マイリストに追加

和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン・ロマンス

あの夜に戻れたら

あの夜に戻れたら


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハ−レクイン・ロマンス伝説の国のプリンセス
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
みんなの評価 ★★★☆☆1
◆レビューを書く

¥0サンプル
XMDFのファイルをご覧になるにはブンコビューア最新版(無料)をインストールしてください。

「書籍ファイルが壊れています」と表示される場合は、ブンコビューアを最新版にアップデートしてください。
購入する


著者プロフィール

 トリッシュ・モーリ(Trish Morey)
 オーストラリア出身。初めて物語を作ったのは十一歳のとき。賞に応募するも、応募規定を誤ってしまい失格に。その挫折がもたらした影響は大きく、やがて彼女は会計士としての道を選ぶ。故郷アデレードからキャンベラに移り住んだとき、現在の夫と出会った。結婚し、四人の娘に恵まれ幸せな日々を送っていたが、夢をあきらめきれずもう一度小説家を目指すことに。数々の挫折を乗り越え、ついに自らの手で作家としての人生を切り開いた。今ではオーストラリアのロマンス作家協会で、副会長を務める。

解説

 世界中で一番会いたくなかった男性が、いま目の前にいる。モンテベラッテのプリンセス、マリエッタは顔を背けた。ヤニス・マーキデス――辣腕の金融アドバイザーだ。彼に恋をしていたマリエッタは、十六歳のとき、彼の誕生日に純潔を捧げようと彼の寝室に忍びこんだ。だが思わぬ拒絶に遭い、マリエッタはひどく打ちのめされた。それから十三年の月日が経ち、彼女は兄の結婚式で彼と再会、披露宴で二人は付添人の義務としてダンスを踊ることになったのだ。
 「今夜、僕と愛し合い過去を水に流そう」
 耳元でヤニスにそうささやかれ、マリエッタの心は揺れ動いた。
 ■ 2010年1月5日刊『伝説の国のプリンセス』の関連作です。前作のヒーローの妹、マリエッタが初恋の人ヤニスと再会。失われた13年の日々を、二人はどう埋め合わせていくのでしょうか?

