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嵐の夜のめぐり逢い
著: リンゼイ・アームストロング 翻訳: 小林ルミ子発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ロマンス
価格:630円(税込)
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著者プロフィール
リンゼイ・アームストロング(Lindsay Armstrong)
南アフリカ生まれ。現在はニュージーランド生まれの夫と五人の子供たちとともに、オーストラリアで暮らす。オーストラリアのほとんどの州に住んだことがあり、農場経営や馬の調教など、普通では経験できない職業を経てきた。彼女の作品にはその体験が大いに生かされている。
南アフリカ生まれ。現在はニュージーランド生まれの夫と五人の子供たちとともに、オーストラリアで暮らす。オーストラリアのほとんどの州に住んだことがあり、農場経営や馬の調教など、普通では経験できない職業を経てきた。彼女の作品にはその体験が大いに生かされている。
解説
ゴールドコースト近辺で猛烈な嵐に遭遇したブリジットは、偶然通りかかったアダムという男性と一緒に小屋に避難した。九死に一生を得たふたりはベッドをともにし、情熱的に愛し合う。だが翌日救助されると、彼はブリジットに別れを告げた。自分はひとりの女性に縛られるタイプの男ではないと言って。三週間後、彼女は新聞にアダムの写真が載っているのを見つける。彼は名門ボーモント家の出だが、噂によれば、父と兄によって家を追い出され、独力で億万長者になったという。ブリジットは激しい衝撃を受けた。わたしとは身分違いだから、彼は正体を告げずに立ち去ったのだ!
抄録
「どうしてそう思うんだ?」
彼女は顔を赤く染めて、まばたきした。とっさに口走ってしまったことを後悔していた。どうすれば気恥ずかしい思いをしないでこの場を切り抜けられるだろう? 本当のことを言うしかないのでは……。
「あなたはすごくハンサムだわ。それに何が起こっても臨機応変に対応できる。体力もあるし。一緒にいて、あなたほど安心できる人はいないわ」
「ありがとう。でもそれだけでは彼女はつなぎとめられなかったんだ。まあ、確かに彼女をめぐる競争は熾烈だったけれど」
ブリジットは顔を曇らせた。「でもそんな女の人なら、後悔するのに値するとは思えないわ」
彼女は小首をかしげ、問いかけるように彼を見つめた。アダムは黙っていたが、やがて口を開いた。
「もうぼくの話は終わらせてもいいだろう?」
ブリジットはすぐに後悔するような顔になった。「ごめんなさい、あなたはまだ傷ついているのね。話題を変えましょうか?」
アダムはベッドから出て、やかんをのせたストーブのほうに歩いていった。
ブリジットは彼がバケツの水でカップをゆすぐのを眺めていた。石油ストーブは藁の山の輪郭をぼんやりと浮かび上がらせていたが、小屋の中の暗闇がすべて追い払われているわけではなかった。それでも嵐の峠は越えたようだった。
アダムはカップにインスタントコーヒーを入れて、お湯を注いだ。「砂糖はいる?」
「一杯だけ。ありがとう」ブリジットはためらいながら言った。「ねえ、本当にごめんなさい。詮索されているみたいでいやだったでしょう」
アダムは肩をすくめて彼女にカップを渡した。それから床に座り込み、ベッドに背中を預けた。「きみの気持ちを嵐からそらすのに役立ったからいいさ」
「ええ、そのとおりよ。わたしは期待してしまったの。わたしの話をしたんだから、そのお返しにあなたの話も聞けるってね。ほら、わたしたちってそれぞれ命を助け合った仲でしょう」
ふたりのあいだに沈黙が落ちた。聞こえるのはストーブの火がはぜる音と遠くの雷鳴だけだった。
「彼女はぼくを捨てて、兄を選んだんだ」アダムはぽつりと言った。「きみは正しい。彼女は後悔するに値しない。でも兄はそれとはまたべつの問題だ。彼はいつの日か当然の報いを受けなきゃならない」アダムはコーヒーを飲んだ。「梃子を正しく動かして、兄を追い落とす方法を見つけるのも時間の問題だ」
