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和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン・イマージュ

愛の証に花の名を

愛の証に花の名を


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・イマージュ
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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解説

愛し合いながらもすれ違う心……。あの頃にはもう、戻れないの?

ローザは4カ月前、愛する夫アーロンに黙って家を出た。亡き母から受け継いだ病のせいで、彼に迷惑をかけたくなかったから。そんなことは彼に言えるはずもなく悶々としていたある日、義母からパーティに招かれ、ためらいつつ指定された別荘に向かった。だがそこには、アーロンただ一人が待っていた。二人の復縁を願う義母の計らいだったのだ。気まずいながらも、二人きりの時間はやがて情熱を帯び、ローザは何もかも忘れて彼に身をゆだね、恍惚のうちに眠りにおちた。そのとき彼女の身に新しい命が宿ったとも知らず、翌朝、黙って別荘から立ち去ったのは、アーロンだった――

■愛はすぐそこにあるはずなのにすれ違う、切ない物語をお届けいたします。二人を隔てる障壁、そして自分自身の心に向き合い、人として、夫婦として成長していく過程と、愛の覚悟をご堪能ください。

抄録

 ローザはもう一度深呼吸して、ドレスで築いた自信にしがみついた。そのために作った鎧だ。アーロンと再会することになるとわかったときに。
 みぞおちのあたりのぞくぞくする感覚を包み隠す鎧が必要だった。奇妙な胸の鼓動も。それがなければ生きている気がしないほどの感覚だったけれど、それでも逃げ出さずにはいられなかった。
 玄関のドアは開いていた。わざわざベルを鳴らすまでもないと思い、ローザは中へ入った。一階にパーティの用意はなく、いつもどおり趣味のいい高価な家具や調度品が並んでいる。それは驚くことでもなかった。リアナが盛大にパーティを催すとすれば最上階だ。そこは壁一面がガラス張りになっていて、ケープタウン沖のこのマリナーズ島を囲む海を一望できる。別荘の目の前にあるビーチの岩に砕け散る波や、すぐ近くの小さな町や空港の様子も。
 ローザは息を詰めて階段を上がり、おじけづく前にドアを押し開けた。
 そして、やはり引き返せるうちにそうしておくべきだったと後悔した。
 パーティ会場はこの最上階でもない。なんの祝い事も予定されていないかのようにいつもどおりだ。片側にリビングとベッド、そしてこのフロアで唯一プライバシーを保てるバスルーム。反対側にはダイニングとキッチン。その間には、スペンサー家の家族がくつろいで過ごすことを目的に設計されたオープンスペースが広がっている。
 でも今そこに立っているのは夫だけ。
 そうなると、くつろげるはずもない。
 アーロンは背を向けていて、まだローザがいることに気づいていない。今なら引き返せるかも……。
 だが引き返すと、ドアは閉まっていた。まだ気づかれていないか確かめようと振り返ったときにはアーロンの顔が正面にあった。無表情そのもので。
「逃げるのか?」
「ま、まさか」しっかりするのよ。
 アーロンの口元にかすかに笑みが浮かんだ。「まさか?」からかうような口調だ。
 頬がかっと熱くなり、体が震える。心臓の鼓動の速さは急上昇している。それでもローザはきっぱりと言った。「ええ、まさか」
「なるほど」まるで信じていないといった口ぶりだ。
 無理もないでしょう? 現に一度理由も言わずに逃げ出したんだもの。その決断が正しいかどうか不安で、どれだけ眠れない夜を過ごしたことか。
 罪悪感が体を駆け抜けたが、ローザはそのことを考えまいとした。それには、脳が別のことに集中する必要がある。そうなると、いつものごとく脳は彼の顔を選ぶ。
 ローザの目は、この四カ月、思い出すまいとしてきたものを食い入るように見つめた。黒い髪、黒い眉、薄いチョコレート色の肌。インド系とアフリカ系の祖先の血が作り上げた印象的な顔立ちだ。
 ただ彼の顔は端整なだけではなく、いつも腹立たしいほど落ち着いている。感情を表に出すことはめったにないので、表情を変えることもほとんどない。
 例外は二人がベッドをともにしているときだけで、そのときは感情以外の何も表れなかった。
「ほかのみんなは?」ローザはかすれた声で尋ねた。
 アーロンがポケットに両手を突っ込むと、スーツの上着の下で腕の筋肉がわずかに盛り上がる。ローザは思わずため息をもらし、惹かれたのはアーロンの顔だけではなかったのを思い出した。
 そう、この筋肉質の体だ。私よりずっと背が高く、肩幅が広く、脚はたくましい。そしてアーロンを興奮させたのもローザの豊満な体だった。もし自分の胸やヒップがここまで豊かでなければ、彼に求められることもなかったかもしれない。
 アーロンが一歩前に踏み出した。だからといって、あとずさる理由はないのに、ローザはあとずさった。
「僕の認識が正しければ、ほかには誰も来ない」
「どういうこと? あなたと私だけなんて……あなたが仕組んだの?」
「まさか」アーロンがさらに一歩近づいた。今度は足を踏ん張り、ローザはあとずさらなかった。「どうして僕が、なんの説明もなく出ていった妻に会いたがるんだ?」
「そうよね。だったら私は帰るわ」
 ローザは心の混乱に目をつぶり、再びドアに向かった。きっと混乱は落ち着く。夫との思い出が色濃く残る島を離れさえすれば。
 母が亡くなった数カ月後、アーロンに連れてこられたのもこの島だった。ここで彼はひざまずき、私のいない人生は考えられないと言ってくれた。
 結婚式のあとにやってきたのもこの島だった。ビーチでのんびり日光浴をし、新婚カップルらしく、心ゆくまで互いの腕の中で過ごす時間を楽しんだ。
 それからも何度かここで休日を過ごした。ローザが何かしらで行きづまると、アーロンがサプライズで連れてきてくれたのだ。
 部屋の隅にあるあのベッドで抱き締められ、慰められ、愛された記憶が押し寄せ、のみ込まれそうになる。
 そうよ、この島を離れたら思い出さなくなるわ。夫から遠く、遠く離れたら。
 ローザが開ける前に彼の手がドアを押さえた。ごくりと唾をのみ、振り向いて彼と向き合う。
 心臓が狂ったように打ち、体がうずきだす。アーロンの男らしいコロンの香りが感覚を満たすと同時にありありと記憶がよみがえり、もう押しとどめられない。
「どうして引きとめるの?」どうにか声を出した。
「せっかく来たのに、僕を見ただけで帰るのか?」
「私はリアナの六十歳の誕生日パーティに来たつもりだったのよ」
「僕もだ」
「でも今ここにいるのはあなただけでしょう。だからもう帰るわ」


*この続きは製品版でお楽しみください。

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