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フランスから来た恋人

フランスから来た恋人

著: クレア・バクスター 翻訳: 愛甲玲
発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・イマージュ
価格:630円(税込)
10ポイント還元
形式:XMDF形式⇒詳細 
対応端末:パソコン ソニー“Reader”
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著者プロフィール

 クレア・バクスター(CLAIRE BAXTER)
 個人秘書、フランス語の翻訳者、PRコンサルタント、企業の広報マネージャーを経て、ジャーナリズムの学位を取得し、小説を書くという子供のころからの夢を実現させた。今では作家として執筆に励む、すばらしい日々を過ごしている。イングランドのウォリックシャーで育ち、現在はサウスオーストラリアの美しい街、アデレードに夫と二人の息子、二匹の犬とともに暮らす。小説を書いていないときは読書か自宅の裏庭のプールで泳いで過ごし、プールで読書をすることもある。さすがに小説はまだプールで書いたことはないが、ひょっとしたらそうなるかもしれない。

解説

 オーストラリアでワイナリーを経営するベスは、父から引き継いだ地位を失うかもしれない窮地に立たされていた。ワイナリーがフランスの大企業に買収され、大量生産によって利益をあげるよう迫られているのだ。ワインの質にこだわり、新しい銘柄を大事に育ててきたベスにとって、安いぶどうを使って利益をあげるなど考えられないことだった。しかも、その要求を携えてやってきたのがピエール――十年前フランスで、ベスが捧げた愛を無慈悲に踏みにじった男だった。彼はわたしが経営者に向かないと決めつけ、追い出しにかかるだろう。忘れられない恋人との皮肉な再会に、ベスは運命を呪った。

抄録

「大いに楽しんだよ、ありがとう。君はとびきりすばらしかった」
「とびきりすばらしかった?」ベスは笑った。「まあ、落ち着いて。それはほめすぎよ」
「そんなことはない。みんな、そう言っていたよ」
 ベスが目を細くして彼を見ると彼は肩をすくめた。
「少し誇張しただけさ。そろそろ行こうか?」
 ベスがうなずき、ふたりでスタッフに手を振って外に出ると彼が彼女の手を取った。それは自然な仕草に感じられた。こんなに久しぶりなのに不思議だけれど、自然に思えた。
 ホテルに着くころには、ベスはふいに燃え上がった炎を消そうとやっきになっていた。ばかげてるわ。あんなことがあったのに、よく彼に惹かれるわね。
 なぜか“惹かれる”という言葉が今の気持ちにはとうていあてはまらない気がした。ほど遠い。
 正面玄関に近づいたとき、ベスはこんなすてきな夜を終わらせるのが心残りだった。午後にワイナリーをあとにしてから、ずっと昔に戻ったようだった。彼女はそう努め、ピエールも同じように努力をしていたらしい。ふたりともうまく、何も問題はないと自分を納得させたようだ。もしかして、うまくいきすぎたのかもしれない。
「気持ちのいい夜だ」ピエールが言った。「中に入るのがちょっと惜しいね。散歩をしないかい?」
「ええ、いいわね」彼女は身を震わせた。
「寒いかな? 中に入ったほうがいいかい?」
「いいえ、寒くないわ。ただの川風よ」それとわたしが認めることのできない、この思いのせいよ。
 ベスはディナーの成功に酔いながら、木々の電飾を見上げ、ため息をもらした。「すてきね」
「そうだね」一瞬、間があり、彼は言った。「イルミネーションもすてきだ」
 ふたりは角を曲がってなおも歩き、トレンズ川にかかる道路橋に着いた。そこで足を止め、イルミネーションに照らされた噴水が、きらめく水しぶきを夜空に噴き上げる光景を眺めた。
 少しして、ベスは噴水を眺めているのは自分だけだと気がついた。ピエールは彼女を見つめていた。そのまなざしに彼女は驚いた。まるで飢えた男がパンのかたまりをじっと見つめているようだ。
 夜気にさらされた腕に鳥肌が立ち、それが夜の寒さのせいか、そのまなざしに気づいたせいか、彼女にはわからなかった。このまなざしには見覚えがある。彼は口づけを求めている。ベスは不安になった。
 彼は噴水に背を向け、石の橋壁にもたれた。彼女のすぐそばで。ひどく間近で。彼女がまた身震いすると、彼は彼女の腕をやさしくなでた。そのせいで肌は温まり、体内の温度も上がった。
 彼の指の動きが止まって彼女の腕を握り、ぴったりと引き寄せた。彼女は期待の声をもらして目を閉じ、身をゆだねた。過去は、そして未来も、頭になかった。ただピエールの腕の中に戻った感覚に浸り、彼のぬくもりを吸収し、キスを求めて唇を上げた。
 彼は初めはためらいがちに、キスをしているのが信じられないかのように唇に触れた。甘くやさしく。それからややしっかりと、さらに性急になった。それにこたえて体の中で何かが目覚めるのを彼女は感じた。長いあいだ抑えつけてきた欲求が脈打ち、彼女は息をのんだ。
 彼女がもう一度訴えるような声をもらすと、彼はキスをやめて彼女の顔を見つめ、唇を戻して深いキスをした。その新たな親密さに彼女ははっとし、そのなつかしさが怖くなった。興奮を感じるのに、心は安らいでいる。気分がわき立つのに、わが家に帰ったようだった。
 彼は彼女の唇に舌で分け入り、中をさぐった。舌と舌が触れ合い、体が熱くなった。
 彼に強く抱き締められ、薄いシルクドレス一枚を隔てて胸のふくらみが彼の胸に押しつけられるのを感じ、ベスはどきどきした。彼のジャケットに手を差し入れ、引き締まった背中にてのひらを当てる。
 このまま、できるだけ彼とこうしていたい。キスを交わし、互いを味わい、愛し合いたい――。

*この続きは製品版でお楽しみください。

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