ブリジットは目を見開いて彼の横顔を見つめた。そしてただひとつ考えついたことを言った。「あなたは梃子について詳しいんでしょう。だったら、やめておいたほうがいいと思うわ。過去のことは忘れて前に進んだほうが――」
「やめてくれ、ブリジット」彼はぴしゃりと言い、むっつりしたまなざしを投げかけた。「さあ、コーヒーを飲んで」
「そうね、ごめんなさい」彼女はそう言うと、コーヒーを飲みほした。
アダムは彼女からカップを受け取ると、自分のカップと一緒に棚の上に置いた。それからベッドに戻り、再び彼女を抱き寄せてやさしい声で言った。「おやすみ」
ブリジットは体の力を抜いた。アダムの温かな体は心地よく、こうして抱かれているのは自然なことのように思えた。彼女は眠りに落ちていった。
一方アダムは、ストーブの火に照らされたブリジットの顔を見つめながら考えをめぐらせていた。どうしてこの女性に今まで誰にも話さなかったことを打ち明けてしまったのだろう。彼女に話してもなんの心配もないから? ぼくが誰なのか彼女は知らないからか? でもそれだけではない。ブリジット・スミスという独身の女性に惹かれているからだ。
彼女を守ってあげたいし、あの激しい嵐の中を歩いてここまで来た彼女に尊敬の念も抱いている。でも、それだけではない。
ブリジットの寝顔を見つめているうちに、アダムは彼女とベッドをともにすることを考えていた。まず、端がきゅっと持ち上がったこのピンク色の唇にキスする。それから愛を交わす喜びを教え、いやな思い出を消してあげたら、この緑色の目にはどんな表情が浮かぶのだろう?
アダムはにわかに体が活気づくのを感じた。彼女はアダムのために作られたように腕の中にすっぽりおさまっている。そう、彼女の柔らかな体は彼のものであるかのように……。
と、そのとき、ブリジットが目をぱちりと開け、アダムはぎくりとした。ふたりは長いこと凍りついたようにじっと見つめ合ったが、ふと彼女の緑色の目に彼の心を見透かしたようないぶかしげな表情が浮かんだ。アダムは思わず息を止めた。
しかし、すぐにそんなことはありえない、あるいは夢を見ているのだと思ったらしく、彼女は首をかすかに振ると、再び目を閉じて眠りについた。
アダムはゆっくりと息を吐き出し、口をゆがめてほほ笑んだ。
ありうるんだよ、ブリジット・スミス。彼は思った。それに夢を見たのでもない。そんなことは起こらない。そうなってはいけない理由が山ほどあるからだ。
アダムは横たわったまま、小降りになった雨が屋根を打つ音に耳を傾けた。ふたりの夜はまだ終わったわけではなかった……。
*この続きは製品版でお楽しみください。
彼女は顔を赤く染めて、まばたきした。とっさに口走ってしまったことを後悔していた。どうすれば気恥ずかしい思いをしないでこの場を切り抜けられるだろう? 本当のことを言うしかないのでは……。
「あなたはすごくハンサムだわ。それに何が起こっても臨機応変に対応できる。体力もあるし。一緒にいて、あなたほど安心できる人はいないわ」
「ありがとう。でもそれだけでは彼女はつなぎとめられなかったんだ。まあ、確かに彼女をめぐる競争は熾烈だったけれど」
ブリジットは顔を曇らせた。「でもそんな女の人なら、後悔するのに値するとは思えないわ」
彼女は小首をかしげ、問いかけるように彼を見つめた。アダムは黙っていたが、やがて口を開いた。
「もうぼくの話は終わらせてもいいだろう?」
ブリジットはすぐに後悔するような顔になった。「ごめんなさい、あなたはまだ傷ついているのね。話題を変えましょうか?」
アダムはベッドから出て、やかんをのせたストーブのほうに歩いていった。
ブリジットは彼がバケツの水でカップをゆすぐのを眺めていた。石油ストーブは藁の山の輪郭をぼんやりと浮かび上がらせていたが、小屋の中の暗闇がすべて追い払われているわけではなかった。それでも嵐の峠は越えたようだった。
アダムはカップにインスタントコーヒーを入れて、お湯を注いだ。「砂糖はいる?」
