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和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン・ディザイア

婚約芝居はビジネス

婚約芝居はビジネス


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ディザイア
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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解説

どれほどキスが熱くても、演技だということを忘れてはいけない。

えっ、私がボスの婚約者のふりをする?不動産会社を経営するノア・ロックの秘書になって2年のリリーは、会議の席で突然出てきた話に茫然とした。ノアが次々と女性を替えるという噂を相手先が聞きつけ、女性を大切にしない男とは取引しないと言い出したらしい。そこで誤解を解くため、秘書のリリーがノアの婚約者を演じ、彼とともに相手先の令嬢の結婚式に参列することになったのだ。ノアがくれた大きなダイヤの婚約指輪をはめたとき、リリーは自戒した。この婚約はただのお芝居。ボスに寄せる秘めた想いを悟られてはだめ。なのに、事前にキスの練習をしておこうと彼が提案してきて……。

■『愛と裏切りの婚約指輪』、『残酷なクリスマス』に続く関連最終話です。ロック家の3人きょうだいのうち、唯一の独身者となったノアがヒーローを務めます。結婚など考えてもいない彼の婚約者を演じることになったリリーの運命は?

抄録

「考えていたんだが……」ノアが窓の外を見てかぶりを振った。
「えっ?何を?」振り返った彼から真剣に見つめられ、リリーは緑の瞳に吸い込まれそうになった。
「婚約指輪を買ったあとは、みんなふつう何をするんだろう?」
セックス?彼女はそう言っていいのかどうか一瞬考えた。でも、使えるジョークには限りがある。職場では避けたほうがいい。「キスとか?」
「そう、それだ」ノアが間を置かずにうなずく。緊張しているのだろうか。いや、まさか。昨日と今日で、彼にはそれまでよりも多くの人間らしい側面が見られるようになった。いい感じだ。「僕たちはまだ練習していない。ぎこちないキスだと困る。自然でないと。いつ写真に撮られるかもしれないんだ」
リリーは彼の手に自分の手を重ねた。「そのとおりよ。ソーヤーも言っていたわ」
「指示が出ているならしかたない」
「立派な演技を彼は望んでるわ。練習が必要よ。少なくとも一回は」リリーがそう言った瞬間、その場の空気が電気を帯びたようにぴりぴりした。
ノアの唇に賢しげな笑みが浮かび、瞳の色が濃くなった。街の景色が後方に飛んでいく。好きにしていいのだと思うと言葉がなかった。禁じられたことをやる許可が、自分には与えられている。ノアとのキスは禁止事項だったが、それを二年間ずっと想像しつづけてきたのだから、興奮するなと言うほうが無理な話だ。彼の手が髪の内側からうなじへとまわる。リリーは背筋を伸ばし、体を彼に近づけた。彼の親指が耳の下の柔らかな部分をとらえた。温かいというより熱い。人間の熱とは思えない熱さだ。
ノアの唇が薄く開き、顎を上げたリリーのほうに彼の顔が下りてきた。ばさっとたれてくる髪。ああ、すてきだ。想像の中で、何度その髪に手を触れてきたことか。豊かな髪を指のあいだに感じながら、何度なで上げてきたことか。ずっと見つめていたい。同時に、期待に満ちたこの瞬間を大切に味わいたい。彼女はまぶたを震わせて目を閉じた。唇が重なったときには人生が変わる覚悟をしたのに、それは軽く触れるだけのキスだった。初デートのときのようなキスだ。とてもよかったけれど、それではもの足りない。体がそう訴えていた。リリーは頭をかたむけて腰を浮かせ、両肩をまっすぐ彼に近づけた。彼は体を引いた。リリーはぱっと目をあけた。視線がぶつかり、互いに瞳の奥を探った。それは次のキスに向けた無言の協議で、答えは二秒で出た。ノアが微笑む。彼女は心を落ち着かせた。これからが本番だ。
気がつくと両手をノアの髪に差し入れていた。リリーの腰には彼の手があり、骨の場所を知ろうとするかのようにぎゅっとつかんでくる。キスは激しさを増していた。そこに理性はなく、何が起きてもいいと互いに思っているかのようだった。
リリーはノアのコートの下に手を入れた。硬い胸板に手のひらを押し当てると、スーツの上着やシャツにさえぎられながらも、速い鼓動が伝わってきた。素肌を重ねてそれを感じられたらどんなにいいか。ノアの手がリリーの膝にすべり下り、スカートの裾をくぐった。いっきに炎に包まれそうな予感があった。彼は一秒もむだにせずに手を進め、ストッキングに包まれた脚をなでた。その手がぴたりと止まったのは、腿までのストッキングの上端に親指が触れたときだ。彼は体を起こしてキスを中断させた。荒い息をしている。うれしいことに、腿に置いた手はそのままだった。
「これは?」ノアの濃くなった瞳の奥に、欲望と好奇心がのぞいている。
リリーはうなずいた。自分から唇を寄せ、もう一度キスをした。「ふつうのストッキングは苦手なの」唇のそばでささやき、その下唇を甘噛みする。
彼の喉から、くぐもった声が聞こえた。
運転手と後部座席を隔てる仕切りが下りてきた。リリーはあわてて外見を整えた。
こういうシーンに何度も遭遇しているらしく、運転手は前を向いたままだ。「ミスター・ロック、〈ティファニー〉に到着しました」
ノアがぽかんとリリーを見つめる。リリーがここまでするとは思わなかったようだ。今を楽しむためよ、ミスター・ロック。
「覚悟はいいかい?」
覚悟?あなたに服を脱がされる覚悟かしら?リリーは思わずそう言いかけた。「待って」彼の艷やかな髪を手ぐしで整える。くしゃくしゃになっていて、今の彼女の頭の中とそっくりだ。「髪が」
「気づかい、どうもありがとう」彼はリリーをじっくり観察し、頬にかかっていたひと筋の髪を後ろになでつけた。「君のほうはきれいなままだよ」
あまりの恥ずかしさに、リリーは頭のてっぺんから足の先まで全身がむずむずした。さっきははめを外したうえ、ずっと女子校で育った十代の女の子のような態度をとってしまった。頭の中にこうメモしておく。“お行儀よくすること”少なくともノアにとってはこれが日常だ。女性はみんな彼に夢中になる。今だって特別困惑している様子はない。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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