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和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン・ディザイア

名門富豪と偽りの妻

名門富豪と偽りの妻


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ディザイア
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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解説

名ばかりの結婚なのに、初夜に結ばれて……。

カリブ海の島にあるリゾートホテルで働くブリアンは、ボスのゲイブから不意にプロポーズされ、思わず息をのんだ。黒髪と青い目のボスに愛される夢がついにかなうの?だが詳しい話を聞いて、ブリアンはひどく動揺した。ニューヨークの富豪一族の一員であると判明したゲイブは、祖父から遺産相続の条件として結婚を言い渡されたという。さらに彼は別れた妻が残した赤ん坊の母親を必要としていたので、信頼できるブリアンが選ばれたというわけなのだ。人知れず失望した彼女に、ゲイブは冷徹に言い放った!「この結婚は契約に基づいたビジネスだから体の関係は含まれない」

■J・ロックは『消えた花嫁と忘れじの愛』で記憶喪失に陥った悲運のヒロインをドラマティックに描きました。この作品では、彼女の夫の弟として顔を見せていたゲイブがヒーローをつとめます。名門マクニール一族の男性と契約結婚したブリアンの運命は……?

抄録

「ああ、もう」ブリアンは気分がひどく落ち込んだ。
 祖母――私の世界でいちばん大切な人は、今週けがをして一人でたいへんだったのに、私はカリブ海の楽園で暮らし、美しい花を植え、手の届かない人にぼんやり憧れていたとは。ブリアンは身を切られる思いだった。
「どうした?」ゲイブが横に来て、肩に手を置いた。
「私、帰らないと」ブリアンは震えながら立ち上がろうとした。膝に力が入らない。「いますぐに」
「ちょっと待ってくれ」ゲイブは半ばブリアンを抱き留める形になった。ほかの状況なら、禁じられた喜びを楽しむところだ。そんな資格はないけれど。
 だが今日は、彼女は目に見えてうろたえている。顔が青ざめ、震えている。その手紙にいったい何が書いてあったのだろう?
「帰らなきゃ。けがをしたって」
 ブリアンの動揺した声を聞いて、彼ははっとした。
 この女性が細い腕一本で十キロの土嚢をかかえ上げ、稲妻のような反射神経で蛇をとらえて“お引っ越し”させるところを見たことがある。その彼女が涙に暮れるところなど想像もしなかった。だが、黒っぽい目は涙で不自然に光っている。
「誰がけがをしたって? お祖母さんが?」ゲイブは心ならずもブリアンの背中から手を引いた。彼女がふらついていないことを確認する。ロックバンドのロゴ入りの黒いTシャツはしわくちゃで、作業着にしている薄手のカーゴパンツから、片側の裾が出ていた。
 彼女の呼吸が速くなり、涙がひと粒その頬を転がり落ちた。オリーブ色の肌が蒼白になっている。
「読んで」ブリアンは手紙をゲイブに押しつけた。ゲイブがローズ・ハンソンからの短い文面に目を走らせる。ブリアンはカーゴパンツの腿のポケットを探り、携帯電話を取り出した。「祖母がここへ引っ越してこられるよう、お金を貯めていたの。この週末ビデオチャットで話をするつもりだったわ。毎日連絡をすればよかった。いまこれから電話する」
 ブリアンは携帯電話を耳に当てた。回線の向こうで声が聞こえたが、留守番電話につながったに違いない。ブリアンはボタンを押してまたかけた。
「大丈夫だ」ゲイブはハイチェアを迂回した。彼女に近づき、片方の腕だけでぎゅっとハグをする。彼女が多少なりとも慰めを感じてくれればいいが。同時にゲイブは、彼女にふれて生じたときめきにショックを受けた。「誰かを送って様子を確認させよう。訪問看護師がいい」
 ブリアンはすぐに電話をちょうだいと祖母にメッセージを残すと、携帯電話をまたポケットに押しこみ、テーブルにぐったりと寄りかかった。
 ゲイブはブリアンの家族についてよく知らなかったことを後悔した。彼女は恵まれない子ども時代を送り、そのため祖母が貯金の残りをすべて費やして、マルティニーク島へ隠居する友人に預けて孫を島へ送ったことは知っている。そのときブリアンはたった十一歳だった。彼女の後見人は他人に毛が生えたような間柄だったが、ブリアンが学校を出て地元の植物学者のもとに弟子入りするまで、支援してくれたそうだ。
 ゲイブは自分の身に起こったことで手いっぱいで、ずっとブリアンについてきちんと知ることができずにいた。もちろん、つねに気配はあった。彼女とのあいだに散る火花の気配。テレサがいるときはあっさりと無視していた。ブリアンへの気持ちは、クリエイティブな仕事をするプロに対する気持ちであり、僕は彼女の庭園設計の腕と仕事への熱意を尊敬しているのだと、自分に言い聞かせていた。
 だが、それだけではなかった。彼女の頭に自分のあごをのせたとき、その気持ちが猛烈によみがえってきた。髪の香りは彼女が毎日世話をするいきいきした花の香りだ。彼女の体がふれる感触は無視できない。実用的な作業着と相反する女らしい豊かな曲線。
「誰も出ないわ」彼女は首を振り、柔らかな黒髪がゲイブのあごをかすめた。「継母のウェンディがナーナ・ローズと一緒に住んでいたけど、先月新しいボーイフレンドができて出ていってしまったの。私はものすごく心配で――」
「訪問看護サービスを探して、いますぐ電話をするよ」ゲイブはジーンズの後ろのポケットから携帯電話を取り出した。ジェイソンの世話係が早くランチから戻ってきてくれるといいが。そうすればブリアンに集中できる。
 本能的に守ってやりたくてしかたなかった。最悪の時期、ブリアンはゲイブの日々に差す明るい光だった。息子の世界に毎日太陽のように存在し、わが子に母親を用意してやれないという罪悪感と怒りを、わずかながら和らげてくれた。
「いいえ」ブリアンは急に背筋を伸ばし、彼から離れた。「それは私の仕事よ。あなたのじゃなくて。でもありがとう」彼女はまた携帯電話を取り出し、震える指で番号を押した。「私が行くまで誰かに様子を見に行ってもらうのはいい考えだわ」
「がー!」背後で叫び声がした。
 ゲイブが振り返ると、息子がにんじんを放り投げていた。
 ブリアンは動揺して気もそぞろなのに、ジェイソンに震える笑みを向けた。この人は、子育てをゲイブに丸投げしても平気なこの子の母親とは、まったく違う。母と子が会えるよう、息子をアメリカまで連れていくと再三言ったにもかかわらず、彼女が自分の子に会う予定は今度のバレンタインデーが初めてだ。彼女はニューアルバムの宣伝のために、ニューヨークで写真撮影をする手配をしていた。まるで子どもは、必要なときに取り出して見せる小道具のようではないか。
 それでも、自分の息子には、母親に会うささやかな機会を用意してやりたいと思う。


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