マイリストに追加

和書>小説・ノンフィクション恋愛小説ロマンス小説

ハイランドの侯爵の花嫁

ハイランドの侯爵の花嫁


発行: ハーレクイン
シリーズ: MIRA文庫
価格:800pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
みんなの評価 未評価
◆レビューを書く

¥0サンプル
XMDFのファイルをご覧になるにはブンコビューア最新版(無料)をインストールしてください。

「書籍ファイルが壊れています」と表示される場合は、ブンコビューアを最新版にアップデートしてください。
購入する


解説

さえない令嬢が愛したのは、英国一の美女の婚約者――J・リンジーが19世紀の社交界に奏でる、叶わぬ恋のメロディー。

サブリナ・ランバートは、社交界の誰もが認める壁の花だ。とうに結婚をあきらめ、ひとりで生きていく覚悟を決めた彼女は、とある青年に出会う。燃えるような赤毛、息をのむほどハンサムな彼は、侯爵位を継ぐために英国へとやってきたハイランダー。ぱっとしない顔立ちではなく、心そのものを見てくれる彼に、サブリナは強く惹かれていく。しかし彼は、数日後に英国一の美女と結婚する運命にあった。完璧な二人の間に、平凡な自分が入っていけるはずもない――サブリナは切ない想いを胸に秘め、いい友人として彼に接するが……。

