マイリストに追加

和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン・イマージュ

ギリシア富豪が愛した薔薇

ギリシア富豪が愛した薔薇


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・イマージュ
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
みんなの評価 未評価
◆レビューを書く

¥0サンプル
XMDFのファイルをご覧になるにはブンコビューア最新版(無料)をインストールしてください。

「書籍ファイルが壊れています」と表示される場合は、ブンコビューアを最新版にアップデートしてください。
購入する


著者プロフィール

 キャンディ・シェパード(Kandy Shepherd)
 女性誌の編集者としての経験を重ね、大手雑誌出版社の編集長として活躍した後、ロマンス小説家に転身した。幼い頃から大の活字好きだった彼女にとってはまさに必然の経歴と言える。オートラリアのシドニー近郊にある小さな農場で、夫と娘、いろいろな動物たちとともに暮らす。一目惚れで結婚した夫とは今も大恋愛中で、ロマンス小説を地でいく生活を送っている。

解説

いまだ私の心は彼の虜……。もう愛はないなんて、言えない。

ヘイリーは離婚届をたずさえ、ギリシアの小島に渡った。そこで開かれる親族の祝いに夫が出席すると聞いたのだ。かつて一目で恋におち、誰よりも深く愛したクリストス。だが、流産という悲劇に見舞われたとき、夫はそばにいなかった。結婚してすぐに就いた華やかな仕事の関係で、彼は妻帯者であることを世間に隠していたのだ。家を飛び出したヘイリーは、2年ものあいだ心の苦しみと闘い、今ようやく別れを決意して、クリストスの前に現れたのだった。ところが彼は、親族の手前、復縁したふりをするよう強いてきた。だめ、この人をまた愛してしまったら、もとの惨めな私に逆戻り……。

■引く手あまたの夫の帰りを、独り待つだけだった妻――そんな自分を変えたくて、もがいた別居期間。新しく生まれ変わったつもりで、離婚を決意したヘイリーは、サインをもらいしだい彼のもとを去るはずが……。ギリシア富豪と悩めるシンデレラの愛の再生物語。

