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独裁者に誘惑された夜【ハーレクイン・セレクト版】

独裁者に誘惑された夜【ハーレクイン・セレクト版】


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・セレクト
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 アビー・グリーン(Abby Green)
 ロンドン生まれだが、幼少時にアイルランドに移り住む。十代のころに、祖母の愛読していたハーレクインのロマンス小説に夢中になり、宿題を早急に片づけて読書する時間を捻出していた。短編映画のアシスタント・ディレクターという職を得るが、多忙な毎日の中でもハーレクインの小説への熱はますます募り、ある日辞職して、小説を書きはじめた。

解説

ジプシーは最初、なにが起こったのかわからなかった。ウェイトレスとして働くレストランで、突然誰かに腕をつかまれ、文句を言いかけた彼女は、見覚えのあるグレーの瞳に釘づけになった。この2年間、夢に現れつづけてきた男性、リコが目の前にいる。あの夜、二人はお互いしか目に入らないほど惹かれ合い、すばらしく濃密な時間を過ごした。だが朝がくると彼は姿を消し、ジプシーはその理由をテレビで知った。リコの正体は世界的に有名な大物実業家で、亡き父の天敵だった。今度は私が逃げる番だわ。あの夜に授かった、娘ローラの存在を隠し通すためにも!

■過酷な運命に翻弄されるヒーローとヒロインの激しい愛を描き、一躍ハーレクインのスター作家となった、アビー・グリーン。大御所リン・グレアムと友人同士という彼女のドラマティックな逸作をお贈りします。好評を博した『十八歳の許嫁』の関連作。

*本書は、ハーレクイン・ロマンスから既に配信されている作品のハーレクイン・セレクト版となります。 ご購入の際は十分ご注意ください。

抄録

 ジプシーはリコなど知らないふりをしようと決めた。昨夜も会わなかったことにしよう。卑怯なのはわかっているけれど、自分のホームレス同然の格好を見て、彼が逃げ出すのをあてにしたかった。「悪いけど……通してちょうだい」
 ところが、リコはどかなかった。それどころかすべてを見透かすようなグレーの目をまっすぐに向けられ、ジプシーは体じゅうが熱くなった。彼の近くにいると、どうしようもなく反応してしまう。彼女は今にも頭を独占しそうになる光景を必死に思い出さないようにした。汗に濡れた体が性急にからみ合い、のぼりつめようとしている光景を……。
「昨日はどうして逃げたんだ?」
 低い声に、ジプシーはわれに返った。ぞっとするほどすらすらと嘘をつく。「む……娘のことで、家に戻らなくてはならなかったの」言ってから、自分に腹がたった。これではレストランから逃げたことを否定していない。
 そのころには雨は勢いを増し、周囲の若者たちは散り散りになっていた。リコが階段の上のドアを指す。「ベビーカーを中に入れるのを手伝おう」
 パニックに陥ったジプシーは、彼を自分とローラに近づけたくなくて抵抗した。「いいえ、とんでもないわ」けれど、そう言う間にもリコはベビーカーをつかみ、砂糖の袋でも運ぶように軽々とかかえあげていた。このままでは力ずくで取り戻すはめになる。将来、私は彼とローラを取り合うことになるのかしらと思いつつ、ジプシーは手をベビーカーから離した。
 居間とは名ばかりの部屋にベビーカーを下ろしたとき、リコのしぐさがあまりにもやさしかったので、ジプシーは一瞬警戒をゆるめそうになった。彼が無駄のない動きで建物の正面玄関のドアを閉めてから、一階にあるジプシーの部屋のドアを閉める。それから、あたりを見まわして尋ねた。「タオルはあるかな?」
 ジプシーはぎくしゃくした足取りで小さなベッドルームに入り、戸棚からタオルを出した。部屋が狭いせいでリコがどれほど大きく見えるかを意識しないようにしながら、戻ってきて彼に手渡す。
 だがリコはすぐに顔をしかめ、タオルを返した。「君が先に使うといい。びしょ濡れじゃないか。家にあるタオルは一枚きりじゃないんだろう?」
 つかの間呆然としたあと、ジプシーはしどろもどろに答えた。「もちろんよ。あなたはこれを使って。私は別のを持ってくるわ」つのるいらだちが声に出ないようにする。なぜ彼はさっさと帰ってくれないの?
 居間に戻ると、リコは大きな手で乱暴に髪をふいていた。コートは脱いで、みすぼらしい椅子にかけてある。非の打ちどころのないスーツ姿を目にしたジプシーは、その下のたくましい体を思い出して、喉がからからになった。
 振り返ったリコが、彼女を見て手を下ろした。短い髪はセクシーに乱れているが、輝かしい生命力に満ちあふれている彼に、ジプシーは自分が顔色の悪い病人になったような気がした。
 リコが眉をひそめた。「上着と帽子を脱いだほうがいい」あたりを見まわす。「暖房は?」
 彼の言うとおりだと思い、ジプシーはしぶしぶ帽子を取ってパーカーを脱ぎはじめた。風邪をひくのはなんとしても避けたい。しかし頭を振ったとき、グレーの目が答えを待つようにまたこちらを見つめているのに気づいた。その目が上着に隠れていたみすぼらしいセーターにさりげなく向けられ、ジプシーは真っ赤になった。肩に広がる巻き毛は雨のせいでもっと細かなカールになっているはずで、後ろで一つにまとめたかったけれど、そんなことを気にしている自分がいやにもなった。
「セントラルヒーティングは今朝、壊れたの。でも、二時間後には蓄熱暖房が動き出すから」
 リコは滑稽なほど大げさに驚いた。「セントラルヒーティングがない? 君には子供がいるんだぞ。それに、外は凍えるような寒さだ」
 母親としての罪悪感にさいなまれ、ジプシーは顔を赤くした。「壊れたのは今日なの。修理がすむまでは、我慢するしかないのよ……」言葉がとぎれた。失業したうえに蓄えもわずかでは、修理費用など出せるわけがない。でも、彼のせいで仕事を失ったと考えているみたいだけど、自分にはまったく責任がないと思っているの?
 大きく脚を開いて立つリコに目を向けたジプシーは、あきらめとともに悟った。彼にすぐに帰る気はなさそうだ。彼女はしぶしぶきいた。
「お茶かコーヒーでも飲む?」
 降参したようすの彼女に、リコは官能的な唇の片端を少し持ちあげた。「コーヒーがいいな。砂糖抜きのブラックで頼むよ」
 苦くて、甘みはいっさいなしだなんて、なんだか彼に似ている。ジプシーはむっとしながらキッチンへ行き、やかんを火にかけた。とにかくローラが目を覚ます前に、彼の妙な好奇心を満たして帰ってもらわなくては。一刻も早く。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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