抄録

「ねえ、大丈夫?」
 男性はようやくサブリナに向き直った。「ああ、そこにいたんだね。大丈夫か、とぼくから尋ねるべきだったのに。一瞬、きみがどこに行ったのかわからなくなったんだ」
 サブリナは彼に笑みを向けた。軽いスコットランドなまりが耳に心地いい。しかも彼は低い声で歌うようなしゃべり方をする。それに目は濃い青色だ。その瞳でじっと見つめられ、なんだか落ち着かない。
「こちらは大丈夫よ」
「すまない。あいつとはなかなかうまくやっていけなくてね」男性は馬をにらみつけた。「だけど、ふだんから馬ばかりのっているわけじゃない。距離が短ければ歩くほうが好きなんだ」
 なんていう偶然だろう。サブリナも同じだった。彼女も馬にはのれるし、乗馬の腕前はなかなかのものだ。子どもの頃から当然のように馬ののり方を教わってきた。ただ、馬に横のりするのは落ち着かない。しかも丈夫な両脚があるため、なるべく歩くようにしている。
 サブリナは尋ねた。「今からサマーズ・グレードへ向かうところなの?」
 男性は丘の下にある大邸宅を見おろし、顔をしかめた。「いや、気分転換のために外へ出ただけだ。馬にのれば怒りを発散できるかと思ったが、愚かだったよ。乗馬したら落ち着くどころか、さらにいらだちをかき立てられることに気づくべきだった」
 ダンカンは最初よりも熱心に、含み笑いをしている女性を見つめた。
 長い茶色の髪があちこちにはねている。礼儀正しい髪型とは言えない。けれどダンカンはそんな彼女を魅力的だと感じた。小柄だが、首元からつま先まである長いコート――ボタンが二つ取れている――の上からでも胸が豊かなのがわかる。おまけに、彼女はダンカンが見たこともないような美しい薄紫色の瞳をしていた。
 ある考えがひらめき、ダンカンはとっさに口にした。「きみがレディ・オフィーリアか?」
「いいえ、違うわ。きっと、あなたは噂の“ハイランドの野蛮人”よね?」
 どういうわけか、ダンカンは腹が立たなかった。きっと、彼女が瞳を愛らしく輝かせながらそう言ったからだろう。この女性は“野蛮人”という言葉を面白がっているようだ。
 それに野蛮人と言われてもしかたがない。ふだん冬には身につけることのないキルトを穿いているのは、ネヴィルに“英国よりもスコットランドのほうが好きだ”と見せつけるためだ。しかし他人の目には、英国のこれしきの寒さには影響されない野蛮人に見えてもおかしくはない。いつしかダンカンはこの状況を楽しんでいた。
 そこでユーモアを込めて答えた。「ああ、ぼくがそうだ」
「あなたはわたしが思っていたほど年を取っていないわ」
 ダンカンは赤褐色の眉を片方だけ吊りあげた。「何歳だと思っていたんだ?」
「少なくとも四十歳以上だと思っていたの」
「四十歳!」ダンカンは声を張りあげた。向こうの笑い声につられそうになったが、ダンカンはどうにかこらえ、手厳しい表情をしてみせた。「ぼくをからかっているんだな?」
「そう思う?」
「ぼくをからかう勇気のあるやつはめったにいないんだ」
 彼女は笑みを向けた。「あなたが噂どおりの野蛮人だとは思えないわ。わたしも噂どおりの“生きる幽霊”ではないもの。噂や醜聞って変なものばかりよね。事実であることがめったにないのに、正真正銘の真実として受けとめられてしまうんだもの」
「ということは、ネヴィルも恐ろしい野蛮人がやってくるのを期待しているんだね?」
 彼女はまばたきをしてダンカンを見ると、再び笑い出した。「いいえ、そうは思わないわ。だって彼はあなたのおじい様だし、あなたをよく知っているはずだもの。そういう噂をしているのは、まだあなたに会ったことがないのに、あなたが英国へやってくるのを知っていて、ハイランドに対してある考えを抱いている人たち。これまで英国にやってきた数が少なすぎるせいで、今ではスコットランドのハイランダーも礼儀正しい振る舞いをするすばらしい人たちばかりだと証明されていないのよ」
 うなり声をあげそうになったが、ダンカンは口を引き結んだ。“祖父なら孫のことをよく知っているはずだ”という部分は聞いていてつらかった。とはいえ、そのほかの部分は非常に興味深い。さらに楽な気分になったダンカンはあえて反論しなかった。
「そうすべきなのかな?」
「何が?」
「礼儀正しい振る舞いをすべきなんだろうか?」
 彼女は慎重な様子でしばし考え込み、口を開いた。「もちろん、ハイランドが英国と同じくらい礼儀を重んじているとは思えないわ。けれど、本当の意味での“野蛮人”ばかりの土地にも思えないの。だってあなたはどう見ても、礼儀を知っているもの。それとも、戦いのときに使う化粧絵の具を忘れてきてしまったの?」
 ダンカンは大声で笑い出した。あまりのおかしさに体を折り曲げ、涙をぬぐわずにはいられない。
 ところが少し笑いがおさまると、ダンカンは気づいた。彼女は本気でハイランダーが戦いのときに化粧絵の具を使うと考えていたのだ。
「そうなのね? 忘れてきたのね?」
 ダンカンは地面に倒れ込み、また大声で笑い出した。ようやく笑い終えたときには、すっかりふだんの自分を取り戻していた。少なくともその瞬間、皮肉な気分は消えていた。ふと見ると、彼女がいたずらっぽい笑みを浮かべている。やはりダンカンをからかっていたのだ。
 なんて楽しい女性だろう。まさか、英国にこんな女性がいるとは思わなかった。もしほかの女性たちも彼女のようならば、そのうちの一人と結婚するのも悪くないかもしれない。


*この続きは製品版でお楽しみください。

本の情報

形式

【XMDF形式】

XMDFデータをご覧いただくためには専用のブラウザソフト・ブンコビューア最新版(無料)が必要になります。ブンコビューアは【ここ】から無料でダウンロードできます。
詳しくはXMDF形式の詳細説明をご覧下さい。

対応端末欄に「ソニー“Reader”」と表示されている作品については、eBook Transfer for Readerで“Reader”にファイルを転送する事で閲覧できます。
海外版の“Reader”は対応しておりませんので予めご了承くださいませ。

【MEDUSA形式】
MEDUSA形式の作品はブラウザですぐに開いて読むことができます。パソコン、スマートフォン、タブレット端末などで読むことができます。作品はクラウド上に保存されているためファイル管理の手間は必要ありません。閲覧開始時はネットに接続している必要があります。

詳細はMEDUSA形式の詳細説明をご覧下さい。