「一杯だけ。ありがとう」ブリジットはためらいながら言った。「ねえ、本当にごめんなさい。詮索されているみたいでいやだったでしょう」
アダムは肩をすくめて彼女にカップを渡した。それから床に座り込み、ベッドに背中を預けた。「きみの気持ちを嵐からそらすのに役立ったからいいさ」
「ええ、そのとおりよ。わたしは期待してしまったの。わたしの話をしたんだから、そのお返しにあなたの話も聞けるってね。ほら、わたしたちってそれぞれ命を助け合った仲でしょう」
ふたりのあいだに沈黙が落ちた。聞こえるのはストーブの火がはぜる音と遠くの雷鳴だけだった。
「彼女はぼくを捨てて、兄を選んだんだ」アダムはぽつりと言った。「きみは正しい。彼女は後悔するに値しない。でも兄はそれとはまたべつの問題だ。彼はいつの日か当然の報いを受けなきゃならない」アダムはコーヒーを飲んだ。「梃子を正しく動かして、兄を追い落とす方法を見つけるのも時間の問題だ」
ブリジットは目を見開いて彼の横顔を見つめた。そしてただひとつ考えついたことを言った。「あなたは梃子について詳しいんでしょう。だったら、やめておいたほうがいいと思うわ。過去のことは忘れて前に進んだほうが――」
「やめてくれ、ブリジット」彼はぴしゃりと言い、むっつりしたまなざしを投げかけた。「さあ、コーヒーを飲んで」
「そうね、ごめんなさい」彼女はそう言うと、コーヒーを飲みほした。
アダムは彼女からカップを受け取ると、自分のカップと一緒に棚の上に置いた。それからベッドに戻り、再び彼女を抱き寄せてやさしい声で言った。「おやすみ」
ブリジットは体の力を抜いた。アダムの温かな体は心地よく、こうして抱かれているのは自然なことのように思えた。彼女は眠りに落ちていった。
一方アダムは、ストーブの火に照らされたブリジットの顔を見つめながら考えをめぐらせていた。どうしてこの女性に今まで誰にも話さなかったことを打ち明けてしまったのだろう。彼女に話してもなんの心配もないから? ぼくが誰なのか彼女は知らないからか? でもそれだけではない。ブリジット・スミスという独身の女性に惹かれているからだ。
彼女を守ってあげたいし、あの激しい嵐の中を歩いてここまで来た彼女に尊敬の念も抱いている。でも、それだけではない。
ブリジットの寝顔を見つめているうちに、アダムは彼女とベッドをともにすることを考えていた。まず、端がきゅっと持ち上がったこのピンク色の唇にキスする。それから愛を交わす喜びを教え、いやな思い出を消してあげたら、この緑色の目にはどんな表情が浮かぶのだろう?
アダムはにわかに体が活気づくのを感じた。彼女はアダムのために作られたように腕の中にすっぽりおさまっている。そう、彼女の柔らかな体は彼のものであるかのように……。
と、そのとき、ブリジットが目をぱちりと開け、アダムはぎくりとした。ふたりは長いこと凍りついたようにじっと見つめ合ったが、ふと彼女の緑色の目に彼の心を見透かしたようないぶかしげな表情が浮かんだ。アダムは思わず息を止めた。
しかし、すぐにそんなことはありえない、あるいは夢を見ているのだと思ったらしく、彼女は首をかすかに振ると、再び目を閉じて眠りについた。
アダムはゆっくりと息を吐き出し、口をゆがめてほほ笑んだ。
ありうるんだよ、ブリジット・スミス。彼は思った。それに夢を見たのでもない。そんなことは起こらない。そうなってはいけない理由が山ほどあるからだ。
アダムは横たわったまま、小降りになった雨が屋根を打つ音に耳を傾けた。ふたりの夜はまだ終わったわけではなかった……。
*この続きは製品版でお楽しみください。
本の情報
紙書籍初版: 2011/3/20
小説・ノンフィクション>ハーレクイン>ハーレクイン・ロマンス
小説・ノンフィクション>ハーレクイン>一夜の恋
小説・ノンフィクション>ハーレクイン>億万長者
小説・ノンフィクション>ハーレクイン>愛の復活/運命の再会
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