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愛すれど君は遠く【ハーレクイン文庫版】

愛すれど君は遠く【ハーレクイン文庫版】


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン文庫
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
みんなの評価 ★★★★☆1
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著者プロフィール

 シャロン・サラ(Sharon Sala)
 強く気高い正義のヒーローを好んで描き、業界のみならず読者からも絶大な賞賛を得る実力派作家。息子と娘、それに孫が四人いる。“愛も含め、持つ者は与えねばならない。与えれば百倍になって返ってくる”が信条。ダイナ・マコール名義の著書も出版されている。

解説

サラは、生死の境をさまよっていた。数時間前までは雪に覆われた厳寒の道をひた走っていたはずだ。孤高の男性、マッケンジー・ホークに会うために。行方不明になった兄を救えるのは彼しかいないと……。やがてサラは、ぼんやりと意識を取り戻した。瞼を開けると、燃えさかる暖炉の前に逞しい男性の影が見えた。人を拒絶したような寡黙な背中に、思わず胸が締めつけられる。ひどく傷つけられて、何も感じなくなった虚ろな瞳――彼は振り返るや、とりつく島もなくサラに告げた。帰ってくれと。

*本書は、シルエット・ラブストリームから既に配信されている作品のハーレクイン文庫版となります。 ご購入の際は十分ご注意ください。

抄録

 眠っている最中に感じはじめた痛みが、少しずつ執拗にサラの意識のなかに入ってきた。夜のあいだに何度か、もはやオートバイに乗ってはいないことや、力強い腕の感触や、やさしく話しかけてくる声を認識した。そしてもう寒さのなかで道に迷っていないこともわかった。だがそれ以上は考えられなかった。体を動かすたび目の奥に鋭い痛みが走り、意識が遠くなって再び眠りに落ちた。
 コーヒーの香りが頭の痛みを押しやって、ようやくサラを現実へといざなった。普段コーヒーなど飲まないので、なぜ買ってもいないはずのものの香りがするのかと混乱した頭で考える。そして突如この何時間かの記憶がよみがえり、サラの思考はマッケンジー・ホークを探してカイアミシ山を目指す道中に感じた、強い恐怖で埋めつくされた。
 彼女はうめき、体を目いっぱい動かして重い毛布を押しのけるとなんとかベッドの上で体を起こした。ここがどこなのかも、どうやってここまで来たのかもわからない。周囲を見まわしてやっと、自分がベッドではなくソファに寝ていたこと、そして見たこともないような大きな暖炉の炎の前にひとりの男性の影があることに気づいた。
 女性が朦朧とした意識や毛布の重みと格闘する様子を眺めていたホークは、毛布が彼女の引きしまったウエストの辺りまでずり落ちた瞬間、激しい欲望に襲われた。そんな自分にいらだちを覚え、彼はいっそう険しい表情になった。
 サラは自分が裸であることにも、起きあがったためにどれほど体がさらされているかにも気づかないまま、目を何度もしばたたいた。頭痛が増し、コーヒーの香りのせいで吐き気がする。彼女は苦しげな声を出して立ちあがろうとしたが、毛布に足をとられて頭を床に打ちつけそうな姿勢で転びそうになった。
 とっさにホークは悪態をついて前に飛びだし、彼女が頭を床にぶつける前に抱きとめた。そして起きあがらせると落ちた毛布をぞんざいに肩にかけてやったが、彼女はそんなことにはまったく意識が向いていない様子だった。吐き気を必死でこらえているようだ。
「お願い」サラは声以外のものが口から出てしまいそうで、そうつぶやくのがやっとだった。「吐きそうなの」男性に連れられて廊下をくだり、彼女は間一髪のところでバスルームにたどりついた。
 無言のまま、サラは閉じた便器のふたの上に力なく座って見知らぬ男性に顔と手をふいてもらった。毛布にくるまれていて動くことができなかったのだが、どういうわけかこうしてやさしく世話してもらうことにあまり違和感を感じなかった。彼女は木製の羽目板にもたれかかって目を閉じ、男性の介抱に身をゆだねた。
 ホークはあたたかな湯が指のあいだを流れるのを感じながら、女性の青白い顔をふいた布をすすぎ、悲しみにゆがんだ彼女の唇に触れたいという衝動と闘った。彼女は泣きたいのをこらえているらしく、さっきから何度もつばをのみこんではこみあげる感情を抑えている様子だ。閉じられたまぶたの隙間から涙が一粒こぼれて頬を伝うと、ホークは指先でそれをぬぐってやった。
 やさしく触れられ、サラが目を開いた。とたんにホークは身動きができなくなり、呼吸をするのも忘れてしまった。ようやくわれに返ると彼は長くいらだちのこもった息を吐きだした。
 この女性の目の色は金色に近い。そう思ったとき、オールド・ウーマンが亡くなる前の晩に感じて以来忘れていた感情がよみがえってきた。恐怖だ。その感情は、また別のいやな記憶をも呼び起こした――心の奥底にしっかりとしまいこんだはずのひとりの美しい女性の裏切りと、彼女と過ごした時間の記憶。さらに今目の前にいる女性がここに来たことへの怒りが加わり、ホークは彼女に引きつけられている自分に憤りを覚え、あわてて後ずさりすると両のこぶしを握りしめた。気づくと手にしていた布の水を床にしたたらせていた。
 サラは壁に背をつけてぐったりともたれかかった。そして自分を救ってくれた男性の顔にはじめて目をやり、安堵した。見つけたわ――マッケンジー・ホークを。ロジャーが持っていた数枚の写真のなかのホークは実物とだいぶ違うが、面影はある。写真ではこの強烈な存在感とエネルギーが表れていなかった。サラはほっとしたのもつかのま、腹部に手をやってふと自分の状態に気づき、息をのんだ。毛布の下は一糸まとわぬ姿だったのだ。男性をにらみつけ唇の内側をかみしめて、怒りのあまり叫びだしそうになるのをやっとの思いでこらえる。許せないわ!
「あなたはマッケンジー・ホークなんでしょう?」値踏みするように無言で立っている男性をたたきたいのを我慢して、サラは尋ねた。
「だとしたらなんなんだ?」ホークはうなるように言った。「ここに来てもなんにもならないぞ。はるばる山をのぼってきたのに無駄足だったな。同じ道をたどって帰ってくれ。数週間前、ぼくは|中央情報局《カンパニー》の依頼を断った。今日も気持は変わらない。きみは凍える思いをしてとんだ損をしたな」


*この続きは製品版でお楽しみください。

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