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和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン文庫

幾度も愛をささやいて

幾度も愛をささやいて


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン文庫
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 リンゼイ・アームストロング(Lindsay Armstrong)
 南アフリカ生まれ。現在はニュージーランド生まれの夫と五人の子供たちとともに、オーストラリアで暮らす。オーストラリアのほとんどの州に住んだことがあり、農場経営や馬の調教など、普通では経験できない職業を経てきた。彼女の作品にはその体験が大いに生かされている。

解説

結婚式の夜、二十歳の花嫁ルーシーは年上の夫に宣言した。“結婚しても絶対にベッドは共にしない”と。愛し合っての結果ではなかった。選択の余地などなかった。父親の死後、莫大な借金があるとわかり、投資の条件として、幼なじみの大富豪ジャスティンに結婚を申し込まれたのだ。それにルーシーは傷ついてもいるのだ。そのむかし、ジャスティンには、叶わなかった恋人がいたと知った日から。ほかに好きな人がいるのに、どうして幾度も愛をささやくの?誰よりも甘やかしてくれるジャスティン。心から慕っていたのに。

抄録

「今日は火曜日だぞ、ルーシー」
「あと丸々三日あるわ。それに、私、何か難しいことに挑戦してみたいの」
 ジャスティンはじっとルーシーを見つめていたが、やがて静かに言った。「君は、自分で重荷を背負い込もうとしているんだよ、ルーシー」
「違うわ、あなたが背負わせてるのよ」
「くどくど言いたくはないが、君がここにいられるのは僕のおかげなんだぞ」
「そうね、きっと。でも、私は闘いを挑まれたような気分になっているのかもしれないのよ……そうは思わない?」
「客の前で、僕たちの関係をどう繕うつもりだ?」
 ルーシーはびっくりしたようにまばたきしたが、すぐににこっと笑った。「まるで考えていなかったわ」彼女はふいに立ち上がって、太いおさげ髪をぽんとうしろに払った。「愛し合っているようなふりをしなければいけないってこと?」
「新婚だからね」
「まあ」
「それに、僕は笑い物にされて黙っていられる性格じゃないからな」ジャスティンは平静な口調でつけ加えたが、その言葉の底には、奇妙にルーシーの神経を刺激するものがひそんでいた。もしかしたら、じっと見つめている彼の目のせいかもしれないけれど。
 ルーシーは開きかけた口をいったん閉じ、それから落ち着いて答えた。「それはどうしても必要な条件じゃないでしょう……つまり、ほんとうに愛し合っていても、人前でそれをひけらかさない人たちはいるわ」
「おそらくね。僕が言いたいのは、君がちゃんと分別をわきまえた行動をとる覚悟ができているのか、ということだよ。それとも昨日のように、僕たちが愛し合っていない、と宣伝するつもりなのか?」
「私はふつうにふるまうだけよ。どう思うかはその人の勝手よ。それ以上は期待しないでちょうだい」
「その“ふつう”には、男を誘うような態度も入っているのかい?」
「私は、そんな態度はとらないわ」ルーシーはぴしゃりと言った。
「自分では気がついていないのさ。もうすっかり身についてしまっているんだ。昨日君ににっこりされただけで、ロバート・ラングがめろめろになったのを見なかったのかい?」ジャスティンがからかうように黒い眉を上げた。
 ルーシーはぎゅっと歯を食いしばった。
 ジャスティンが皿を重ねてシンクに運び始めた。
「私はいつも同じように笑っているだけよ!」とうとうルーシーはとがった声で言った。
「そうだろうな。だが、大人になったら、少しは分別をわきまえてその笑顔を使うべきだな。でないと、きっとそのうち困ったことになるぞ」
 ルーシーは頭をぐっとそらして立ち上がった。テーブルに戻ってきたジャスティンが何をしようとしているのかなど、まるで考えもせずに。
「ほら、こんなふうに」ジャスティンが低い声で言いながらぐっと間近に迫ったので、ルーシーは反射的に頭をそらした。ジャスティンは目を丸くしている彼女にかまわず、抱き寄せた。「不倶戴天の敵にキスされるようなはめになるんだ」
「ジャスティン……」
 ルーシーの目の表情も、あっけにとられたような声も無視して、ジャスティンはさらに強く彼女を抱きしめた。引きしまったたくましい体がルーシーに押しつけられる。かすかなアフターシェイブ・ローションの香りと彼の男らしさを感じる――ルーシーは頭がくらくらした。理性が奪われていくようだ。そんな感覚にぎょっとして、彼女はますます身動きできなくなった。探るような、ほんの軽いキスだったけれど、ルーシーは応えることもできず、かといって拒絶することもできなかった。ほんとうにおかしな感覚だったわ、とあとになってルーシーは思った。体から力が抜けてしまい、離脱した魂が高いところから自分たちを見おろしているような感覚。
 やっとジャスティンが顔を上げた。ルーシーは一度まばたきしてから、彼の目をのぞきこんだ。
 ジャスティンは探るように彼女を見返していたが、やがてその目の両脇にかすかな笑いのしわが刻まれた。「どうやら、ルーシー、君はすばらしいキスの名手のようだな」
 ルーシーは唇を舌で湿らせ、かすれた声できいた。「どういう意味?」
「上手にキスをしても、夢中にはならない」
 ルーシーの頬がピンクに染まり、首筋がどくどくと脈打った。怒りが込み上げる。「それはあなたのほうじゃないの」そう言うなりジャスティンの手を振り払い、そのまま椅子に座りこんでしまった。
「じゃ、何を怒っているんだ?」ジャスティンがテーブルに寄りかかって腕を組んだ。
「悪女扱いされるのにうんざりしたのよ」砂糖壺のふたを取り上げて、乱暴にもとに戻す。「いまのが昨日の出来事への警告なら……」
「今度の週末に君がどうふるまったらいいか、という警告だよ、ルーシー」
「聞いて、ジャスティン!」ルーシーの青い目が深みを帯びて、まぎれもない怒りが浮かんだ。
「いや、聞くのは君だ」ジャスティンがテーブルの上のルーシーの手首をつかみ、もう片方の手で顎を上げた。灰色の目は厳しく、冷ややかだった。「二人だけのときは、好きなように闘いでもなんでもすればいい。だが、他人の前ではだめだ。もし言うことを聞かなければ、僕は君が後悔するまで仕返しをするぞ。そうなれば君の闘争なんて、子供の遊びみたいなものだとわかるはずだ。わかったか?」


*この続きは製品版でお楽しみください。

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