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愛の金曜日

愛の金曜日


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・セレクト
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ジェシカ・スティール(Jessica Steele)
 イングランド中部に、七人兄妹の六番目に生まれた。現在はウースターシャーの風光明媚で文化財に富んだ村に夫とともに住んでいる。公務員として働きながら夜の時間を執筆にあてていたが、夫の励ましを得てフルタイムの作家となった。一番の趣味は旅行で、メキシコ、中国、香港……と、取材をかねてさまざまな国を訪れている。

解説

父の死後、強欲な継母に全財産を奪われ、途方にくれていたベヴィン。風邪をおしてアルバイトに出かけたある日、高熱を出して倒れ、居合わせた男性ジャーヴィスの家に運ばれた。数日後、快復したベヴィンはお礼に手料理をふるまうことに。聞けば彼は大企業の社長で、もうすぐ迎える誕生日までに結婚しないと遺産相続権を失うのだという。しばらく夕食を作ってほしいと彼に頼まれ、ベヴィンは胸を躍らせた。ところが、新聞の衝撃的な記事に気づいて、言葉を失う。ジャーヴィスが婚約!お相手は……ベヴィン・ペンバートン?「こうなったら、ベヴィン、君に婚約者役を演じてもらうしかない」

■“君となら結婚してもいいな”――独身貴族の彼の思わせぶりなささやきにどぎまぎするヒロイン。一緒に過ごすうちにどんどん彼を好きになっていくのが切なくて……。かわいらしいヒロインを描くのが得意なジェシカ・スティールの、とびきりピュアな恋物語。

抄録

「君はいい日に来たよ。毎週金曜日にすばらしく有能な婦人が来て、きれいに掃除をしてくれるんだ。それからあとは、次の金曜日まで破滅の一途をたどるというわけさ」
 それだけ言うと、彼はまた出ていってしまった。だんだん体が温まってきたので、スカーフを取り、コートのボタンをはずした。咳が止まってほっとしたいところだが、うれしがってばかりはいられない。どうせまた始まるのだ。いちばん始まってほしくないときに。
 彼女はカウチの肘かけを思いつめたような目で見た。あそこに疲れた頭を乗せて休めたらどんなにいいだろう。これが自分の家ならそうするのに。だけどここは私の家じゃない。それに今ではもう、自分の家にもやすらぎはないのだ。
 涙がにじんでくるのを、まばたきで振り払う。まったく知らない人の家に誘われるままに入り込んだうえに、気弱になって、今にも泣き出してしまいそうになるなんて、どうかしてるわ。
 なんてことかしら。このインフルエンザは私から常識さえも奪うのね。ベヴィンは目を閉じた。頭がだんだんとカウチの肘かけに吸い寄せられていく。
「スープを作ってきたよ」まだ名前も知らない人の声がして──もっとも、不思議なことに彼はもう見知らぬ人には思えなかったが──ベヴィンははっと体を起こした。「疲れきってるんだね」彼は同情するように言ってスープをベヴィンの膝に置いた。「これを食べたら少し元気が出るよ」
「本当にあなたが作ったの?」信じられない気持で、深皿にたっぷり入ったおいしそうなマリガトーニ・スープを口にする。
「正確に言えばそうじゃないな。でも缶を開けたのは僕だ」
 笑う元気が残っているはずもなかったのに、ベヴィンは思わず笑ってしまった。この人の何げないしぐさやことばに反応しないではいられない。見上げると、彼の視線がベヴィンのほほ笑んでいる口もとに注がれていた。目が合ったが、彼は目をそらそうとはしなかった。
「よかった。やっと顔色が少しもとに戻ったよ」彼が気さくに言った。
「ずいぶん体が温まったわ。こんなにおいしいスープを飲んだのは久しぶりよ」
「シェフに伝えよう」彼はトレイを台所に運んでいってまた戻ってきた。「外に出たときコートのありがたみを感じたかったら、ここでは脱いでおいたほうがいいんじゃないか?」
 そうだわ。そろそろこの人によくお礼を言って帰らなければ。でもここはとても居心地がいい。私の住んでいる家は少しも楽しくないのに。だからベヴィンは、そろそろおいとましますと言おうとして口を開いたのに、実際には「ありがとう」と言って、コートを脱いでしまった。
 こんなことをしてはいけない。彼女の中の厳しくしつけられて良識をわきまえた部分がそうささやきかけている間に、背の高い金髪の彼がコートをクロークルームにかけて戻ってきた。コートを脱いでもまだ暖かい。ウールのズボンにブラウスとセーターを着込んでいるのだから当然だろう。
「あなたのお食事は?」そう尋ねてから、はっとした。「ごめんなさい、今夜はきっとデートの約束か何かがあるんでしょう? それで私が帰るのを待っていらっしゃるのね」ベヴィンはすばらしく座り心地のいいカウチから立ち上がろうとして、またひどく咳き込んでしまった。
「ほらほら!」彼は近づいてきて、ベヴィンを肘かけに寄りかからせるようにして座らせた。「ゆっくりして。帰ってほしければそう言うから、心配しなくていい。そのくらい、ちゃんと言うさ」
 確かにそういう人なのだろう。やさしくて親切だけど、必要な場合はとても強気になれるのだ。
 ベヴィンがまた咳き込んでいると、彼が水の入ったコップを持ってきた。ベヴィンが一口飲むのを待って、彼はコップをそばの小さなテーブルに置き、向かいにある同じように立派な布張りの安楽椅子に座った。
「今夜は何も予定がないから安心したまえ。ミセス・アンダーヒルが電子レンジに入れておいてくれたキャセロールを食べて、書斎で仕事の残りを片づける以外は」
「本当に?」急にうれしくなって、ベヴィンはほほ笑んだ。
「行儀よくしてたら、僕のキャセロールを分けてやってもいいよ」
 すっかり打ちひしがれていたのに、思わず笑いが込み上げてくる。「あなたの名前をまだ知らないわ」返事をする代わりにベヴィンは言った。
「ジャーヴィス・デヴィリアズ」彼はすぐに答え、少し首をかしげて目で同じ質問を返した。
「ベヴィン・ペンバートン」彼女も答えた。
「はじめまして、ベヴィン・ペンバートン」ジャーヴィスは礼儀正しく言い、彼女はまた笑い出したくなった。こんなに楽しい気分になるのはジャーヴィスの持っている雰囲気のせい? それとも人間というのはそう長く落ち込んでいられないのかしら? 「だいぶ顔色がよくなってきたけど、まだまだ元気というのとはほど遠い。足をカウチの上に乗せたらどうだい?」
 そうしたらきっと天国みたいだろう。「でも、靴をはいてるから」彼女はつつましく答えた。その答えがジャーヴィスをおもしろがらせたようだ。
「君はいつもそんなに行儀がいいの?」彼は立ち上がってそばに来た。
「ええ、たいてい」ベヴィンが答えるのと同時に、ジャーヴィスは彼女の足を片方ずつ持ち上げて靴を脱がせた。ぶかぶかの男物のソックスにちらりと目をやりながら、彼女をカウチに横たわらせる。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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