抄録

 彼の親指が優しく撫で続け、彼女の体に訴えかけている。
 マリエッタは息をのみ、舞踏室へと続く開け放たれたドアに視線を注いだ。まるで命綱でも見るかのうに。踊っている客たちが見え、笑いさざめく声が聞こえる。そここそ自分の世界だと思う。自分はそこにいるべき人間なのだ、と。だが今、どうしたらそこへ戻れるのか、マリエッタは見当もつかなかった。
「ぼくを見るんだ」ヤニスは空いているほうの手で彼女の顎を持ちあげた。「ぼくを見るんだ」目を伏せたままの彼女に繰り返し命じる。
 しかたなくマリエッタはゆっくりと目を上げ、ヤニスと視線を合わせた。口の端に笑みを浮かべている彼が何歳も若返ったように見える。マリエッタが恋い焦がれていた若かりしころのヤニスだ。
「そのほうがいい」
 その声音さえマリエッタの魂になだれこんできた。大きな手が彼女のうなじに移動し、そこを愛撫すると、マリエッタは身を震わせた。
「きみはとても美しい」ヤニスが言った。
 マリエッタの脳裏に、ある記憶が鮮やかによみがえった。それは、彼女が十六歳のとき、ヤニスと兄と彼女の三人で南フランスで過ごした夏休み最後の日の記憶だった。彼らはビーチに沿って馬に乗り、野生のひなげしが咲き誇る野原の真ん中でピクニックランチを楽しんだ。レイフが再び馬に乗りに行っている間、ヤニスと彼女は地面に寝転んで空を見ていた。するとヤニスが手を伸ばし、彼女の耳の後ろに花を挿した。それから“きみは美しい”とささやき、髪を撫でながらキスをしたのだ。
 思い出したとたん、マリエッタは胸を締めつけられた。よく理解できない何か、あまり詳しく分析したくない何かに。なぜならヤニスは今やわたしにとってなんの意味も持たない男性、十代のときにいだいた夢の断片にすぎないからだ。しかもその夢は無残に打ち砕かれた。二度と同じ過ちを犯すつもりはない。
 マリエッタは身を引いた。「こんなこと、してはいけないわ」
「どんなことだい?」ヤニスはマリエッタを行かせまいとしながら尋ねた。「これかな?」彼女の手を引き寄せて甲にキスをし、それを裏返して、今度は手のひらにキスをする。彼の唇と舌先と吐息に官能を刺激され、マリエッタが身を震わせると、ヤニスがほほ笑むのがわかった。彼はゆっくり顔を上げた。
「それともこれかい?」
 彼は唇にキスをするつもりだわ。警告する時間はたっぷりあった。逃げる時間は、少なくとも顔をそむける時間はたっぷりあった。それともなかったのだろうか? 時間が止まっていたから?
 そう、時間はなかったのよ。ヤニスにキスをされながら、マリエッタは結論づけた。考える時間も、抵抗する時間も、逃げる時間もない。唇に押し当てられる彼の唇にあらがう時間はなかったのだ。
 あるのは今という時間だけ。
 血がたぎり、炎がマリエッタの全身を包んだ。キスが深まるにつれ、興奮が波のように押し寄せる。背中や後頭部をはじめ、あらゆる場所に彼の手が感じられた。五感はもうこれ以上耐えられなくなっているはずなのに、彼女は満足できず、さらなる激しいキスを求めていた。
 わたしはキスを期待し、望んでいた。でも、まさかこんなふうになるなんて。興奮の波に翻弄されながら、マリエッタはふと思った。これほどすごい感覚を引き起こす行為をキスという言葉で要約するのは間違っている。これは単なるキスではない。もと深く豊かな生命力に満ちた何かだ。しかもわたしはさらに切望している。
 ヤニスがマリエッタの顔を両手で包み、顔を離した。彼の息遣いはマリエッタと同じように荒い。
「今晩、ぼくと愛し合おう」
 その瞬間、“さらに”がまったく新しい意味を持った。マリエッタの鼓動が速まり、息遣いがいっそう乱れて、唇がふくれたように感じた。「ばかなこと言わないで」彼女はそう答えた。“ノー”ときっぱり言えなかったからだ。そう答えるべきだとわかっていても。“イエス”と答えるのは論外だとわかっていても。
「きみはぼくを求めている、マリエッタ」ヤニスは言い返した。「そしてきみと再会して以来、ぼくもきみを求めている。欲しくてたまらない。きみをこの腕に抱きしめてからはますます強く」
 マリエッタは首を横に振った。十三年前の夜の痛みがヤニスを拒んでいた。「あなたにはチャンスがあったのよ。なのに、わたしを追いだした」
「ずっと昔の話だ」
「あなたはわたしを憎んでいる」
「ぼくはきみを求めている」
「そして、わたしもあなたを憎んでいるの!」
「そうなのか? ぼくを憎んでいるようなキスではなかったが」
「こんな会話、ばかげているわ」
「分析する必要があると思うか? ぼくにわかっているのは、ぼくはきみを求めているということだ。それも今夜」ヤニスはもう一度彼女の唇を奪い、自分が彼女に及ぼす影響力を思い出させた。「ぼくたちは二人とも明日にはここを去る。二人とも腹を立てたまま帰ることもできるし、満足して帰ることもできる。選ぶのはきみだ」

*この続きは製品版でお楽しみください。

本の情報

形式

【XMDF形式】

XMDFデータをご覧いただくためには専用のブラウザソフト・ブンコビューア最新版(無料)が必要になります。ブンコビューアは【ここ】から無料でダウンロードできます。
詳しくはXMDF形式の詳細説明をご覧下さい。

対応端末欄に「ソニー“Reader”」と表示されている作品については、eBook Transfer for Readerで“Reader”にファイルを転送する事で閲覧できます。
海外版の“Reader”は対応しておりませんので予めご了承くださいませ。

【MEDUSA形式】
MEDUSA形式の作品はブラウザですぐに開いて読むことができます。パソコン、スマートフォン、タブレット端末などで読むことができます。作品はクラウド上に保存されているためファイル管理の手間は必要ありません。閲覧開始時はネットに接続している必要があります。

詳細はMEDUSA形式の詳細説明をご覧下さい。