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和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン・ヒストリカル

花嫁の憂鬱

花嫁の憂鬱


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ヒストリカル
価格:700pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ヘレン・ディクソン(Helen Dickson)
 イングランド北東部サウス・ヨークシャーに、夫と二人の子供と共に住む。緑豊かな土地を耕しながら思索にふけり、作業小屋でロマンス小説の構想を練るという。趣味は読書と旅行。とりわけ田園風景の美しさや歴史的な名所旧跡は貴重なインスピレーションを与えてくれると語る。

解説

 わたしが養女だったなんて……。クリスティーナは打ちのめされた。イタリア貴族の血を引く彼女は、生後まもなく母を亡くし、祖母の計らいによって、ある条件付きで叔母夫妻に託されたのだという。それは“マルケージ伯爵の花嫁になること”。先日湖で出会った傲慢な伯爵――彼こそが許婚のマックスだった。激しくキスされたことを思い出し、クリスティーナの頬が熱くなる。嫌いな相手なら結婚は無理強いしないと養父母は優しく言った。でもこれまで贅沢な暮らしができたのは、祖母からの養育費のおかげ。受け取った額はあまりにも莫大で、養父母に返済は不可能だろう。わたしはこの運命を受け入れるしかないの?
 ■ 城から突然消えた赤ん坊。彼女をいつか必ず見つけ出すと心に誓った少年は十七年後、許婚として彼女の前に現れますが……。惹かれ合いながらも素直になれない、二人の心の葛藤が切ない一作です。

抄録

「わたしのどこがいけないの? 見ていられないほど不器量?」
「心配しすぎだ」マックスの視線は彼女の色白の優美な姿にくぎづけだった。木漏れ日を受けて美しく輝く髪は焦茶色から落ちついた赤褐色へと変化する。彼の胸には、クリスティーナを悩ませるジェームズに対する怒りが込み上げてきた。「わたしを信じろ、きみの外見には何も問題ない。ジェームズの目は節穴に違いない。きみがどんなにすばらしいかわからないんだよ」
「本当?」
「ああ」
「じゃあ……わたしにキスしてくれる?」
 マックスは眉根を寄せ、目をそらした。この娘は自分が何を求めているのか、てんでわかっていない。
 彼の反応を誤解したクリスティーナは両手を握りしめ、顎をぐいとあげて歩きつづけた。「ほら、やっぱりね。わたしはどこかおかしいのよ」
 マックスは大股で彼女を追いかけると、腕をつかんで自分のほうを向き直らせた。「今までキスされたことは一度もないのか?」
 クリスティーナはふてくされてうなずいた。
 彼女の顎を手で包み込むようにしながら、マックスは思いつめたような、しかし優しいまなざしで目をのぞき込んだ。「いつかはきみにキスするよ、それは約束する。そのときはきみも、もっとキスを続けてほしいとせがむだろう。だが、今はだめだ。すっかり憤慨して、きみはほかの誰かのことを考えている。わたしがキスするときは、きみがわたしにそうしてほしいと望むときだ。わかったかい?」
 ぴったりしたカーキ色の膝丈のズボン《ブリーチズ》になめし革の乗馬靴、ダークグリーンの上着にしゃれたクリーム色のシルクの幅広のネクタイ《クラバット》を結んだマックスを、クリスティーナは初めて出会った人のようにまじまじと見つめた。目の前に立ちはだかる彼の迫力ある体格に喉がからからになる。信じられないほど青い瞳に黒髪がかかる姿がとても魅力的だ。今まで出会った男性とは比べものにならない。それは否定のしようがなかった。
 静かな森の中に立ち尽くしたままクリスティーナは、自分をひたと見つめるマックスの瞳から目が離せなくなった。すべてを見通すような熱いまなざしに魂までも鷲掴みにされる。顎を包み込む指に体は興奮を抑えきれなかったが、これ以上踏み込んではいけないと心は警告している。ジェームズ以外の男性に特別な感情を抱くことさえ、節度を欠いたことのように思われた。そんな彼女の不安を感じ取ったのか、マックスは笑みを浮かべた。
「ばかな娘だと思っているでしょうね」クリスティーナは彼の手が離れるよう、後ずさった。
「わたしを見ろ」低くなめらかだが聞き覚えのない声に背筋をぞくぞくさせながら、クリスティーナは日焼けした顔を見上げた。キスされそうになったことは一度もないが、マックスの瞳に映るけだるい表情をひと目見て、彼女はすぐに危険を察知した。
「本当にキスするつもり?」
 彼の顔に広がる物憂げな笑みを見ているうち、クリスティーナは誘うようなまなざしから目を離せなくなった。「ああ、そうだ」
 次に何が起こるのか、自分がまったくばかげたことをしていることに恐れおののきながら、彼女はつぶやいた。「あの……やめたほうがいいと思うわ。別に……どっちでもいいけど――」
 そんな抵抗などものともせず、マックスはキスできるようクリスティーナの顔を傾けさせた。頭を下げながら唇を重ね、彼は反応を見た。「どうだ?」
 彼女は当惑と幻滅に目を見開いた。「これでおしまい? キスってこんなもの?」
 きらきら輝く目をしながら尋ねる気まぐれな娘を見ていると、マックスの胸に優しさがあふれてきた。「いや、こんなものじゃない」クリスティーナの両肩に手をかけて引き寄せる。彼女の胸が厚い胸板に押しつけられ、全身がぴたりと添う。なんの邪気もなく発された問いかけにマックスは不意打ちを食らった。今までありとあらゆる策略を女性からしかけられてきたが、ひとつとして引っかかったことはない。だが、少女と女性が同居するこの純真な娘の率直さ、そして自分を見上げる美しい顔立ちや押しつけられる体が強烈な媚薬のように効いてくる。
 憧れと不安が入りまじった気持ちに困惑したクリスティーナは、マックスの瞳に荒々しい光が宿ったことに気づいたが、自分の思いにとらわれていたため、唇に視線を落とした彼が再びキスするつもりだと気づいたときにはもう遅かった。
「いえ、そんな――」
 熱く焦がすような欲望が一瞬の躊躇もなく全身を駆け巡り、マックスの心の中でクリスティーナは魅惑的に誘惑する女性に変わった。何も知らぬ子供を誘惑していると責め立てる良心の呵責を無視し、マックスは先ほどとはまったく違うキスでクリスティーナの抵抗を封じ込めた。優しく、しかし激しく貪るような長いキスに彼女は最初、何がなんだかわからなかった。

*この続きは製品版でお楽しみください。

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