抄録

 ヘイリーは一歩下がって、もうすぐ別れることになる夫を見上げた。ああ、どうしてここまで来てしまったの? クリストスに再会しても問題はないと思っていた。一度は愛し合った仲だから、離婚届を弁護士から渡してもらうより、直接手渡すのが正しいやり方に思えたのだ。
 だが、木の下に立って憂鬱そうに海を眺める黒いコート姿のクリストスを見た瞬間、それが間違いだったとわかった。手に負えないほどの衝動に襲われ、ブーツをはいた足を必死に踏んばらなければならなかった。口の中が乾き、心臓が早鐘を打ち、どうしようもない切望に襲われて、ただ彼を見つめることしかできなかった。
 二十九歳になったクリストスは今でも、これまで出会った中で一番の美男子だ。美しいという言葉は適切ではないかもしれない。だが、ハンサム、魅力的、ゴージャスという形容詞はどれも彼を表現するには十分ではない。百八十八センチの長身と広い肩、引き締まった腰という男性美の極致である体格に加えて、豊かな黒髪となめらかなオリーブ色の肌と目の覚めるような緑の瞳は、単なる美を超えている。
 クリストスなら、新婚旅行先のアテネで見たギリシア神の大理石像のモデルになれただろう。その半年後、ロンドンで週末を過ごしているとき、国際的なモデル事務所にスカウトされた。たくましいギリシア男というイメージを本人は嘲ったが、切実に金を必要としていたため、ヘイリーは試しにやってみるよう説得した。クリストスはしぶしぶ事務所と契約を交わし、一流モデルとしての一歩を踏み出した。
 今思い返すと、そのときからクリストスを失い始めたのだ。彼はしだいにヘイリーの居場所がない世界へと出ていった。そこへ向かうよう後押ししたのは人生最大の過ちだった。雄の孔雀のように華やかに輝かしくなっていくクリストスに対して、ヘイリーは地味な雌の孔雀だった。クリストスはそんな彼女を一人家に残し、ヨーロッパ中のファッションショーのステージを闊歩して、広告やCMの撮影をしながら裕福な人々と親しく付き合った。尋ねるたびに彼は答えた。すべては二人の経済的な安定のためだと。しばらくはそれを信じていたが、やがて疑うようになった。
 ヘイリーは歯ぎしりした。胸にわき上がる切望は、このクリストスに向けられたものではない。二十二歳になったばかりのとき、ダラムのパブで恋に落ちたあのクリストスが恋しいのだ。海外経験を積むため一年休学した彼女は、クラスの大部分の学生より一歳上で、おのずとパブにいた年長の学生たちのグループが気になった。クリストスは留学生仲間と笑っていた。オリーブ色の肌と輝く白い歯、鮮やかな緑の瞳に宿るユーモアがヘイリーを魅了した。二人の視線が合い、しばし他のすべてが消えた。店内の人声やグラスの音が遠のき、二人は互いの目を見つめて魂を通わせた。少なくともそんなふうに感じられた。それから彼はいぶかしげに眉根を寄せると、友人たちを残してヘイリーのほうへ近づいてきた。
 あのときもクリストスは感情を隠すのがうまかった。ヘイリーは彼が自分と同じくらい即座に恋に落ちたことを何日も知らずにいた。だが、そんな彼の特質は思いがけず舞いこんだ新しい仕事の役に立った。クリストスは一流モデルとして、求められた役柄にすぐに入りこめた。タキシードを着れば、クールで洗練された紳士になり、ヨットに乗れば、たくましいスポーツマンになった。ヨーロッパ中の広告板でいつもそこにふさわしい姿を見せていた。
 あまりに仮面をかぶるのがうまくなり、しまいにヘイリーは本当の夫を見たことがあるのだろうかと思い始めた。しかし今、“離婚”という言葉でその仮面がはがれ、むき出しの苦悩に陰った目を見て、ヘイリーははっとした。ただ、それはすぐに消え去った。気のせいだったのかもしれない。
「どこで何をしていたかは何も語らず、口にするのは離婚の要求だけか」強いて感情をこめない口調でクリストスが言った。だが、こわばった顎や暗いまなざしが見かけほど冷静でないことを物語っている。
 ヘイリーは唾をのみこんだ。「驚くようなことではないでしょう。もう二年半も別居しているんだから。結婚を解消する理由としては十分すぎるわ」
「きみが去った二年後に弁護士に相談したら、同じことを言われたよ。別居は結婚生活が破綻した証拠だから、それだけで十分だそうだ」
 クリストスの言葉は厳しく断固としていた。付き合い始めの頃の情熱や興奮は夢と消えた。ただ、今でも彼を見れば、なぜ家族に逆らって結婚し、自分の夢をあきらめてまで彼に夢を追わせようとしたのか思い出す。でも、もう終わったことだ。強くならなければならない。体の相性がよくて楽しいだけでは、生涯続く関係を築くには十分ではないのだ。それを二年半前、ミラノでのつらい夜に思い知った。言葉の通じない異国の病院で一人流産の痛みと苦悩に耐え、失ったものを思ってとめどなく涙を流した。
 ヘイリーは咳払いをした。何度も練習したせりふなのに、簡単には出てこなかった。「自由になりたいの。いつかまた結婚するかもしれないし」
 夫の唇が引き結ばれた。「他に誰かいるのか?」


*この続きは製品版でお楽しみください。

本の情報

形式

【XMDF形式】

XMDFデータをご覧いただくためには専用のブラウザソフト・ブンコビューア最新版(無料)が必要になります。ブンコビューアは【ここ】から無料でダウンロードできます。
詳しくはXMDF形式の詳細説明をご覧下さい。

対応端末欄に「ソニー“Reader”」と表示されている作品については、eBook Transfer for Readerで“Reader”にファイルを転送する事で閲覧できます。
海外版の“Reader”は対応しておりませんので予めご了承くださいませ。

【MEDUSA形式】
MEDUSA形式の作品はブラウザですぐに開いて読むことができます。パソコン、スマートフォン、タブレット端末などで読むことができます。作品はクラウド上に保存されているためファイル管理の手間は必要ありません。閲覧開始時はネットに接続している必要があります。

詳細はMEDUSA形式の詳細説明をご覧下さい。