対する軽蔑?
「どうだい、|お嬢さん《モン・プチ》? 好奇心は満足したかな? これで、友達のちょっとした実験をうらやまなくてすむだろう?」
 ホープは絶望と憎しみに打ちひしがれ、身じろぎもせずに座っていた。この男性は、私が心の一番奥底に隠しておいたものまで見通してしまう。私が彼の唇を見て、キスしたらどんな感じかしらと思ったことまで読み取ったのだろうか? あの思いは、ほんの一瞬頭をかすめただけだった。それなのに、どういうわけか彼は読み取ったとしか思えない。
「どうしたんだい? こういう親密な触れ合いは、夫婦のあいだだけだと教わったのかい? 夫以外の男はだれ一人、そのやわらかな唇に触れてはいけないのかな?」
 ホープはやっとの思いで硬い声を出した。「ムッシュー、私だってちゃんとわかっています。あなたが……あなたが私をいじめて楽しんでいらっしゃることは」
 伯爵は笑いながら、ふたたび車を発進させて大通りに戻った。彼は結婚しているのだろうか。家族はいるのだろうか。ふとそんな疑問がホープの胸をよぎった。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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