マイリストに追加

和書>小説・ノンフィクションSF・ファンタジー小説日本SF小説

小松左京短編全集【1】──地には平和を

小松左京短編全集【1】──地には平和を

著: 小松左京
発行: イオ
シリーズ: 小松左京短編全集
価格:756円(税込)
10ポイント還元
形式:XMDF形式⇒詳細 
対応端末:パソコン ソニー“Reader”
みんなの評価 未評価
◆レビューを書く

¥0サンプル
XMDFのファイルをご覧になるにはブンコビューア最新版(無料)をインストールしてください。

「書籍ファイルが壊れています」と表示される場合は、ブンコビューアを最新版にアップデートしてください。
購入する


著者プロフィール

 小松 左京(こまつ さきょう)
 1931年1月28日、大阪生まれ。京都大学文学部卒。経済誌記者、町工場の工場長、漫才の台本作家など経て、「地には平和を」でデビュー。以後、「日本アパッチ族」「復活の日」「継ぐのは誰か?」「果しなき流れの果に」など話題作を次々と発表、日本SF界の中心的存在となる。日本推理作家賞を受賞した「日本沈没」は空前のベストセラーとなった。前記の長編にくわえて、短編集、ショートショート、評論、エッセイ、ルポルタージュなど幅広い分野で活躍している。
 「BookPark」にてオンデマンド版「小松左京全集」を発売しています。詳しくは http://shop.bookpark.ne.jp/sakyo/ をご覧ください。

解説

 平凡な日常の後ろにある非日常を描いたパラレルミステリー『蟻の園』や「もしもあの日第二次世界大戦が終わっていなかったら…?」といったタイム・パラドックスを描く表題作『地には平和を』など、小松左京のあまりにも有名な作品を集めた短編集! これ一冊で、SFの巨匠・小松ワールドが堪能できる!
 ※ 短編ひとつずつでもお買い上げいただけます。それぞれの内容は同じものですのでご注意ください。

目次

蟻《あり》の園
地には平和を
お茶漬の味
終わりなき負債
紙か髪か
失格者
時の顔

抄録

 八月十日頃から、戦争に負けたと言う噂がとんだ。工場では中学生達は七対三の割合で二つに分れた。そして二、三日たって、敗戦論者達は残りの連中にぶん殴られた。長崎が恐ろしい新兵器におそわれたと言う事はみんな知っていた。新聞が強力爆弾の事をまわりくどい表現で書いていたからだ。その前に広島にも同型の爆弾が落ちたが、不発に終り、陸軍は捕獲せる爆弾を目下研究中とも書いてあった。
 八月十四日は空襲がなかった。しかし彼等はいつものように寄宿舎からカンカン照りの道を歩いて空襲で半分ぶっこわれた工場へ、特殊兵器を作りに出かけた。彼等の作っているのが特殊兵器だと言う事が、彼等にほこりを持たせた。それが人間魚雷らしいということ以外はわからなかったが――その日、翌日正午に陛下の重大放送があると言う噂が流れた。新聞とラジオがその事を裏づけ、教師が勿体《もったい》ぶった口調で訓話した。ラジオは戦況ニュースを流さなかった。八月十五日は、相変らず空襲はなく、暑い日だった。正午前に彼等は工場の中の大型定盤《じょうばん》――下が防空壕《ぼうくうごう》になっていた。命のほどは保証されないが――の前に集まった。ラジオはぶつぶつと調子の悪い音をたてた。正午二分過ぎ、突然アナウンスが言った。
 「正午より放送予定の陛下(この言葉が出るとみんなカチンと踵《かかと》を合せた)の玉音放送は都合により、十四時にのびました。なお重大ニュースがはいりますから、このままラジオを切らずにお待ち下さい」
 彼等は待った。ラジオは三分近く沈黙し、又ぶつぶつ言った。三分後、レコードで『切りこみ隊の歌』が流れ出した。命一つと引きかえに、千人万人斬ってやる……。続いて学徒出陣の歌、必勝歌。
 「お待たせいたしました。陛下の玉音、重大発表ともに十四時まで延期されました。十四時にもう一度ラジオの前にお集り下さい」
 久方ぶりに緊張がたかまり、午後は仕事が手につかなかった。みんな重大放送の内容について勝手な予想を喋り合った。教師は殴り歩いたが効果はなかった。第一仕事をしたって無駄《むだ》なようなものだ。組立て工場がやられてしまい、第二旋盤工場は瓦礫《がれき》の山だ。鋳物工場からはどんどん鋳物が出てくるが、第一旋盤工場には十二尺旋盤や、正面盤、ミーリングがないから、小物しか処理出来ない。又処理した所で持って行く組立て工場がなくて、外に積み上げておくだけである。
 午後二時の放送は更に三時にのびた。そして三時に、突如「海行かば」が始まった。みんなすぐその妙な所に気がついた。玉音放送なら当然君が代をやる筈だ。
 「お待たせいたしました。陛下の放送は都合により取りやめになりました。かわって臨時ニュースを申し上げます。本日未明、重大会議開催中の閣僚及び重臣の多数は、不測の事故により死亡及び重傷をおいました。死亡者の氏名を申し上げます。内閣総理大臣鈴木貫太郎《すずきかんたろう》大将……」
 「しまった」と小さく呟く声があった。ふりかえると青白い徴用工の四十男だった。米内《よない》海相、木戸《きど》内府、下村《しもむら》情報局総裁、その他大臣多数死亡、又は重傷。
 「なおこの会議には陛下も御臨席あらせられましたが、神助により、玉体には何のおさしさわりもございませんでした」
 みんながちょっとどよめいた。おっちょこちょいが万歳を叫ぶ。十数名がそれに続いたが、妙に元気なく立ち消えになった。
 「なお死亡された鈴木首相にかわり、本日正午、阿南《あなん》陸相に内閣総理大臣の大命が降下いたしました。新内閣成立は本日夜半の予定でございます。只今より阿南新総理のお話、続いて豊田《とよだ》軍令部長のお話がございます」
 阿南首相の声は、奇妙に沈痛だった。神州不滅《しんしゅうふめつ》、本土決戦をもって悠久《ゆうきゅう》の大義を全《まっと》うする。国民はいっそう団結し皇室に殉ぜよ。つづいて豊田軍令部長は本土決戦に総力をあげる事、本土決戦においては当方に充分の勝算ある事を力強く述べた。(「地には平和を」より)

本の情報

形式

【XMDF形式】

XMDFデータをご覧いただくためには専用のブラウザソフト・ブンコビューア最新版(無料)が必要になります。ブンコビューアはここから無料でダウンロードできます。
詳しくはブンコビューアダウンロード初めての方へをご覧下さい。

対応端末欄に「ソニー“Reader”」と表示されている作品については、eBook Transfer for Readerで“Reader”にファイルを転送する事で閲覧できます。
海外版の“Reader”は対応しておりませんので予めご了承くださいませ。