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策士な皇帝は身代わり姫を娶りたい

策士な皇帝は身代わり姫を娶りたい


発行: ヴァニラ文庫
シリーズ: ヴァニラ文庫
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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解説

そうやって、いつも俺を欲しがってくれ
身代わりで嫁いだ皇帝は初恋の騎士で!?

王女の身代わりとして皇帝レアンドルに嫁いだリゼットは、彼がかつて亡き母を訪ねてきた初恋の騎士だったことを知り驚愕した。しかし、レアンドルはそのことに気付いていない。
「弱いのは……耳だけか?」政略結婚だからと閨で一線は越えず、優しい口づけや愛撫でリゼットを翻弄するレアンドル。惹かれていくほど騙していることが苦しくなり!?

※こちらの作品にはイラストが収録されています。
 尚、イラストは紙書籍と電子版で異なる場合がございます。ご了承ください。

抄録

 レオが先に飛び降りる。リゼットにバスケットを返すと、彼女の腰を掴んでふわりと着地させてくれた。
 リゼットは、こんなところを男性に触られたことがない。
 ――勝手に触るなんて。
 リゼットが非難めいた眼差しを向けたというのに、顎を指で掴んで上げられる。レオに覗き込むように見つめられた。
 ――な、何……なんなの?
 リゼットは動揺のあまり固まってしまう。
「……似てる」
 リゼットは髪色こそ母と同じ金髪だが、顔立ちはジョスリーヌに似ていなかった。むしろ妹のほうが似ている。
「だ、誰にです?」
 レオが片方の口角を上げた。
「俺が仲よかったばあさん」
 リゼットは前のめりになり、眉を吊り上げる。
「おばあさんですって!?」
「ああ。もう死んだけどな」
 レオが墓地に顔を向けると、たちまち悲しげな瞳になった。美しい緑眼は潤んで雨後の若葉のようだ。
「……案内してくれ」
「はい」
 リゼットが母親の墓石の前まで案内すると、彼は石に刻まれたジョスリーヌの名を指でたどった。
「……なんでまた夜中に乗合馬車になんか……?」
 いきなり一番気にしているところを突かれて、リゼットはぎゅっと拳を握りしめ、下を向いた。
「わたしの……せいなんです」
「え?」
「母は遅くなったので泊まるように言われたそうです。でも、わたしが頼りないから弟たちが心配で、その日中に帰ろうとしたみたいで……」
 リゼットは下唇を噛んだ。
 するとぼふっと顔が布で覆われた。彼の胸だった。
「……馬鹿だな。頼りないんじゃない。任せられないと思っていたら、ジョスリーヌなら、もともと君に託したりしないよ。リゼットたちの顔を早く見たかっただけだ……」
 その瞬間、リゼットの瞳から涙が堰を切ったようにあふれ出した。なぜ今なのか自分でもよくわからない。母親が死んでも弟妹の手前、思いっきり泣いたりしなかった。
「……そんなに思いつめていたんだな。だが、ジョスリーヌはそんなことを望んじゃいない。いつも君が幸せになることを願っていたよ」
 リゼットは嗚咽が止まらず何も答えられなかった。今になって初めて、母の死を悲しむことができたような気がする。
 大きな手でそっと肩を掴まれ、軍服から顔をはがされた。
 レオが口を左右にニッと広げ、励ますように笑った。
「さあ。涙を拭いて。ジョスリーヌ自慢の長女だろう? 君は母親のためにも幸せにならないといけない」
「……はい」
 レオは諭すようにうなずくと、墓の前にかしずいて何かを祈っていた。しばらくしてからすっくと立ち上がる。背嚢を背後から前へと回し、中から小さな袋を差し出した。
 リゼットは涙の余韻でヒックとしゃくり上げながら、その布袋を見つめる。
「葬儀代など何かと入り用だっただろう? 受け取れ」
「いえ、はっ働いたわけでも……ヒック……ないのに……いっ、いただけっ……ません」
 すると、レオはリゼットの手を取って、手のひらに袋を載せた。見かけより重い。驚くリゼットに、レオは語りかける。
「君にやるんじゃない。ジョスリーヌへの最後の礼だ。だから墓前なんだ。わかるな?」
 リゼットはそこでやっとその布袋を握りしめた。
「わっわかりま……っ」
 リゼットはまたしてもレオに抱きかかえられた。
「え? 何?」
 縦抱きなので目の前にレオの顔がある。
 ――やっぱり、この人の目、澄んだ緑色できれ……ん?
 レオが高い鼻で金髪をかき分け、リゼットの首元に顔を近づけてくる。
「な……何を?」
 リゼットがぎょっとして、彼の肩に手を突っぱらせると、レオが顔を離した。
「せっかくいい匂いだったのに」
 レオが眉を下げて片方の口角を上げた。からかわれているようで腹立たしい。
「別に何もつけてないわ!」
 リゼットがそっぽを向くと、レオが耳に鼻を近づけてくる。
「じゃあ、君そのものの匂いか」
「や、やめて!」
 リゼットはじたばたしたが、太ももをまとめて包んでいた彼の腕に力がこもっただけだった。
「市場まで送ってやるよ」
「ここから歩きます! すぐそこだし!」
 叫ぶようにそう言ったのに、馬の鞍に乗せられる。自力で下りるのは無理だ。
「淑女を置いて、自分だけ馬でというわけにはいかないだろう?」
 ――淑女。
 リゼットはそんなふうに呼ばれたことがなかった。レオは粗野なようでいて、リゼットを『君』と呼んだり、どこかしら上品なところがある。
 ――村を出るとこうなるものかしら?
 そんなことを考えていると、馬が走り出した。リゼットは慌てて、布袋をバスケットの中にしまう。
「わ、わたし、嫁入り前なのに、こんなところを見られたらまずいわ!」
「なんだ。そんな理由か? どんどん見せてやれ!」
 馬が市場へ向かう道から外れた。
「え? どこに!?」
「散歩がてら市場に向かうのもいいだろう?」
「だから! あなたといるところを見られたくないんだってば!」
「なんだ、好きな男でもいるのか?」
 ――何、不機嫌な声になってるのよ!
「も、もちろんよ。わたし、もう十七なんだから!」
 そんな男はいないが見栄もあって、リゼットがそう答えると、なぜか、しばらく間が空いた。
「じゃあ、村を一周してから市場に行く!」
「ちょっと、人の話を聞いてるの!?」
「すごく聞いてる!」
 頭上から笑い声が降ってきて、リゼットが見上げると、初夏の青々とした空が広がっていた。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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