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サルド家の兄妹【ハーレクイン・セレクト版】

サルド家の兄妹【ハーレクイン・セレクト版】


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・セレクト
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ヴァイオレット・ウィンズピア(Violet Winspear)
 ロマンスの草創期に活躍した英国人作家。第二次大戦中、十四歳の頃から労働を強いられ、苦しい生活の中から“現実が厳しければ厳しいほど人は美しい夢を見る”という確信を得て、ロマンス小説を書き始める。三十二歳で作家デビューを果たし、三十余年の作家人生で約七十作を上梓。生涯独身を通し、一九九八年に永眠するも、ロマンスの王道を貫く作風が今もファンに支持されている。

解説

スペインの名門貴族リック・デ・サルドとの再会を前に、アンジーの心は揺れていた。身寄りのない彼女は10代のころ、よく親友に招待され、美しいスペインの島で休暇を過ごした――親友の兄リックへの恋心を胸に秘めて。その後、看護師となった彼女のもとに、しかし先週、痛ましい報せがもたらされたのだ。リックが事件に巻き込まれ、失明したと。彼の役に立ちたい。ただその一心で、アンジーは故郷へ飛んだ。だがそこにいたのは、心を荒ませた別人のようなリックだった。

■クラシックで上品な世界観と、知的で陰のあるヒーロー像が光る、大スター作家ヴァイオレット・ウィンズピア。ハーレクイン黎明期の旧作を楽しみたいウィンズピア・ファンの方には、伝説のスター作家イヴォンヌ・ウィタルの作品もおすすめです。
*本書は、ハーレクイン文庫から既に配信されている作品のハーレクイン・セレクト版となります。 ご購入の際は十分ご注意ください。

抄録

「あなたはお父さまに似てらっしゃるわ。だから、盲目の状態がハンディキャップになったままにしておくはずがありません……」
「ハンディキャップ以外のなんだと言うんだ? 四方を壁に閉ざされて出口が見つからないのと同じなのに……そのうえ、ぼくは目が見えないだけじゃない。そうだろう? 医者は、ぼくの頭にメスを入れたんだからね。もしぼくが、とつぜん暴れだして、ものをこわしはじめたら、きみはどうする? ぼくが頭がおかしくなったら、きみが拘束服を着せてくれるってわけなのか?」
「そんなこと、おきっこありません! そんなこと言うのは、やめてちょうだい!」
「真実を聞きたくはないってわけか? いつの日か、ふたりっきりのとき、ぼくの手がきみの喉にかかっているってこともありうるんだぞ。頭がおかしくなると、自分を助けようとしている相手を襲うものらしいじゃないか?」
「とほうもないばかげたことをおっしゃって、わたしをおびえさせようとしても、むだよ」
 思わずこめかみの傷あとを見てしまった自分の目の色が、リックに見えなくて助かったと思う。もしメスを入れることさえできない部分に、爆弾の破片が残っていたとしたら……しかも、リックは、はっきりその可能性に気づいている。
「おびえているのは、ぼくのほうさ、エンジェル」
 シガリロの灰が、リックの黒いセーターに落ちた。指が焦げそうになっていることに気づいて、アンジーは吸いさしをとって籐のテーブルの上の灰皿にすてる。
「ありがとう《グラシアス》、お嬢さん《ミ・ムチヤーチヤ》」
 ぱっとリックの手がアンジーの手首をとらえ、ぐいっと引きよせる。アンジーはよろめき、つぎの瞬間には、リックのひざの上に抱かれていた。嘲笑うような荒々しい表情だった。
「お願いよ、こんなこと……」
「盲人がこわいのか?」手が体を伝ってのぼり、喉にかかる。「震えているのがわかるぞ、エンジェル。いったいなんだってバヤルター島にきた? 好奇心か? まちがった義理人情からか? それとも、ロンドンでの仕事に飽きたのか?」
「残酷なことおっしゃるのね、リック!」
 のがれようとするけれど、力ではリックにかなうはずがなかった。そのうえ、こんなに体をよせあっていては、逆らう力も出ない。傷あとや視力を失った目にキスしたいと願う自分を抑えるだけで精いっぱいだった。
「キスしてくれれば、すこしは優しくなるかもしれないぞ。え?」
 いきなり、荒々しく、リックはアンジーの唇に唇を重ねる。ようしゃのないキスはいつまでもつづき、息が苦しくなる。と、冷酷な笑いとともに、リックはアンジーを押しのけた。アンジーはよろめき、ちりちりする唇に手をあてたまま、とほうに暮れてリックを見つめるばかりだった。
「これでわかったろう、きみがここにいると言い張っていると、どんな目に遭うか」
 リックの顔には怒りと、苦しみと、目が見える者への憎しみがあった。見えない目に地獄の炎があった――その地獄の火を、アンジーはわかちあおうと心に誓っていた。
「扱いにくい患者さんを相手にするのは、これがはじめてじゃありませんわ」
「扱いにくいだと? いやに大きな口をきくじゃないか!」
「強情で、手に負えなくて、反抗的な患者さんだって、相手にしてきたんです」
「ぼくをおとなしくさせられるとでも思っているのか?」
「虎をおとなしくさせることはできませんけど、なんとか扱えるものよ」
「鞭を使ってか? 看護師がぼくに鞭をふりあげている図はなかなか刺激的だが、手で額をなでてくれて、嘘の保証でもしてくれるほうがましだな。きっといつか、目を覚ましたら、目が見えるようになっていますってやつさ。苦い真実を言う勇気があるところを証明してみろ、エンジェル。いままで誰ひとり口にする勇気のなかったことばを言ってみろ……ぼくはもう、一生、暗闇のなかで暮らすしかないって」
「わたし、まだ、ドクター・ロマルドのお話をうかがっていませんから、くわしいことは知りません。でも、このことだけは知ってます。信仰と希望を失わないかぎり、信じられないようなことだっておきるものです。それに盲目よりもっと不幸な病気だってあるし……」
「そうとも、狂気ってやつがある。ひとを獣にも変えることさえできるんだからな。きみはさっき、ぼくを虎にたとえたが……」
「ええ。でもそれは……」
 リックは盲目を受け入れさせようとするあらゆる試みに抵抗するにちがいない。けれども、その気にさえなれば、リックには盲目と闘う勇気がそなわっていることがわかっている。けれども、暗闇よりも恐ろしい事態が、リックの心の片隅にわだかまっているのだった。
 リックは、狂気よりも死を選ぼうとするだろう……そしてわたしには、もしそんなことになったら、リックの願いをかなえてあげるだけの愛がある。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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