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十カ月だけの恋人【ハーレクイン・セレクト版】

十カ月だけの恋人【ハーレクイン・セレクト版】


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・セレクト
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 トリッシュ・モーリ(Trish Morey)
 オーストラリア出身。初めて物語を作ったのは十一歳のとき。賞に応募するも、応募規定を誤ってしまい失格に。その挫折がもたらした影響は大きく、やがて彼女は会計士としての道を選ぶ。故郷アデレードからキャンベラに移り住んだとき、現在の夫と出会った。結婚し、四人の娘に恵まれ幸せな日々を送っていたが、夢をあきらめきれずもう一度小説家を目指すことに。数々の挫折を乗り越え、ついに自らの手で作家としての人生を切り開いた。今ではオーストラリアのロマンス作家協会で、副会長を務める。

解説

「わたしのおなかにあなたの赤ちゃんがいるんです」アンジーは見ず知らずの夫妻の受精卵を誤って移植されたと知って、相手の男性、ピレリ氏に電話をかけた。亡き妻の忘れ形見の誕生を待ちわびていた――彼の言葉に心揺さぶられ、アンジーは出産を決意する。無事に生まれたら赤ちゃんは返そう、と。だが、面会に現れたドミニク・ピレリは裕福な投資家で、みすぼらしい格好のアンジーを一瞥するなり、辛辣に言った。「いったいいくらほしいんだ?」うなだれるアンジーだったが、やせ細ったその姿に気づいたピレリ氏に促され、レストランへ。そして帰り道、彼の海辺の邸宅で過ごすよう提案されて……。

■おなかの赤ちゃんの父親がまさか大富豪とは夢にも思わなかったヒロイン。お金目当てと侮蔑され、ショックを受けますが……。ハーレクイン・ロマンスらしい傲慢なヒーローとピュアなヒロインの、天使が結ぶ愛のシンデレラストーリー。
*本書は、ハーレクイン・ロマンスから既に配信されている作品のハーレクイン・セレクト版となります。 ご購入の際は十分ご注意ください。

抄録

信じられない。彼女はどこまで食べるのだろう。シモーヌならサラダをつつき、せいぜいツナのかけらを探すくらいで、半分、残すだろうが、目の前の女性はむさぼり食い、すべて平らげていた。この何年かで初めてまともな食事にありついたとでもいうように。いや、本当にそうなのかもしれない。今度は手に取ったパンでソースをすくっている。そもそも、パンを食べる女性すら、最後にいつお目にかかったか、ドミニクは思い出せなかった。こんなふうに食べる女性は初めてだ。
今日、この女性がおなかをすかせて帰ることがないのだけは確かだ。それ以上に大切なのは、ぼくの子が今夜、空腹になる恐れはないということだ。
ぼくの子。二十四時間たっても身が震えるようだ。あまりに突然の知らせで、今も納得がいかなかった。
かつてドミニクは赤ん坊ができるように祈っていた。そうすればカーラの笑顔を見ることができるからだ。そうなればあれほど求めていたカーラの幸せが実現するからだ。
だが体外受精は臨床実験さながらにつらいうえ、失望の積み重ねで負担が大きく、医師から中止を言い渡されたときにはほっとした。そしてドミニクは自分の子を持つ機会はなくなったとあきらめたのだ。
ところが何年もたった今になって実現するとは、勝利の味は甘いと同時に苦かった。
奇妙な手違いによって、恐ろしい運命のいたずらによって、ついに父親になることになった。
だがなぜ、よりによって、この女性のおなかで育つことになったのか?
運命のいたずらなのか?
むごい冗談なのか?
ドミニクは膝のナプキンをつかみ、皿の横に置いた。いずれにせよむごい話だ。この女性とカーラの唯一の共通点は、ぼくがカーラについていちばん嫌っていた事柄だから。
ドクター・カーマイケルは、彼女は健康だと言っていたが、そうは見えない。さっき気を失いかけて、こちらに倒れかかったではないか?あまりに痩せており、危険なほど腕が細く、屋内に入ってサングラスを外したときには、目の下に顔じゅう覆いかねないほど大きな隈ができていた。
今、アンジーの食欲に感心しつつ、ドミニクは心の隅でかすかな懸念を覚えた。ほんのまれだったがカーラがたっぷり食べるときがあった。だが、回復しつつあるのではないかと希望をいだいても、いつもその後数時間、彼女はバスルームにこもり、すべてを吐き出してしまった。
テーブルの向こうに座る女性がナイフとフォークを置き、水を飲んだ。苦い過去がよみがえる。今にも彼女は、失礼と言って席を立つだろう……。
ところがアンジーはいかにも満ち足りた表情で背もたれに寄りかかった。「すばらしかったわ。もうおなかいっぱい」
こんなときでなかったら笑みがこぼれただろう。だが、ドミニクは心得ていた。二十分もあれば、子供に必要不可欠な栄養素が吸収されるはずだ。二十分間、ここに彼女を座らせておけば大丈夫だ。
皿が下げられ、アンジーは水でいいと言い張ったが、カフェイン抜きのコーヒーが注文された。化粧室に行こうとはしない。どこにも問題点が見いだせないのがいらだたしいが、ほかに気にくわない点は数多くある。食べていないとき、手を落ち着かなげに動かしているし、そもそもこうして会う必要があったのかどうかも疑問だ。だが、何よりまず挙げられる問題は外見だ。
とはいえ、食べたあとはずいぶんましに見えた。顔色がよくなって頬がほのかに赤くなり、ピンクの唇は、よくよく見れば驚くほど豊かだ。おかしなものだ。顔色がよくなっただけで、顔つきがまったく違って見える。目の下の黒い隈が顔を占領しなくなったからか、瞳さえ色濃くなったようだった。さざなみさえ立っていなければ、底まで見通せる透明なプールのような青色だ。顔の中で大きすぎるように見えるその目を見つめながら、さざなみが消えるのを待つ。なんの目的なのか、今日、ここに来た本当の理由は何か、読み取りたかったが、アンジーは視線をそらした。何か隠しているのだろうか?
探り出す方法はひとつしかない。「よし」ドミニクは小さなボイスレコーダーを二人のあいだのテーブルの上に置いた。「ビジネスに移ろうか」
アンジーは唇を湿した。ほんのひととき前まで、最高の料理の余韻に浸っていた。初めて体験する味で味蕾がうずいていた。でも今は憤りが波となってテーブルに押し寄せている。理由がわからなかった。彼の口調や言葉は、このおなかにいる子供の未来を話し合うのではなく、あたかもビジネスの会議であるかのようだ。「それはなんのために?」
「記録のためだ。心配は無用だ。コピーを渡すよ」
アンジーは目をしばたたいた。「わたしを信用していないのね」
テーブルの向こうから彼は凝視している。初めてその瞳の色の濃さに気づいた。声と同じように深く、まるで地底の暗い洞窟のようだった。「誰がきみを信用しないと言った?」
ばかにしているの?行動に出ていなくても、目に答えが表れている。「あなたは信用していないわ。食事に連れてきたのは、そうでもしなければ、わたしが昼食をとると信じられなかったからでしょう」
テーブルの向こうで彼は背もたれに寄りかかった。アンジーは思わず、上質なコットンが引っぱられたせいではっきり見えるようになったたくましい胸を見つめていた。千々に乱れる頭で、白い生地と、オープンネックの襟元に見えるオリーブ色の肌の対比に感嘆した。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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