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和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン・イマージュ

伯爵と古城の乙女

伯爵と古城の乙女


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・イマージュ
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

ジェシカ・ギルモア(Jessica Gilmore)
イギリスのヨークに夫と娘、ふわふわの犬、犬嫌いの猫2匹、金魚と共に暮らし、慈善活動や犬の散歩などに勤しんでいる。空想するのが趣味でハッピーエンドをこよなく愛する彼女は、ロマンス小説家になれた幸運が今でも信じられないという。

解説

愛を忘れた伯爵との恋は、幻で終わる切ない運命……。

マディは10カ月前からイタリアの湖畔に立つ古城で働いている。あるとき、湖を半裸で泳ぐ男性にでくわした。たくましい体に思わず目が釘づけになっていると、それに気づいた相手から猛獣のごとく鋭い視線を向けられ、まるで何もかも見透かされているような気持ちになった。恥ずかしさでいっぱいの彼女にさらに追い打ちをかけるように、湖から上がってきた彼は、「眺めを楽しんだか?」ときいてきた。いたたまれなくなって城へ戻ったマディを、予期せぬ不運が襲う――めったに帰館しない城主のファルコーネ伯爵として紹介されたのが、あろうことか、湖で泳いでいたあの尊大な男性だったのだ!

■一瞬にしてマディの心を奪った魅惑の城主は、5年前に妻を失った憂愁の伯爵でした。そんな彼にうるさく再婚を勧める姉をはぐらかすため、彼はマディに1週間だけ恋人役を演じろと言ってきます。けれど同時に、本物の愛に発展する可能性はないと釘を刺され……。

抄録

あともうちょっとだけゆっくりしよう。マディは険しい山々を振り返って、大きく伸びをした。目を閉じ、降りそそぐ日差しを全身に浴びる。やがて村の教会の鐘が哀愁に満ちた音を響かせて時間を告げ、マディは仕方なく目を開けた。そして、その場に凍りついた。
湖の反対側の岸で男性が服を脱いでいる。
大きな湖ではないから、こちらと向こう岸の距離は三百メートルもない。マディの位置からは、小さな入江とそこに立つ男性の姿がはっきり見えた。男性は身につけているものを几帳面に次々と取り去っていく。靴に靴下、シャツ、スラックス。そして、ついに水着一枚の姿になった。
目をそらしなさい。良識がマディに命じた。湖で泳ぐのはあの人の自由よ。それより、あなたは早く仕事に戻らなくては。することがたくさんあるのだから。男の人の裸をじろじろ見ている暇はないはずよ。
それなのに、マディは男性から目をそらすことができなかった。
背が高く、均整の取れた体つきだ。筋肉質の長い脚。引きしまった上半身。広くてたくましい肩。黒い髪はくしゃくしゃに乱れている。ただ、顔はよく見えなかった。突然、マディの中に熱い欲望がこみあげてきた。こんなにも強烈な欲求を感じるのは、本当に久しぶりのことだ。もしかしたら、初めてかもしれない。
「落ちぶれたものね。知らない人の裸から目が離せないなんて」マディはつぶやき、踵を返した。「確かにこの自分探しの旅は、もう一度恋人を見つける旅でもあるわ。恋がしたいのよね?しかも相手から熱烈に愛されたい。でも、裸を盗み見るのはだめよ」
とはいえ、かつてマディに本物の恋人がいたとは言えなかった。なりゆきでセオドア・ウィロビーと婚約する前にも、何人かの男性とほんの短期間だけつき合ったことはある。相手はマディの家柄にふさわしい良家の子息ばかりだったが、結局、いずれの場合も退屈で死にそうになって、彼女のほうから交際を終わらせた。婚約したセオドアに、震えるような欲望を感じたことは一度もない。実を言えば、セオドアのほうもマディに熱い気持ちを抱いていたわけではなかった。婚約してからの二年間、ほとんど会わずにいても平気だったのも不思議はない。
最後に一度だけと思い、マディは湖を振り返った。そして、その場から動けなくなった。半裸の男性がこちらを見ていた。湖の端と端にいても、相手が獲物を狙う猛獣のように鋭いまなざしを向けているのがわかる。マディの体温がいっきに上がった。男性の視線にからめ取られて、自分自身も同じように半裸の姿で立ちつくしているような気がする。口の中がからからになり、腕や脚が重く感じられた。まるでメドゥーサの男版にでくわし、ひとにらみで石像に変えられてしまったかのようだ。
マディはなんとか意志の力をかき集め、もう一度踵を返すと、背中に感じる視線に素知らぬふりをして歩きだした。少し離れたところでようやく勇気を出して振り返ったとき、男性は湖の水を切り裂くような勢いで泳いでいた。
マディは立ちどまって、男性が泳ぐ姿を眺めた。彼が誰なのかはわからない。だが、心騒ぐこの出会いと、セオドアの結婚式の招待状が相まって、何かの予兆のように感じられた。わたしが結婚を取りやめにした瞬間から、セオドアは前を向いて歩きはじめたんだわ。わたしもそろそろ古い殻を脱ぎ捨てていいころよ。フィッツロイ家の忠実な娘だとか、“逃げた花嫁”だとかいう殻を脱ぎ、自由になろう。そして、生活のために働く喜びといっしょに、恋の喜びも見つけたい。
イタリアへ来て、マディは自分自身に誓った。自立した生活を送って、人生を満喫しようと。そのためには、物陰に隠れていてはいけない。
もちろん、こんな山間の小さな村に、そうそう恋のチャンスがあるはずはなかった。有名なガルダ湖周辺の観光地はここから二十キロ近くも離れている。ヴェローナやミラノはさらに遠い。
物思いに沈んでいたせいで、曲がるべき角を曲がらなかったことに気づいた。いま向かっているのは城の裏手にあるスタッフ用の出入口ではなく、巨大な正門のほうだ。マディは足を止めた。どうしよう。来た道を戻ってスタッフ用の出入口へ向かうと、さらに時間がかかってしまう。
後戻りせず、そのまま進むことにした。この道は、さっき謎の男性がいた小さな入江のわきを通る。マディは前だけを見てまっすぐ歩きつづけたが、ふと入江に視線を向けた。
誰もいなかった。脱ぎ捨てられた服が消え、泳ぐ人の姿もない。小さな入江がひっそりとそこにあるだけだ。
胸が締めつけられた。別にがっかりしたわけじゃないわ。
マディは下を向いて足早に歩きだした。ところが、何か固いものと正面からぶつかり、はっと息をのんで立ちどまった。その何かが驚きの声を漏らす。真っ赤になったマディは謝ろうとして顔を上げたが、鋼のような青い瞳をのぞきこんだ瞬間、謝罪の言葉は吹き飛んだ。青い瞳はまっすぐにこちらを見つめている。
「トロヴィ・ベッラ・ラ・ヴェドゥータ?」相手が探るようなまなざしで尋ねた。
マディはふだん流暢なイタリア語を話すが、その瞬間、頭にはひとつの単語も浮かばなかった。「な、なんですって?」彼女は思わず英語できき返した。
男性がすぐさま完璧な英語に切り換えた。「“眺めを楽しんだかい?”ときいたんだ」
ああ、そんな。運が悪いにもほどがあるわ。マディは一歩下がり、あらためて相手を確かめた。長身で、白い麻のシャツを着ていて、黒い髪はまだ湿っている……。
さっきそこの入江で泳いでいた人だわ。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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